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Footballers Prrevention〜サッカー選手の障害予防〜

今回は10月5日に長崎県サッカー協会医学委員会に関わるスタッフを対象に勉強会の講師をさせていただく機会を頂いたのでそのことについて少し書いて行きます。(少し内容公開です。)

障害予防とプレウォーミングアップというタイトルですが、言いたいことはサッカーから分解して(切り離してという解釈ではありません)障害予防とパフォーマンスアップを同時に考えること。選手が自分に向き合う時間を増やすように環境をつくるという事です。
対馬での講演がきっかけで講師の機会を頂いたので、当日は対馬での事も組み込んでお伝えします。

この記事は子供に届けるというよりは、子供の前に立つ機会のある育成年代の指導者の方、医療スポーツ系に進もうと思っている学生、トレーナーになりたいと思っている方、子供の教科書である保護者の何かしらのヒントになれば幸いです。

サッカー論

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サッカーは状況判断(洞察)の連続である。そのため判断を適切なタイミング、適切なものを実行できるテクニック、周囲とのコミュニケーションは欠かせない。これらの状況判断(洞察)・テクニック・コミュニケーションが90分間のなかで速いテンポで行われることで、サッカーフィットネスが向上していく。


レイモンド・フェルハイエンが

「サッカーフィットネスとはチームのプレースタイルをハイテンポで90分間実行し続ける能力」、サッカーにおけるフィットネスとはコミュニケーション・状況判断・判断を実行するテクニックをサポートするものになる

と記している。

サッカー論から考えるコンディション

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それらを実行しているのは人間であり、コンディションが鍵を握る。コンディション次第でその4つの構造の質が左右されると考える。身体の動きが悪いと動作の質も下がる。(ここでは詳細は省くが、簡単に言えば可動域が狭ければボールをコントロールできる範囲が限られるし、キックでは無駄なストレスがどこかにかかる)呼吸が正常でないと睡眠や精神的な部分にも影響を及ぼす。呼吸で少し踏み込んで考えると鼻呼吸か口呼吸かはかなり重要である。姿勢と持久力の観点からもサッカー選手は100%鼻呼吸がいい。僕は運動誘発性喘息を抱えており、小学生の頃は何度か入院をしてきた。口呼吸だった高1まではサッカー部での有酸素トレーニング(ここでは有酸素トレーニングの可否は問わない)はほぼ完走しきったことは数回ほどで、完走しても後ろから数えたほうが早かった。薬で鼻が通るようになり鼻呼吸になった高2の頃から不思議と走るようになり、走るのがさほど苦ではなくなった。理学療法士になり現在まで呼吸の事を学んできたが走れるようになったのは鼻呼吸が一つの要因だと確信した。(口呼吸当時は鼻呼吸より口呼吸が楽だった。今は言うまでもなく鼻呼吸の方がいい)呼吸で話が長くなったが、食事も重要で口にしたもので身体は作られる。食べるだけで身体が良くも悪くもなるなら口にするものを選択することが必要。食事に関しては保護者の協力が育成年代では避けては通れない問題。上記の話が雑ではあるが、これらコンディションを構成する要素が噛み合わなくなったときに身体は不調を訴える。

不調を抱えた状態とフレッシュな状態でピッチに立った時、どちらがいい状況判断・パフォーマンスができるだろうか。極論ではあるが後者だろう。完全なフレッシュな状態までは難しくてもそれに限りなく近づけるような思考や知識を自分なりにもつ選手が育成年代で増えて欲しい。それにはその層が情報を知ることが必要。

選手のコンディション以外に重要なのがもう一つ
それはトレーナー自身のコンディションだ。現場に出た時からこれは意識していたがJARTAで学ぶようになってからより一層強く意識するようになった。賛否両論あるかもしれないが、選手が目指す動作はモデルの影響を受ける。常に選手の前に立ちデモンストレーションを行うトレーナーの動作を基準にして選手はイメージし実行する。(メッシの動きをみて、そのまま実行できるわけではないが、イメージすることができる。イメージし実行するから対象と自分を比較しそれを埋める作業ができる。この認識の部分は勉強会で詳しく。)

障害予防リスクファクター

以前、元日本代表コンディショニングコーチ、現Vファーレン長崎フィットネスコーチである早川直樹氏の講義でJFAがあげるリスクファクターが5つあげられた。

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ここに追加したいのが育成年代では知識・情報不足である。

僕が学生時代に怪我したこと自体も問題だが、正しい知識や情報不足で怪我を頻発していた一つの要因だと感じている。日々勉強するにつれてこれらの情報を小学生の時から知りたかったと強く思う。(この思いをサッカー選手全てがこうするべきだと言うつもりはない。人間は一人ひとり違うので合うもの合わないものがある。選択し、試すこと。ダメならやめること。その過程で自分に合うものと出会う。その最初の段階としてサッカーをする自分の身体に興味をもつことが大切だと今はそう思っている。)

