2022.3④ Weekly Music Log ~Mrs. GREEN APPLE、藤井風、Daijiro Nakagawa、Native Rapper、blkswn radio(blkswn jukebox)~

架空対談方式で、主にその週の新譜を中心に、音楽について緩く書く週刊記事。

――4回目です。今回もよろしくお願いいたします。

よろしくお願いいたします。今週も4曲プラスおまけです。今週は藤井風や中村佳穂などの大型リリースもあって、盛りだくさんでしたね。

――特にその2アーティストは盛り上がっていましたね。

個人的には、lyrical school、通称リリスクが大好きなので、リリスクばかり聴いていたのですが、Twitterのタイムラインはやはりその2アーティストの話題を見かけることが多かった気がします。ちなみにリリスクの新曲も良かったので、是非聴いてほしいです。シューゲイザーや90sの雰囲気があって、スーパーカーというワードも出てきたりする興味深い楽曲です。こちらです。MVも素晴らしいので、貼らせてください。

――まぁリリスクは置いておいて、今週は新譜中心になりそうですね。

意外とそうでもなかったのですが、ドポップな新曲2曲と、自分の好みにバッチリはまった2曲を紹介したいと思います。

――なるほど、とりあえず、1曲目から行きましょう。お願いします。

1曲目は、Mrs. GREEN APPLEの「ニュー・マイ・ノーマル」です。

――ミセスが人気絶頂ともいえるタイミングで活動休止を迎え、復活かと思ったらまさかの脱退もあった中で、第2フェーズの開幕を告げる1曲です。

厳密には先週の曲で、MVが上がっているのは認識していたのですが、サブスクも来ているのは認識していませんでした。なので、今週聴いたわけですが、なんというか、ひたすらに自由で良いなと思いました。

――タイトルもなかなか狙っている感じありますし、曲の展開もどんどん変わっていくのが印象的です。

曲については、Real Soundの記事がまさにその通りだなぁという感じだったので紹介しておきます。

正直なところ、ちょっと展開させすぎじゃないかという気もするのですが、このバンドが持つポップネス、とりわけ大森元貴のメロディが曲全体をしっかり貫いているからこそ、成立している曲だと思いました。何度か聴いても、曲の構成というか全体像がぼやけているのですが、そういうのを吹き飛ばしてしまうほどの力強さがあります。

――記事でも指摘されていますが、ミセスの曲で転調を多くさせる曲はあまり印象がないです。そういう意味でも、「ニュー・マイ・ノーマル」なんでしょうね。それでもミセスっぽさを感じるのが面白いです。

らしさがありつつも、こんなに展開させる曲が受け入れられるのであれば、とても良いなと思います。最近はヒゲダンやKing Gnu、それこそ藤井風などが日本のポップシーンの"ポップ"の概念を押し広げるようなクリエイティビティを存分に発揮し続けていると思いますが、ミセスもその流れに連なり、"ポップ"の定義を書き換えていくような姿勢が見えて、この曲を経て、今後ミセス自身も、シーン自体もどうなっていくのかが、とても楽しみです。

――期待が大きいですね。ところで、ミセスは結構聴くんですか?

私は結構初期からミセスはちょこちょこ聴いていて、ライブも観たりする距離感でした。巷での評価は分かりませんが、EDMに振り切ったような楽曲をフェスで聴いたときはこれは面白いと思いました。それを経由して、更に開けた日本を代表するロックバンドとして成長してきたと思っています。でも、ミセスに限らずなのですが、バンドが直線的に成長し、ビジネス的にも成功していくのって、相当に難しい事だと思います。そもそも曲を作ること自体も難しいんだろうと思うこともしばしば。その中で、一旦活動休止をするという手法は全然アリだと個人的には思っています。もちろんそんなことが許される状況にあるバンドは一握りかもしれませんが、マンネリ化するぐらいであれば、続けるための選択肢としては選べるものであってほしい。その意味でも、今回のミセスは素晴らしい試みだと考えているので、今後も注目していきたいです。

