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自分に自信がない人

僕は“基本的に”自分に自信がないです。

ただ、皆さんのお察しの通り自分に自信がないとやってられない仕事を僕はしている。
だから、“結果的には”僕は自分に自信がある。
言ってることが無茶苦茶かもしれないが、そうなのだから仕方がない。
そもそも僕がお笑いという世界の門を叩いたのはやはり自分に自信があったからで(それまでの学生風情の中で、しかも局地的な)、でもその反面で「自分に何の才能もなかったらどうしよう…」そんな気持ちを抱えながら、NSC(吉本の養成所)に願書を送ったのが約16年前。
昔から自信がなけりゃ、自信もある人間が気づいたらこの春に芸人16年目を迎える。
今年も改めて芸人を続ける訳だか、やはり自信はあるし、自信はない。

こんなことをつらつらと書いているが、果たして僕が最初に言った“基本的に自信がない”ということはどういうことなんだろう?と細かく自分に問いただしてみた。
そこで、僕なりに出した答えは“1秒後の未来なんて誰もわからないから自信がない”ということ。
自分が発信するものがどう空気や人に触れるか、それによって酸素や皆さんがどんな反応を起こすのかなんて本当にわからない。
それはもう確かなことだ。

先日、しずる(僕が池田という相方と組んでいるコンビ)の単独ライブがあった。
単独ライブというのは大体がどの芸人さんもその全てのネタを新ネタのみで構成する一つの公演で、僕らが取るスタイルもいつもその形だ。
そして、今回の単独ライブは作・演出を全て僕村上が担当するものだった(その前の夏の単独では逆に池田が全てを担当している)。
ちなみに、僕が単独ライブ丸々一つを基本一人で構成する(構成作家が細かいところの作業などをしてくれている)のはこれが3度目だった。

ハッキリと言える。
もう、べらぼうに自信がなかった。
開演する一秒前まで、いや、開演してもお客さんの反応を見るまで、いやいや、一本目二本目とネタが終わった後でも、自信がなかった。

お客さんの笑い声を聞いたら一気に楽になった…
なんてなかった。

何故なら、まだこのあとの台詞があるから。
もう何本かまだコントがあるから。
単独ライブは始まってるけど、終わってはいないから。

ただ、ただだ。
お客さんの反応を、一つ一つ楽しんではいる。
そこは勘違いしないで頂きたい。
楽しんでネタはやっている。
僕らの一言一言へのお客さんの笑い声や拍手や空気を飲む雰囲気まで感じて、一秒一秒心でニヤついてはいる。

そう、ここで発表になってしまうけどコレは多分、合っているかわからないけど僕は二重人格なのだ。
二重感情とでも言おうか、そういう類いなんだと思う。
一笑いによってその瞬間、心の中に芽生える小さな“自信”、しかし単独ライブ全体が面白くなるかどうかはまだわからないんじゃないかという“不自信”みたいなものが大きな口を開けて飲み込もうとしてくる、そんな二重構造。

ライブ過ぎる。
大袈裟に言うと、生死だ。

村上春樹氏は『ノルウェイの森』でこう書いている。


死は生の対極としてではなく、その一部として存在している



このnoteを書いていて、19歳の頃に読んだこの一文を思い出した。
世紀の作品としずるの単独ライブ、そのサイズ感の大小だけは皆さんの努力で何とか無視して頂きたい。

話を戻すと、一番近い自分の経験を元に僕が言いたいことは、お客さんに喜んでもらえる“自信”と、舞台でスッテンコロリンと散々な姿を見せてしまうかもしれないという“自信のなさ”は、対極ではなく共存しているということだ。

単独ライブ前は何度も自問自答をした。

「そもそもなんで全部新ネタなんだ!ウケる保証がよりないスタイルをなんで取るんだ!」
「今までもこれでやってこれただろう!不安を抱えてやったけど、無事乗り越えて今生きてんじゃん!」

「でも、やったことないもの見せるんだからやっぱり0は0じゃん!」
「そうかもしれないけど、しょうがないじゃん!終わったらわかるから!」

「おい!始まるぞ!台詞全部飛ぶ気しかしねぇーぞ!」
「だから、できるだけの準備はしてきただろ!」

結果として、単独ライブは誰の怪我などもなく、無事滞りなく終了。
そして幸いなことに、お客さんから返金の声やクレームなどはなく、アンケートやネットでの感想を拾うと、面白がったり楽しんでくれている様子だった。

結果が“自信”に繋がった。
「これ」という過去があるから、「あれだな」と思う未来も何とか堪えられるのかもしれない。
最前の過去が“自信”となり、目の前の未来が“自信のなさ”を作り続ける。
これらが混ざり合った、僕の人生という川の中で僕は何とか立ってる。
“自信がある”と“自信がない”はお互い、向こう側に、対岸にあるわけではないのではないか。
この川の中に、自信の“ある” “ない”は混在していて、良く見てみると川というものはサラサラ流れているところがあったり、激流みたいな場所もあったり、時には行き場もわからず渦を起こしたりしている。
そんな川の中で、僕は立ち尽くすようにいつも揺れてる。
地に足つけようと、フワフワしてる。

そんな僕は単独ライブをやりきったという実績を残した。
この一ミリ大の結果が僕の“自信”となった。


だから、“結果的には”僕は僕に自信がある。


※追記
学年でいうと同級生にあたる松坂大輔さんが1999年の時点で、18歳にしてプロ初勝利を収めヒーローインタビューで「自信が確信に変わりました」と放ったことを思い出して、メチャクチャ震えている。

あなたのお心をもし本当に気が向いたらでいいのでお与えください! そしたら、また自分の言葉に責任を持って皆さんに発信できます! ここを僕の生活の一部にして行きたいと思っておりますので!