【宅建試験を通して学ぶ】宅地造成等規制法(2)

試験に出るもう少し細かい点についての補足です。

「許可」ではなく「届出」が必要なパターン

要は、規制区域内でがけを生じる宅地造成に当たらないが、届出が必要なもの。三つ定まっています。

第十五条 
宅地造成工事規制区域の指定の際、当該宅地造成工事規制区域内において行われている宅地造成に関する工事の造成主は、その指定があつた日から二十一日以内に、国土交通省令で定めるところにより、当該工事について都道府県知事に届け出なければならない。
2 宅地造成工事規制区域内の宅地において、擁壁等に関する工事その他の工事で政令で定めるものを行おうとする者(第八条第一項本文若しくは第十二条第一項の許可を受け、又は同条第二項の規定による届出をした者を除く。)は、その工事に着手する日の十四日前までに、国土交通省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
3 宅地造成工事規制区域内において、宅地以外の土地を宅地に転用した者(第八条第一項本文若しくは第十二条第一項の許可を受け、又は同条第二項の規定による届出をした者を除く。)は、その転用した日から十四日以内に、国土交通省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

一つ目は工事の途中でその地域が規制区域に指定されたパターン。その場合は指定された日から3週間以内に届出。二つ目は飛ばして先に三つ目を見ますが、これは崖を生じる様な工事はなかったけれども、宅地以外から宅地に転用されたパターン。その場合は転用した日から2週間以内。
二つ目は崖を生じないけれども特殊な工事をするパターン。その場合は、工事をする2週間前に届出。許可を与える程危険なものではないけれども、それなりに危険な工事なので「前に」というわけです。どんな工事かと言うことで、政令を見てみると、

第十八条 
法第十五条第二項の政令で定める工事は、高さが二メートルを超える擁壁、地表水等を排除するための排水施設又は地滑り抑止ぐい等の全部又は一部の除却の工事とする。

大きなものの「除却」=取り除く工事です。擁壁や地滑り抑止ぐいについては一度ネットで画像検索をしてイメージを持っておくのをお勧めします。確かにそういった巨大なものは崖を生じなくても危なそうという感覚が持てると思いますので。


造成宅地防災区域

規制区域にならないけれども、野放しにはしておけない地域を「防災区域」として指定できるという決まりが20条にあります。

第二十条 
都道府県知事は、この法律の目的を達成するために必要があると認めるときは、関係市町村長の意見を聴いて、宅地造成に伴う災害で相当数の居住者その他の者に危害を生ずるものの発生のおそれが大きい一団の造成宅地(これに附帯する道路その他の土地を含み、宅地造成工事規制区域内の土地を除く。)の区域であつて政令で定める基準に該当するものを、造成宅地防災区域として指定することができる。

元々この法律自体は、昭和 30 年代、人口の急増に伴い宅地開発が進められた造成地で、崖崩れ等の災害が頻発したことを踏まえて昭和36年に制定されたものです。一方、この「造成宅地防災区域」が出来たのは平成18年のこと。当時、阪神淡路大震災や新潟中越地震等の大地震の際に、盛土地盤の滑動崩落による被害が多数発生したことを背景とし出来ました。下記条文に言う「宅地造成に伴う災害で相当数の居住者その他の者に危害を生ずるものの発生のおそれが大きい一団の造成宅地」とは、そういう意味です。宅地造成をしているわけでは無いけれども、ほっておくと甚大な被害が予想される地域を防災地域に指定し、災害に必要な措置を知事が命じることが出来るというものです。

第二十一条 
造成宅地防災区域内の造成宅地の所有者、管理者又は占有者は、前条第一項の災害が生じないよう、その造成宅地について擁壁等の設置又は改造その他必要な措置を講ずるように努めなければならない
2 都道府県知事は、造成宅地防災区域内の造成宅地について、前条第一項の災害の防止のため必要があると認める場合においては、その造成宅地の所有者、管理者又は占有者に対し、擁壁等の設置又は改造その他同項の災害の防止のため必要な措置をとることを勧告することができる
宅地造成等規制法施行令 第十九条 
法第二十条第一項の政令で定める基準は、次の各号のいずれかに該当する一団の造成宅地(これに附帯する道路その他の土地を含み、宅地造成工事規制区域内の土地を除く。以下この条において同じ。)の区域であることとする。
一 次のいずれかに該当する一団の造成宅地の区域(盛土をした土地の区域に限る。次項第三号において同じ。)であつて、安定計算によつて、地震力及びその盛土の自重による当該盛土の滑り出す力がその滑り面に対する最大摩擦抵抗力その他の抵抗力を上回ることが確かめられたもの
イ 盛土をした土地の面積が三千平方メートル以上であり、かつ、盛土をしたことにより、当該盛土をした土地の地下水位が盛土をする前の地盤面の高さを超え、盛土の内部に浸入しているもの
ロ 盛土をする前の地盤面が水平面に対し二十度以上の角度をなし、かつ、盛土の高さが五メートル以上であるもの

択一問題

問1:宅地造成工事規制区域内の宅地で、高さ3mの擁壁の除却工事を行う場合には、あらかじめ都道府県知事に届出なければならず、届出の期限は工事着手の前日。

答:「×」。まず大型の除却工事なので工事着手までというのは〇。ただ、前日に届出られても県としてはどうしようも無いので、これが「×」。14日前です。

問2:都道府県知事は、宅地造成工事規制区域内においても、造成宅地防災区域の指定ができる。

答:「×」。規制区域内で人命を守れない地域があったからこそ防災地域を作ったのです。防災区域は規制区域外の地域です。

問3:造成宅地防災区域内の宅地造成の所有者は、災害が生じないよう、その造成宅地について擁壁の設置等の措置を講ずるよう努めなければならない。

答:「〇」。法の趣旨そのものです。

問4:都道府県知事は、その造成宅地の所有者のみならず、管理者や占有者に対しても、擁壁の措置等の措置をとることを勧告できる。

答:「〇」。勧告とは一種のアドバイス。人の命を守るためのアドバイスなら別に所有者に限らず、その土地の管理者や占有者に対してしても何の不思議もありません。

問5:新たに指定された規制区域内で、指定の前にすでに着手されていた宅地造成に関する工事については、その造成主はその指定があった日から21日以内に、都道府県知事の許可を受けなければならない。

答:「×」。後で指定を受けたいわば「後出しじゃんけん型」。それなのに、一度ストップしてきちんと許可を得よ、なんて酷すぎます。「許可」ではなく「届出」が正解。

問6:都道府県知事は、宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成に関する工事についての許可に、当該工事の施行に伴う災害の防止その他良好な都市環境の形成のために必要と認める場合にあたっては、条件を付すことができる。

答:「×」。変な問題ですが、法の趣旨が「災害の防止のため必要な規制を行うことにより、国民の生命及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉に寄与すること」であることを思い出せば、良好な都市環境は関係ないことが導けると思います。

問7:規制区域内で行われる宅地造成に関する工事は、擁壁、排水施設又は消防の用に供する貯水施設の設置その他宅地造成に伴う災害の発生を防止するための必要な措置が講じられたものでなければならない。

答:「×」。これも変な問題ですが、この法律の災害は、「宅地造成に伴う崖崩れ又は土砂の流出による災害の防止」なので火災は関係なく、消防のための貯水施設は関係ありません。排水施設はあくまで水はけを良くするために必要な施設です。

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