【宅建試験を通して学ぶ】土地区画整理法

何かと専門用語が多いうえに、マニアックな問が出易いこの分野はやや厄介ですが、概念は簡単なのでまずは専門用語で迷わない様に理解しておくことが必須です。ネットで「土地区画整理事業」を検索すると国土交通省や各都道府県のホームページでこの事業について解説したものがたくさんあるので、まずはそれらを見て概念を押さえると共に、もし身近な地域で区画整理を行っている地域がある場合には、それも見てイメージを付けておくことをお勧めします。

ポイント1:そもそも区画整理事業とは?


一言で言うと、「道路、公園、河川等の公共施設を整備・改善し、土地の区画を整え宅地の利用の増進を図る事業」です。もっと簡単に言えば、整っていなかった街を整った街に変えること、いびつな土地を四角くすること、です。特に昔に開拓された様な街は必ずしも区画が整っておらず、道も狭かったりします。そこでそれをまとめて丸ごとキレイに整え直して、土地をできるだけ四角く、道を広くするというのが区画整理事業です。

ポイント2:なぜにそんなことをする必要が?


区画整理事業とは、要は街一体を丸ごと組み直そうというもの。災害等が起きて多くの民家が危険な状態ならともかく、特に危険が現に起きていない地域でなされます。当然、各地域のお家には整備が終わるまでの間(通常10年近くかかります)色んな迷惑がかかるわけですが、そうまでしてなおそんな大掛かりなことを行う必要があるのか。
街は常に安全で快適で健康的でなければならないのに、地区の現状の整備が未だ十分でない場合、そのまま放置するとますます環境が悪化してしまう恐れがある。そこで地域全体の利益、福祉を考慮して良好なまちづくりを行うべくなされるから、というのがその理由です。
ですから、この事業はできる限り沢山の関係者の同意がなければ円滑に進めることは不可能です。法律上は、地権者の2/3以上の同意がないと事業を開始できないことになっています。過半数では足りないと言うのもそういう趣旨です。

ポイント3:誰が担い手になれるのか


土地区画整理法の第二章は「施行者」として以下の様な順序で定められています。

第一節 個人施行者
第二節 土地区画整理組合
 第一款 設立(第十四条―第二十四条)
 第二款 管理(第二十五条―第四十四条)
 第三款 解散及び合併(第四十五条―第五十一条)
第三節 区画整理会社
第四節 都道府県及び市町村
第五節 国土交通大臣
第六節 独立行政法人都市再生機構等

大きく分けて、第1~3節が民間事業体です。民間で行う場合、一人でするか・7人以上で集まった組合を作るか・それ専用の株式会社を作ってしまうか、の3通りです。4節以降は国の様な公の機関が行う場合を定めています。

ポイント4:仮換地


「かりかんち」と呼びます。区画整理とは要は元ある土地を変えてしまうことで、変えるためには住んでいた人は一時的に退去しなければいけません。仮換地とは、一時的に退去した後で仮に使ってもらうために提供する他の土地のこと。法律は「第三節仮換地の指定」として第98条から細かくこの方法が書いてあります。
仮換地の指定とは、道路等の公共施設の工事を行い、土地の区画を変更するため、従前の宅地(現在の土地)に代えて、将来新たに使用することのできる土地の指定を言います。「仮換地指定通知」というのが郵送等で送られ、その発表の後に建物や道路の工事が行われ、その後、仮換地として指定された新たな土地が使える様になります。この「宅地が使用できる様になった」ことを「使用収益が開始できる」と言います。

仮換地指定通知とは以下の様なイメージのものです。

           公示送達
 ○○都市計画事業○○土地区画整理事業に係る下記の者に対する土地区画整理法(昭和29年法律第119号)第98条第1項の規定により下記のとおり仮換地を指定しますので、 同条第5項及び第99条第2項の規定により通知します。

平成○年○月○日
○○都市計画事業
○○○土地区画整理事業
施行者 ○○○市
代表者 ○○○市長 ○○ ○○

1 通知書の送付を受けるべき者の住所及び氏名
住所 ○○県○○市○○町○○番地
氏名 ○○ ○○
住所 ○○県○○市○○○番地
氏名 ○○ ○○

2 通知の内容
土地区画整理法第98条第1項及び第5項の規定により、○○都市計画事業○○土地区画整理事業において定められた別表及び別図のとおり仮換地指定をします。

