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「観る将」が観た第13期女流王座戦第三局

12月5日、リコー杯第13期女流王座戦五番勝負第三局が山形県天童市の天童ホテルで行われました。ここまで2連勝の里見香奈女流王座が一気に防衛を果たすのか、加藤桃子女流四段が1勝を返して流れを変えるのか、注目の一局となりました。

前夜祭では、里見女流王座は「明日は自分の力をすべて出し切れるように精一杯頑張りたいです」、加藤女流四段は「星取り的にはあまりよくない状況ではありますが、明日は自分の力を信じたいと思いますし、一局でも多く指せるように頑張っていきたいと思います」と挨拶しています。


中飛車対居飛車穴熊

里見女流王座がベージュのスーツ姿で入室し、加藤女流四段は紺色のワンピースに濃紺のジャケットを着て入室します。先手の里見女流王座は中飛車に振り、加藤女流四段が12手目に角道を開けると、15手目に6筋の歩を突いて角道を止めます。加藤女流四段が穴熊を目指すと、美濃囲いに構えた里見女流王座は▲3七桂と右桂の活用を図ります。

激しい駒交換

里見女流王座が飛先の歩を交換すると、加藤女流四段は4筋の歩をぶつけて角の利きを飛車に当てます。里見女流王座は▲5三飛成と銀を食いちぎり、角金両取りに▲4五桂と跳ねて金桂交換します。飛桂と金銀の交換となり、里見女流王座は6筋の歩を伸ばして角の利きを通し、加藤女流四段が8筋の歩をぶつけると、▲5四歩と角頭を叩いて3筋に引かせます。里見女流王座が次の49手目を考慮中に昼休となりました。各3時間の持ち時間の内、残り時間は里見女流王座が1時間49分、加藤女流四段が2時間29分となっています。

里見女流王座の"と金"攻め

里見女流王座は昼休を挟む18分の熟考で▲4三金と打ち、加藤女流四段が△8七歩成と飛び込んで角に当てると、▲5五角と飛び出します。加藤女流四段は銀桂両取りに△6九飛と打ち込み、里見女流王座が▲8三歩と飛頭を叩くと、9筋に寄ってかわして横利きを残します。里見女流王座は49分の長考で5筋に"と金"を作り、加藤女流四段が△6七飛成と銀を取って竜を作ると、▲4二銀と打ち込んで攻め合います。形勢は加藤女流四段に傾いているようです。

里見女流王座の猛攻

加藤女流四段は24分熟考して角で取り、里見女流王座が角金と金銀の交換で清算してから▲3一角と打つと、△4一金と紐を付けます。里見女流王座は飛角交換して金桂両取りに▲8二飛と打ち込み、加藤女流四段が金底の歩で受けると、▲3二金と打ち込んで詰めろを掛けます。加藤女流四段が△3三桂打と角の利きを止めると、里見女流王座は▲4二金と金交換してから▲8一飛成と桂を取って竜を作ります。

加藤女流四段の角の王手

加藤女流四段が5分の少考で△8四角と王手すると、玉をかわせば3三の桂が効いた詰み筋もあるようなので、里見女流王座はやむなく▲7五桂と合い駒します。先手に持ち駒を使わせた加藤女流四段は、△3二金と自陣に埋めて穴熊を再生し、形勢は大きく加藤女流四段に傾いたようです。

竜切りからの鮮やかな寄せ

残り30分を切った里見女流王座は玉を早逃げし、加藤女流四段が5筋に歩を垂らして"と金"作りを狙うと、▲6六金と竜取りに打って食い下がります。加藤女流四段は△4七竜と金を食いちぎり、△3七銀と捨て、△2五桂と跳ねて寄せにいきます。加藤女流四段が△4七金と銀を取って詰めろを掛けると、里見女流王座は18分程考え続けましたが、後手玉に詰みはなく先手玉の受けも難しいため、無念の投了となりました。

まとめ

本局は里見女流王座が加藤女流四段の誘いに応じ、激しく飛桂と金銀を交換して攻め合う将棋となりました。里見女流王座は金銀と"と金"で穴熊を崩しに掛かりましたが、加藤女流四段は銀取りの飛車打ちで先手の攻めを急がせ、王手の角打ちで先手の攻撃力を削ぎました。最後は加藤女流四段が竜切りから鮮やかに寄せ切り、持ち時間を1時間以上残しての快勝となりました。
1勝を返した加藤女流四段は、終局後のインタビューで「ストレートで終わらなくてよかったという安堵感と、もう一局指せる喜びがあります。次局も伸び伸びと指せたらいいなと思います」と話しました。里見女流王座は、次局に向け「集中して頑張りたいと思います」と話しており、両者が力を出し尽くした熱戦を期待したいと思います。

リコー杯女流王座戦は、株式会社リコーと日本将棋連盟が主催しています。棋譜等は下記サイトをご覧ください。


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