2016.2.6 今宵に名前をつけるなら 冬-2

つづきです。

朗読とコンテンポラリーダンス。衝撃、というか、そもそも朗読もまともに聞いたのが初めてだった私でしたが、一気にふたりの作り出す世界に引き込まれました。自然と池田さんと高野さんの呼吸に合わせて息をしている自分を感じながら、池田さんが読み終わり、高野さんが動きを止める、その瞬間まで、鳥肌が止まりませんでした。

なんだかすごいものに首を突っ込んでしまった気がするぞ、と思いながら、次に待ち望んでいた岡野大嗣さんの朗読。歌集『サイレンと犀』から連作をいくつかと、朝日新聞「あるきだす言葉たち」より新作「ゆぶねさよなら」。

ねるまえに奥歯の奥で今朝食べたうどんの七味息ふきかえす

マーガレットとマーガレットに似た白い花をあるだけ全部ください

もう声は思い出せない でも確か 誕生日たしか昨日だったね

(岡野大嗣『サイレンと犀』収録「マーガレット」より一部引用)

日常のささやかな独り言のように展開されていく岡野さんの朗読は、今まで文字とツイッターだけの概念だった岡野大嗣の存在と実物のギャップを軽々と越えて埋めていくようにすんなりと馴染んでいきました。この後から私はいろんな短歌の朗読を聞くこととなるのですが、小説や詩と違って、31文字ごとにひとつの作品となっている短歌の連作を朗読するのは、とくにむずかしいことであるとわかりました。連作の中でそれぞれの短歌がどのような位置に立っていて、どのような役割なのか、読み手がじゅうぶんに把握していないと読めないからです。岡野さんの連作はそれぞれの短歌に強いちからを持ちながら、相殺しないぎりぎりのところでバランスを保っているところが魅力なのだと思います。

さて、イベントは中盤「おでんブレイク」に入ります。休憩を兼ねて10分ほど談笑したり、高橋さんのつくったおでんを食べます。

(私の写真記録がなかったためこよなまtwitterより拝借!)
もうこれが、寒い冬の夜にじんわり沁み渡ってたまらなくおいしかったのを覚えています。これから春のシチュー、夏のカレー、秋には豚汁といろいろなごはんをいただきましたが、どれも普段食べるのとはちがう格別なお味でした。きっとUMLAUTのあの空間で食べる、というのもスペシャル感がアップするのでしょう…。

次は冬最後です。つづく。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?