――なるほど、そういった意味でも注目です。次の曲をお願いします。

次は、藤井風の「まつり」です。

――話題の1曲ですね。アルバムも『LOVE ALL SERVE ALL』が相当売れているようで、2022年3月21日~3月23日の集計で、12万枚近く売り上げたようです。

紅白を観ていなかったというのもあり、いつの間にか、そこまでのレベルのアーティストになっていたのかという気持ちもありますが、とりあえず凄まじいですね、一気に時代を代表するアーティストとなりました。

――ただ、それが相応しい風格と実力を兼ね備えているとは思います。

その通りだと思います。そうであるというのは大前提として、この曲やアルバム全体の感想は、以下の記事がかなり近しいものでした。

――どんな感じなんでしょうか?

まず、サウンド面にはそこまでしっくりこなかったのが正直なところです。この曲もいきなり切りこんでくるエレキギターなど、おっと思うような箇所はありますが、それがめちゃくちゃツボかというと、そこまででした。この記事では「ちょっといなたすぎる」と表現されていて、なるほどと思いました。

――まさしく、祭りっぽさを演出している笛の音などは面白いですけどね。

それはそうだと思います。でも、ここからなんですが、やっぱり藤井風の面白さは、言葉の使い方にあって、それを圧倒的な歌の力で表現するところに凄みがあるのだと思います。そもそも一番最初に衝撃を受けた「何なんw」なんて、まさしくそういう曲だったと思います。

この曲もそうですが、こうやって一見奇をてらった言葉を、圧倒的に間口の広いポップスとしてリスナーに届けることが出来るのは、藤井風だけだろうなと思います。ボケっと聴いていても、普通にめっちゃ良い曲だな、、、ってなっちゃいますからね。

――"センス"の一言で片づけてしまうのは横暴ですが、ここまでのシーンの駆けあがり方含めて、とてつもないことをやってのけているのは間違いなく、今後どうなるんでしょうね。

あまり藤井風のインタビューって読んだことがない気がするんですが、どうなっていくんでしょうね。すでにある程度までは到達した感がありますが、日本のシーンでしばらく活躍していくのか、それとも海外を狙うのか。いずれにしても楽しみなことは間違いないです。

――そうですね、次の曲に行きましょう。

3曲目は、Daijiro Nakagawaの「Concentration」です。

――マスロックやプログレッシブロックをポップに奏でるバンド「JYOCHO」を率いるギタリストですね。

大好きなバンドの大好きなギタリストだったのですが、見逃していました。先週リリースされていた、Daijiro Nakagawaという個人名義でソロ1stEP「Loop Lullaby」からです。

――綺麗なインスト曲ですね。

本当に綺麗です。ギターはめちゃくちゃ複雑なことをしていると思います。相当重ねているんじゃないかな。でも複雑に全然聴こえないんですよね。ここがこの人の凄いところだと思います。加えて、音色が相当にシンプルなので、全体としての響きも統一感があります。

――調べてみると、"日本の自然豊かな土地をテーマに書き下ろしたインスト楽曲"らしいです。

ひたすら納得です。澄んだ一つひとつ音が重なり合うことで、自然に調和した音楽に成る。そういうことをやっている気がします。ジャケットとの相性も抜群です。

――聴いているだけで、癒されていきますね。素晴らしい音楽です。では、この流れで最後の曲に行きましょう。

最後は、Native Rapperの「いつまで」です。

――京都在住のプロデューサー/トラックメイカー/SSWの方ですね。

Native Rapperはまじで好きで、過去の作品もめちゃくちゃに良いのですが、今作も素晴らしかったです。あまり好ましくないと思いますが、あえて例えるのであれば、tofubeatsに近しいキャッチーさがあるトラックとボーカルだと思っています。

――オートチューンの揺らぎが心地よいです。

Native Rapperはもっと聴かれて良いと思うほど、キャッチーでポップな音楽をやっていると思っています。このオートチューンがかかったボーカルも、親近感があって、すっと入ってきます。トラックは、トラップの風味もありつつも、特徴的なのはブラスでしょうか。ブラスが曲の印象を明るく照らします。

