見出し画像

+GoldFish乗船記録

マーティズ:鈴木勝吾
クラリス:田中良子
ワイズナー:村田洋二郎
パーカー:川本成
ポロット:佐久間裕人
ビクトール:一内侑
エヴリン:甲斐千尋
ベントン:桜田航成
ベントー:塚本拓弥
アーシュラ:角島美緒
シンシア:斎藤瑞季
ブラント:德秀樹

                                                                   2021.6

■あらすじ

洋館が舞台。招待客はそれぞれ同じ目的、同じ小説の中の話によって集っていた。物語は水槽のなかの煌めく魚を中心に回る。翌日までに洋館の水槽にいる魚の名前を当て、願いを込めると1人だけ、戻りたい過去へ戻してもらえるという。とある人物は魚の名前を知っていて、物語をかき混ぜようとするも、何かが足りないことに結末で気づく。果たして過去へ戻ることができる人が居るのか、またその者の取り戻したい過去はどんな過去なのか。

■食われた羊羹と齧られた蜜柑🍊

洋館の持ち主マーティズはカウンターでお酒をあおりながら、水槽を見つめてうっとりしている。無邪気で屈託のない笑顔の彼は"名前当てゲームの首謀者"なのか。(中の人、鈴木勝吾さんの歌声と華やかさは毎度うっとりする。どんなに許せないセリフも「この方なら仕方ない」と思ってしまうのが悔しい。笑)

1人、また1人と来客。誰もが水槽をうっとりと眺めては、様々な名前で魚に呼びかける。

画像1

魚の名前がわかればたった1人だけ戻りたい過去へ戻ることができると、来客者は逸話の書かれた小説を片手に躍起になって洋館へ訪れたのだった。

魚の名前は来館した翌日までに呼びかけられないとならない。そして、それは誰かの"大切な人"の名前だという。様々な規定を掻い潜り、訳有り夫婦が2組、うだつの上がらない男、純粋な小説ファンの男、近所の殺人事件の犯人疑いの男、恋人と小説の答えを導きだした女、実は答えを知っていそうでどこか謎を秘めた女、最後に洋館に訪れた小説を持たない欲のない協力的な不思議な男、この中のうち、誰が魚の名前を当て過去の"やり直し"に成功するのか。

冒頭、洋館に集められたのは11名だと言われていたが、あと1人"登場人物が足りない"のはなぜか。

一体、誰が何の目的で水槽のなかの魚に名前を与えたのか。

魚に正解の名前を呼びかけたとして、本当に過去を取り戻せるのか。

洋館の人々は魚の名前を知るまでに、"たった一人になること"だけに執着して罵り合ったり、お互いを探り合うなどして過ごしていた。

夫と参加したエヴリンは焦りのあまり、純粋で明るいシンシアに強く当たってしまう。(余談だが2者とも体当たりの演技で、シンシアの座っている椅子を強く蹴飛ばし叫んでいたのには圧倒された。エヴリンの中の人、甲斐千尋さんが綺麗な方だったので「エヴリン椅子蹴飛ばされ券」があったら購入したかった。)

ビクトール夫妻、ベントン夫妻ともに旦那さんは過去へ戻る権利を1人でも多く得るために来ていた。見知らぬ他人同士でないといけない館の規定では違反だったが、参加者が認めたため、彼らも続けて滞在した。

■鮮やかに色づいた君の声

しかし、ここで過去に戻るどころではない出来事が起こる。

隣町で殺人事件が起き、犯人は逃走中とのこと。むやみに出歩くと危ないからと、彼らは洋館に閉じ込められてしまう。閉じ込められているなか、なんと、犯人疑いのある人間が同じ洋館に居ることが判明した。

翌日に控えたタイムリミットを前に、殺人犯と同じ屋根の下という恐怖に煽られた参加者たちは、最初で最後のはずの夜をともに過ごす。

クラリスとシンシアとワイズナーは犯人疑いのあるブラントを飲み会へ誘う。集うきっかけとなった小説の感想を語り合いながら、作品の考察や好きなシーンを話題にすることで犯人を炙り出そうとした。会話に矛盾が生じれば確信が持てる。泥酔したところを捕まえる計画だった。しかし、疑われたブラントは全て難なく饒舌に答え、殺人犯の疑いは晴れた。

真犯人は気さくで明るく振る舞い、協力して殺人犯を捕まえようとしていたワイズナーだった。(他の作品と比べて村田さんのコメディー要素が少なかったゆえ、さらに恐怖を煽られた。余談だが、別の年のワイズナー役はIZAMさんがされていた情報も得た。IZAMワイズナーもまた恐ろしそう。)

犯人だという決定打のピストルは、使用人が預かった。

そのはずが、ワイズナーは別のピストルを隠し持っていて、再び洋館を恐怖の渦に陥れる。

そこへクラリスが応戦、預けたふりをして彼女がピストルを隠し持っていた。(このシーンにスカッとしたし、とてもカッコ良かった‼︎)

画像2

■声殺して目を塞いで闇に溺れて彷徨って

そんな最中、翌日に控えたリミットを前に、過去に戻られるチャンスを得るための投票イベントが行われた。

自分以外の誰か1人へ投票し、得票数順に洋館へ残る権利が与えられる。開票後、条件が自ずと浮き彫りになった。参加者と調和が取れていて、過去へ戻りたい熱意の強い人が選ばれていく。もちろん、不正を働くことは許されない。投票用紙は無記名でないため、票を操ることも難しい。

取引きで不正を働いた人、鼻につくくらい明るくて物語から浮いていた人、わがままで周りを掻き乱して孤立していった人、どの人物も願いを叶えるのに必死だ。

結局、大事を取って洋館を後にする人、票が得られなかった人たちが去って行った。

"たった一人"になるために集まった人々は残り2名。

「全集中ハゲ隠しの方」こと、ポロットは不正を働いたにもかかわらず一票も得られず退散。「椅子蹴りクソ女」ことエヴリンは勿論、魚の名前を当てることに必死で誰とも仲良くなれず、同伴した夫からも票はもらえなかった。魚の力で過去へ戻れなくても、後に過去になる今を生きてやり直そうと彼らは判断した。

最後はシンシアとクラリスが残った。

クラリスは「あなたに譲るわ」と優しく声をかけ、シンシアを見守るように水槽から離れていく。

最後に残ったのはシンシア。


意中の人の名前を叫ぶも、何も変化は起こらない。

呆気にとられていると、クラリスがすかさず答えを叫んだ。

彼女が過去に遡って取り戻したかったのは、マーティズの心だった。

シンシアによって奪われたマーティズの心を取り戻すため、クラリスは過去に遡りたかったのだ。

「あんたみたいに純粋なフリして大切なものを奪う女は大っ嫌いなの」ストレートすぎるクラリス様の言葉に背筋が凍った。

良子さんカッコいい。好きすぎる。

ここから先は

1,614字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?