破壊

破壊 (摩擦ゼロの世界)

<< これは2003年に雑誌へ寄稿していたコラムを修正したものです。>>

 昔、サラリーマンをしていた頃(1993年)、一般の人がインターネットという言葉も知らず、プロバイダーも営業していない時期にパソコン通信版のオークションサイトを開設しました。全国にアクセスポイントが無い状態で数千人にDMを送ったところ5%の登録がありました。これはヒットする予感がしました。運営費は落札価格の3%です。(後のYahooオークションと同じ)これを運営してみて”摩擦ゼロの世界”を感じました。
 その後、私は務めていた会社をクビ(会社都合の解雇)になったためメーカーを立ち上げオークションサイトは中止していました。住宅ローンがあったためすぐに売上が必要だったのです。それにまだプロバイダーというインフラが整っていなかったのが大きな原因でした。5年以上は赤字が続くと思っていました。もうひとつ必要なものはアクセスポイントと簡単に画像を見るブラウザでした。そのころブラウザはモザイクというソフトしかありませんでした。後のネットスケープコミュニケーションズのメンバーが開発したものです。
 独立後、製品を開発し建設機械業界でメーカーとしてスタートしました。当初、建設機械メーカーのK社の販路に乗せました。最初の取引は私が30万円で卸した製品はK社からユーザーへ80万円で販売されました。これだけ利益を取るのだから製品の説明や営業はすべてK社がやるものだと思っていました。現実は、違い私が全国のK社販売店を訪問しなければならなかったのです。これなら直販した方が良いと感じました。まさに”摩擦の世界”です。その後、建設機械メーカーのC社や東京のM商事と取引するようになりました。M商事の取り分は5%でした。その代わり私が営業やユーザーサポートを行いました。これは妥当な取引だと思いました。代金回収のみ行う商社へ支払うマージンは5%程度が妥当だと思います。
 現在(2003年当時)これだけインターネットと宅急便が発達してしまうとK社のような商社は不要になります。また社名に”ダイレクト”を付けるメーカーが増えてきました。ユーザーも賢くなり同じ物だったら安く買う方が良いことに気が付きました。物を仕入れて利益を乗せて販売する仕事は不要です。メーカーのコンピュータで顧客管理すればよいのです。メーカーは売れる物を作ってユーザーに売ればよいのです。だからといって商社は廃業する必要はありません。商社は商社にしかできない仕事があります。例えば、メーカーの在庫負担を肩代わりするとか、自社のユーザーに宣伝するとか、良いアイディアを持っているメーカーへ開発費を提供するとかです。その対価として独占販売権を得るのも良いでしょう。利益とリスクはセットなのです。これからは利益だけ取る商売は無くなります。
 最近(2003年頃)販売したデジカメスタジオという商品はYahooオークションだけで3ヶ月で約1500個売れました。東南アジアや欧米からも注文が入りました。とても簡単な商売でした。しかし、商社へは提案しませんでした。分からない人に知らない物を説明する時間がもったいないのです。しかし、ユーザーはすぐに反応しました。その後、売れる証拠(販売実績)ができたので他社へ特許譲渡しましたが、販売前に製品を見せて売れる事を理解する商社は無いと思います。パイオニア精神は0です。しかし、コンビニのバイヤーは別です。ヒット商品は自社のコンビニで最初に販売したいと思っています。これからは特別な場合を除いて売り手と買い手が直結します。間にある摩擦は運賃のみです。

 ただ売れる物を作って欲しい人に売れば良いのです。

ありがとうございます。起業以来、下請けと工賃仕事をせず自分で考えたものを世に出して生きてきました。その経験をノンフィクションとして書いています。