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見ていて辛かったイニエスタのラストマッチ

2023年7月1日のヴィッセル神戸vsコンサドーレ札幌がアンドレス・イニエスタの日本でのラストマッチになりました。神戸生まれでずっとヴィッセル神戸を応援してきた自分にとっては、まずはイニエスタに感謝の気持ちを伝えたいです。本当に神戸に来てくれて、5年もの時間を共に過ごしてくれてありがとう。本当に最初から最後までプロフェッショナルな人でした。

(途中交代でピッチを後にする際、対戦相手のペトロビッチとはハグをし、吉田孝行は無視するイニエスタは見なかったことにしました。)

残酷なラストマッチ

試合終了後、チームスタッフや選手たちとハグをしながら最後の時間を過ごすイニエスタを見ると込み上げてくるものがありましたが、試合はなかなか残酷で、見るのが辛いものでした。この気持ちも忘れたくなくて、文章に残しておこうと思います。

今年の神戸の「めっちゃ頑張る」サッカー

イニエスタ退団の経緯は本人含めいろんなところで語られているので詳細に振り返ることはしませんが、チームスタイルとの方向性の違いがありました。これが本人の契約期間を残したタイミングでの退団にまで進むのですから、コミュニケーションとしては話が終わってしまっていることが伺えます。縦に早く、中盤を省略するパワーサッカーによってチームも首位争いを繰り広げるほどに結果を出しており、流石に年齢的な衰えもあるイニエスタはなかなか居場所を作りづらい状態でした。

確かに今季前半の神戸は強い。大迫と武藤は国内レベルだと1人2人では止まられず、相手をなぎ倒しながらゴールを奪う力がある。この2人や山口蛍が120%で走るので、チーム全体がハードワークを尽くすマインドができている。でも、神戸サポも含めて皆が感じていることだと思うのですが、大迫と武藤が怪我なんかでいなくなったら成立しないサッカーをしているんですよね。これで1年やれるかどうかの不安はずっとある。

だから、2点差以上でリードしている展開などであれば、大迫や武藤、山口や齊藤なんかを休ませるような采配が長い目で見たら重要だと思うのですが、決してそうはならない。武藤や山口なんかは80分を超えてギアを落とさないところが売りの選手ではあり、毎試合頭は下がるのですが、「休ませろよ」という気持ちになります。

試されなかったプランB

今のチームスタイルと異なる戦い方、リードしている時に試合を大人しくクロージングさせるプランBというものが今はない。ボールを保持してボールを走らせるサッカーをするには、イニエスタもサンペールもリンコンもいるわけですが、彼らが絡んでくることはなかった。拮抗している時も、リードしている時も、試合を勝って終わらせる方法は「もっと選手を走らせる」だけなんですよね。

今の「もっと選手を走らせる」戦い方は確かに効果的で、勝ててしまう戦力がある。でも、個人的にこれで夏は超えられないと思う。勝てなくなりだした時に取れる選択肢が「もっと頑張る」しかないのだから。勝てている間にプランBをやる20分を何度か取るべきだった。でもそういうことはせず(そこまでできる余裕がなく、とも言えると思うが、その結果イニエスタ退団になってるけれどそのリスクを追ってまで頑なになるところだったのか?吉田監督がここまで頑ななのは驚く。フロントに都合のいい中間管理職じゃないのかよ。正直、イニエスタ・プランを用意した上で勝ち切るようなカードをきれない吉田孝行のことはチキン野郎だと思っています。首位の監督、かつチームの功労者に言う言葉ではないことは自覚していますが。)

まあ、こんなことを思いながら、イニエスタの退団には苦々しい思いで見てきました。イニエスタやサンペールの入ったプランBも合わせて、チーム全員でリーグを最後まで戦い、優勝をしたかった。そうならなくなってしまった今、ヴィッセルには「もっと頑張る」戦い方しか残らなくなってしまった。そして、7月1日。夏が来ました。