もう意識の高い子、情報に出会っている子は小学生でもコンディショニングを高める施設を利用している。(利用しなさいと言いたいわけではありません。)

長崎でも吉田さんがオスグッド検診をスタートした事で、興味を持って夏休みの自由研究の課題でオスグッドを提出したそうで。こういうきっかけで自分の身体に興味を持つことが障害予防に大切だと思います。

トレーニングの選択

選択としては、チームでやるトレーニングの選択と、個人でやるトレーニングの選択に分類している。

サッカーの体力的要素と言われているのが下記のもの。

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ドイツの指導者やフィジコ、日本のテキストにもこれらの要素がサッカーに必要な体力的なものと言われながらも、多くの育成年代のチームで可動性にフォーカスしているチームが少ない印象。アップ・クールダウンでストレッチは実施していてもあくまでもそれはアップ・クールダウンでのストレッチ。(可動性に関しては最後の方で)

上記の体力的要素と前章で述べた障害予防リスクファクターを可能な限りリンクさせ障害予防をしながらもパフォーマンスをあげていく。いや、パフォーマンスを上げ、結果とし怪我をしていない状態、予防へと繋がる。言い方の違いのように見えるがパフォーマンスが先だ。予防なんてサッカーしなければサッカーでの怪我はしないのだから。

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これは僕が勝手に作った表だが、サッカーをしている選手はサッカーが上手くなりたい、そして指導者、トレーナーも上手くなってもらいたいと思っている。選手は上手くトレーナーを利用して欲しい。怪我した後に利用するのではなく。

トレーニングの負荷

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成長期にはテストステロンというホルモンも考慮して、負荷量を設定していく事も必要なことの1つです。このテストステロンは13〜14歳から増加していきます。レイモンド・フェルハイエンはこれをサッカーフィットネスを向上させるためのトレーニングを行う実施条件としています。そのオーバーロードの基準も示されています。(その理論が全てではないですがトレーニング選択の一助になります)

また、慢性的なトレーニング負荷(3〜6週)からの急激な1週間のトレーニング量の増加(慢性的なトレーニング負荷の1.3倍)で怪我の発症リスクが高まるとの報告もあります。新年度、運動会シーズンや夏休み前半に活動量が上がり小学生・中学生の受診が増えるのも理解できます。

時間があるから練習を増やすという場合は計画的に実施することが求められます。負荷量がチームでコントロールされる事も効率よくパフォーマンスが上がり、結果的に怪我人も少なくなることに繋がると思います。(トレーニングの頻度とタイミングについてはまた違う記事で)

パフォーマンスアップしながらもサッカー選手のトラブルを防ぐ

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ここでは詳細は省きますが、ハムストリングス損傷、オスグッド・シュラッダー病、腰部疾患これらを発症メカニズムから改善するべきことを整理し、パフォーマンスを上げながらも発症リスクが下がるという考えでのトレーニングを実施していきます(主にハムストリングス損傷)

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また、パフォーマンスアップには欠かせない認識力の部分もサッカーに少し紐付けてお伝えして行きます。

プレウォーミングアップ

タイトネス・可動域制限があることで障害発生率が増加すると報告されています。だとすれば、努力次第で改善できるレベルの硬さは取り除いておくべきだと。育成年代では成長段階で筋肉が硬くなる時期が必ずきます。各筋群で時期が異なりますがそのことを把握して現場の指導者が子供達に伝えてあげることができれば救われる子は増えると思います。

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上の図はパフォーマンスピラミッドというが、下の緑の土台の部分が重要です。この緑の部分が狭いと効率よくパフォーマンスはアップしていきません。地盤の緩い場所に家を建て次第に傾いてくるなと同じで、人間も地盤が脆いといつか綻びがでます。

この緑の部分をプレウォーミングアップで拡大していきます。練習前(ウォーミングアップ)・練習後(クールダウン)のストレッチだけでは不十分です。プレウォーミングアップがより深く実施できるようになると練習前のウォーミングアップに必要な時間やメニューも少なくなって、ボールを触る時間を増やせることに繋がるかもしれません、

大切なのが、サッカーを考えてサッカーの言葉を使ってサッカーに必要なんだと子供達に理解してもらって取り組んでもらうことかなと考えています。

どこに情報を届けてそれを必要とする人に理解してもらうか。問題とされるところにアクションを起こせるか。

今回もまとまりもなくただ長くなりました。世間が興味あるから無いかはわかりませんが、キングコング西野さんの公開前に公開することに僕が興味があったので実行したまでです。)その興味から誰か1人にでも届き、どこかのサッカー少年が今のままでは起こりそうだったアクシデントを回避できるきっかけになること想像して終わりにします。

"サッカーから考える"

time will show.


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