2016.2.6 今宵に名前をつけるなら 冬-3


つづきです。

高橋さんのおでんをおいしくいただいておなかは満たされ、会は後半へ。

2人目のゲストは詩人の西尾勝彦さん。こよなまを通して私はそれまで知らなかったクリエイターの方々とたくさん出会うことになるのですが、西尾さんもそのうちのひとりとなりました。

字が小っちゃくて読みにくいんだよね、と笑いながらご自身の詩集を朗読し始める西尾さん。抑揚が控えめで聞き手にゆだねる池田さん、独り言のようにぽつぽつと零していくような岡野さんとは一味違うゆったりとした朗読は、また心地よくUMLAUTの空間に響きました。

いつからか

素朴に暮らしていきたいと

思うようになりました


飾らず

あるがままを

大切にしたいと

思うようになりました


そうすると


雲を眺めるようになりました

猫がなつくようになりました

(西尾勝彦『言の森』収録「そぼく」より一部引用)

安心感のある、声と話しぶりに、すっかりあたたかくなって、この後詩集を買ったのですが、誰かにこれすっごいいいよと貸したっきり戻ってこないし、自分も誰に貸したか忘れちゃったのですが、西尾さんの詩集ですし、そのうちひょっこり帰ってくるような気がします。


池田彩乃さんの詩と高野裕子さんの踊り。
岡野大嗣さんの短歌朗読。
西尾勝彦さんの詩の朗読。

会のラストは、参加者も朗読をしてしめくくります。
冬の回の「今宵の朗読」は、26歳の若さにして亡くなった歌人、笹井宏之さんの歌集『えーえんとくちから』より5首。
初句、二句、三句、四句、結句、と区切られた5首を、出演者の4人と、おでんを作ってくれた高橋さん、それから参加者の20人で順番に読みました。

この森で軍手を売って暮らしたい まちがえて図書館を建てたい

愛します 眼鏡 くつひも ネクターの桃味 死んだあとのくるぶし

暮れなずむホームをふたりぽろぽろと音符のように歩きましたね

あたたかい電球を持つ(ひかってた ひかってました)わかっています

冬の野をことばの雨がおおうとき人はほんらい栞だと知る

(笹井宏之『えーえんとくちから』より引用)

この文章を書いているのは1月25日ですが、つい昨日、1月24日が笹井さんの命日でした。心臓麻痺だったそうです。

こよなまの面白いところは、参加者が各々でほんとうに「今宵に名前をつける」ところ。
私は意地になって全回にわたりつたない短歌を提出させていただきました。

こうしてみると一人だけすげーながくて編集が面倒だっただろうなと……すみません。

終わった後、すっかり次のこよなまが楽しみで楽しみで、

こんなことも言ってました。

忘れてはいけないのが季刊『めいめい』のお話。
こよなまの出演者の、その日の朗読や、高野さんの踊っているところの写真が載った、こよなまの朗読会と共に発行された本です。よいとこどりの一冊。
『めいめい 2016冬』は、みんな大好き歌人のポケストップ「葉ね文庫」のとびやまさんこと池上規久子さんのエッセイも載っています。

現在冬号がどのくらいどこで取り扱われているのか私はわからないのですが、この記事を読んで気になった方がいらっしゃいましたら、池田さんに尋ねてみてください。(葉ねさんにまだ残部あるのかな……?)

余談ですが会場にたまたまいらっしゃった安福望さんにもサインをいただきました。うれしかった。

↑おちゃめな岡野さん。

以上で「今宵に名前をつけるなら 冬」のレポは終了です! こんなので本当にいいのか九条!?
春ではまた、楽しい、思い返してもわくわくするようなすてきな出会いがありました。

更新をお楽しみに!(?)

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