――なるほど。曲を聴いていると、言葉がすっと入ってくるのですが、リリックも良いですね。

こちらにご本人があげています。

ポジティブでもネガティブでもない、感情の難しさを絶妙に滲み出ています。このフックは最高です。まさしく今に重くのしかかる、このいかんともしがたい難しい現実との距離感が、これ以上ない形で表現されていると思いました。

いつまで いつまで 続くんだろう
眩しい 眩しい 光が刺して笑う
息を呑んでいつも通り
好きな音楽を 好きな音楽を 好きな音楽を
この街で聴いたんだ

――なんていうか、シンプルに良い曲って感じですね。

これも好ましくない表現だと思いますが、一言で言えば、相当にエモい曲です。エモーショナルが極まる、自然と感情が込み上げるという意味で。そういう、身体の奥底に響く音楽です。

――"エモい"の乱用は避けたいですが、まさしくです。さて、今週も良い曲ばかりでしたが、おまけにいきましょう。

今回は、ポッドキャスト「blkswn radio」がアップした、以下の2つのエピソードです。

――黒鳥社が毎日Twitterで発信しているマイクロ音楽マガジン「blkswn jukebox」の月例のまとめ配信のようです。

Youtubeで配信されているのですが、そこでは音源を流せないということで、Spotifyで、Music + Talk形式でアップロードしてくれているものになります。Youtubeのアーカイブでも見れますが、そこでは音源が流れないので、聴くとすれば自分で流す必要があり、流石にそれは怠い。なので、Music + Talk形式をずっと待っていたのですが、1/24に配信されたものがしばらく上がってなかったので、もう上がらないのかと思っていたところに、このタイミングで2エピソード上がっていました。

――具体的にはどんな内容なのですか?

正直なところ、黒鳥社という存在自体が大分謎で、なんか面白そうなことをやっているところぐらいの認識なのですが、ここでは、若林恵と小熊俊哉が、音楽を流しながら、音楽に関連する話をベースにしつつも、あちらこちらに派生した内容を自由気ままに語るものになっています。前者のエピソードでは、全然音楽と関係ないタングステンブームの話もしていて笑いました。

――紹介されている音楽をちらっと見てみましたが、全然わかりませんでした。

正直自分も全く知らない音楽ばかりです。でもだからこそ面白いです。海外の音楽がほとんどですが、主にBandcampでディグられた曲がメインのようです。本当に知らない曲が多いし、その良さがいまいち分からないことも多いですが、自分で選んだら絶対にリーチすることはないだろう音楽ばかりについて知れるので、良い機会になっています。(1曲54分ある曲とか挿入されていて、流石に飛ばしたりもしました笑)

――勉強みたいな感じなのでしょうか。

そういう感じでもないですけどね。二人のトークも普通に面白いので、あまり気張らずとも聴けるコンテンツではないかと思います。エピソードの中でもちらっとそういうニュアンスのことを言っていましたが、飲み屋での音楽話って感じの部分もあって、この温度感が良いです。

――なるほど、特に気になった部分とかありますか?

前者のエピソードのタングステンの話ですかね。全然音楽に関係ない話と思っていたら、最後には「我々は音楽を選択の対象としているかのように扱っているが、果たしてそれは本当か?我々は音楽に選ばれているのではないか?」という話があって、ぶっ飛んだ話でもありますが、まさにそうだなと思いました。

音楽に限らず何かを選ぶということについて、どんなものも全てを網羅することは不可能であり、そこに偶然性が介在すると考えれば、絶対に自分が選んだという主体性以外の要素も絡んできているわけです。そういう要素を意識的に扱うことは重要だと思っていて、その個人的な実践の一つが、こういう自分とは遠いコンテンツを意識的に選び取るという行動に繋がっているのかなと思います。もちろんそこからも零れ落ちるものはあるわけですが。

――偶然性みたいな話は、最近?かは分かりませんが、よく出てくる話ですね。

とても興味深い話だと思っていて、多様な側面から話せる内容だと思います。今回はこの辺にしておきますが。

――そうしましょう。この記事を読んで、全く知らなかった何かに出会ったという人がいれば嬉しいですね。

いいまとめです、そういうことです。今回もありがとうございました。またよろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?