プランBが無いが故に

ラストマッチということでイニエスタの先発となりましたが、前半は地獄のような時間でした。まずイニエスタがゲームの中央にいるにも関わらず、ヴィッセルは武藤とパトリッキを走らせるロングボール一辺倒。対戦相手の札幌は当然それを警戒しているので、低く構えた中で弾き返し続け、逆に札幌も得意の縦に速い攻撃を繰り出す。この構図でお互いの最終ラインが低いままボールが行ったり来たりして、前半から無駄に中盤が間伸びし、イニエスタと関係のないところでボールが行ったり来たり。

イニエスタがいたところでチームの戦い方は変えないんですよ。だっていないままで勝ってきてるし、イニエスタ・プランはこれまでチームで(頑なに)やっていませんから。やれるメンバーがいるのになあ・・・と思いつつ、何度も何度も繰り返しカウンターを喰らい、1失点をし前半終了。この試合単体で見てもそうだけど、今季のこれまでのチームづくり全てがイニエスタに「あなたの居場所はないんですよ」と伝えるゲームになってしまっていた。悲しすぎるよ。

そして元に戻った後半

後半、さあどうしたらいいんだろうなあ・・・と思っていたらなぜかベンチスタートだった大迫が頭から登場。この采配も、スタメンを見て正直嫌な気持ちになっていました。後半でイニエスタ下げて大迫入れて、いつものサッカーで30分戦えば最終的になんとか試合にはなるでしょ、という判断に見えたんですよ。そんで、思いのほか前半で何も出来なかったから後半頭から交代出場。最初から使っておけよという。後半キックオフと同時に、迷うことなく最終ラインから大迫目掛けてロングボールが飛ぶ。大迫は持ち前のパワーと技術でボールを収め、PA付近でFKを獲得する。流石過ぎるんですが、あまりに真っ直ぐ「めっちゃ頑張るサッカー」が発揮され、笑いとため息が出ました。

そしてイニエスタは後半10分で交代でした。正直、この展開になると本格的にお呼びでないんですよね。体力的に走れていないというか、この展開じゃ入れないですからね。試合に入れないから走れていない、という感じでした。悲しい。本当に悲しい。

ピッチ内とピッチ外の温度差

この試合はイニエスタの日本でのラストマッチと大々的に謳われ、売れたのかどうか知りませんが数百万円のプレミアムシートも発売され、普段スタジアムには行かない自分の友人(海外サッカーファン)もチケットを買いスタジアムへ行っていました。イニエスタの姿を見たいからです。イニエスタの魔法のボールタッチを見たいからです。プロモーションでは万全の体制を整えておいて、ピッチ内ではその体制は一切ないわけです。スタジアムに行った人はどう感じたのでしょうか?

この日の動員数は、4年前の「フェルナンド・トーレスvsイニエスタ」となった鳥栖戦の動員を超えたそうです。あの試合ではイニエスタの魔法が見れましたよね・・・伸び伸びとプレーするイニエスタが日本で見れる幸せを存分に感じることができる一戦でした。

天皇杯優勝(クラブ初タイトル!!)を初め、美しい思い出がたくさんあります。私自身、「何度もイニエスタのプレーを生で見る人生」が送れるとは思っていませんでした。だから、本人には感謝の気持ちしかありません。だからこそ、最後の試合がこれだけ辛い姿になってしまったことが残念でならないのです。その感情を吐き出すために、文章を書きました。

退団となってしまったからこそ

これで、今季の神戸は今のスタイルで優勝することが必須になってしまったような気持ちです。じゃないとイニエスタも報われないよ。この残念な気持ちが上書きできない。今日の試合を見るだけでも、これからしんどい夏になりそうな雰囲気が伝わるのですが、なんとか頼みますよほんと。

本当に家族を愛していて、家族で神戸を楽しんでいる雰囲気は日々伝わってきていたのでよかったです。私の生まれ故郷のかなり近くに住んでいたようで、「馴染みのある風景にイニエスタ一家がいる!」と驚いたものでした。そしてお子さんは日本ですくすく大きくなっていって、5年の月日を感じさせましたね。

イニエスタの5年のプレーがまとまっています。古橋・・・ポルディ・・・ビジャ・・・

何度も繰り返しになりますが、神戸に来てくれてありがとう。これからどこに行っても応援し続けます。

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