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夫婦にはセックスする義務がありますか?

■問題

 法律上,夫婦にはセックスする義務がありますか?


■回答

 夫婦には性交渉に協力する一般的な義務がある,とした裁判例があります。


■説明

 その裁判例は,東京地判平成23年3月15日(平21年(ワ)第38347号・平22年(ワ)第693号。公刊物未搭載だと思われます)です。

 この判決は,丁寧な事実認定をした上で,次のように示しました(改行等は引用者によるものです)。


「婚姻中の夫婦にとって,性生活は,互いの愛情を確かめ,子を持つことにもつながる極めて重要な要素であり,夫婦の一方は,それぞれ他方に対し,性交渉を行うことに協力すべき一般的義務を負うということができる。

 したがって,夫婦の一方が性交渉を開始したにもかかわらず,他方が合理的な理由もなくこれに応じないことは,上記協力義務への違反であり,不法行為を構成する。

 しかし,夫婦の双方がともに性交渉を開始しない場合においては,原則として,いずれか一方にのみ性交渉を開始すべき義務が生じると解することはできず,例外的に,夫婦の一方に自ら性交渉を開始することができない客観的事情があり,他方に対して性交渉の開始を求めたにもかかわらず,他方が合理的な理由もなく性交渉を開始しないといった特段の事情が認められる場合に限り,他方が性交渉を開始しないことが上記協力義務に違反するものとして不法行為を構成すると解するのが相当である。」


 尚,注意すべきは,この判決は,2つに場合分けをしているという点です。


 つまり,判決は,次のように述べています。夫婦をXさんとYさんとします。

(1)Xさんが性交渉を開始した場合
 Yさんが,合理的な理由なく性交渉に応じない場合は,Yさんに義務違反が認められる。


(2)XさんもYさんも性交渉を開始しない場合
 原則として義務違反ではない。
 しかし,例外的に,(a)Xさんに自分から性交渉を始めることができない客観的事情があって,(b)XさんがYさんに性交渉の開始を求めたにもかかわらず,(c)Yさんが合理的な理由もなく性交渉を開始しない場合――この(a)~(c)が全てそろった場合――には義務違反が認められる。


※ 実際の訴訟では,(1)については主張立証がないとされ,(2)の場合が問題となりました。そして,上記の(a)がないとして,不法行為の成立は認められませんでした。


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