条文99条は、

第九十九条 前条第一項の規定により仮換地が指定された場合においては、従前の宅地について権原に基づき使用し、又は収益することができる者は、仮換地の指定の効力発生の日から第百三条第四項の公告がある日まで、仮換地又は仮換地について仮に使用し、若しくは収益することができる権利の目的となるべき宅地若しくはその部分について、従前の宅地について有する権利の内容である使用又は収益と同じ使用又は収益をすることができるものとし、従前の宅地については、使用し、又は収益することができないものとする。

と書きます。要は仮換地が指定されると、新しい土地の使用・収益の権利が発生するものの、従前の土地は使えなくなる、というわけです。なお、宅建ではこの部分が問われるのでこれだけで構いませんが、実際には指定された瞬間に全員が立ち退きというわけではなくて、順を追って行われる様です。

もう一つ、103条4項とは、

第百三条 換地処分は、関係権利者に換地計画において定められた関係事項を通知してするものとする。
4 国土交通大臣は、換地処分をした場合においては、その旨を公告しなければならない。都道府県知事は、都道府県が換地処分をした場合又は前項の届出があつた場合においては、換地処分があつた旨を公告しなければならない。

のこと。要は工事完了のお知らせです。仮換地指定書と同様に、「換地処分通知」と言ったものが郵送されたりします。これで正式かつ最終的に換地が終わったことになります。


択一問題

問1:土地区画整理組合が施行する土地区画整理事業は、市街化調整区域内において施行されることはない。

答:「×」。担い手は大きく民間と公に分かれます。公は住民の意向と関係なく進められることも踏まえ、都市計画事業(市街地開発事業)でしか行えず、市街化調整区域では行われない。民間の方はそんな制限を設ける必要はありません

問2:市町村が施行する土地区画整理事業については、事業ごとに土地区画整理審議会が置かれる。

答:「〇」。土地区画整理審議会とは、換地計画、仮換地の指定及び減価補償金の交付等を決めるための委員会。こうした委員会を置くのはそう言った事柄を合議で決めなければいけないパターンのみ。つまり、公的主体が担う場合のみです。

問3:仮換地の指定は、その仮換地となるべき土地の所有者及び従前の宅地の所有者に対し、仮換地の位置及び地積並びに仮換地の指定の効力発生の日を通知してする。

答:「〇」。そのままです。仮に使える土地の通知ですから、前と後各々の人に対して、どこの土地をいつからと正式に通知しないと移動しようがありません。

問4:仮換地の指定の結果、使用し、又は収益する者のなくなった従前の宅地についても、従前の宅地に関する所有権は残るので、施行者は、土地区画整理事業の工事を行うためには、当該従前の所有者の同意を得なければならない。

答:「×」。従前の土地の同意をいちいち得なければならないのであれば、区画整理事業はスムーズには行きませんし、そうするのであればそもそも仮換地を指定する必要がありません。当然に×です。

問5:施行者は、仮換地を指定した場合において、特別の事情があるときは、その仮換地について使用又は収益を開始することが出来る日を仮換地の指定の効力発生日と別に定めることが出来る。

答:「〇」。区画整理事業は少しずつ進めるのが現実的で、一斉に関係者が引っ越すというのは無理のある話。実際の実務では、細かく引っ越すスケジュールを組むので、こうしたことを認めているわけです。

問6:土地区画整理組合が仮換地を指定した場合において、当該処分によって使用し又は収益することができる者のなくなった従前の宅地については、換地処分の広告がある日までは、当該宅地の存する市町村がこれを管理する。

答:「×」。土地区画整理組合とは何だったか振り返ると、これは民間組織です。民間で行っている事業ですから、揉め事も起きていないのに何もそこに国=市町村を登場させる必要はありません。当該宅地の管理は民間の「施行者」がすれば良い話です。

問7:仮換地となるべき土地について質権・抵当権を有する者があるときは、これらの者に仮換地の位置並びに地積並びに仮換地の指定の効力発生の日を通知せねばならない。

答:「×」。質権は必要ですが、抵当権は不要です。民法の話ですが、仮換地の「使用収益」の話なので、所有権者以外に使用収益に関係する者は誰なのか、という問です。抵当権は使用収益する権利ではないわけですから、通知される必要はありません。逆に、地上権や賃借権等、使用収益に当たる権利を持つ人たちには通知が必要です。

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