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祝「六冠」藤井聡太竜王が棋王を獲得

藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖)が、3月19日の棋王戦五番勝負第四局に勝って棋王を奪取し、自身初の六冠となりました。20歳8か月での達成は、これまで羽生善治九段が持っていた24歳3か月を大幅に更新する最年少記録となりました。一夜明けての会見で藤井竜王は「その立場に見合う将棋が指せるよう、これから努めていければと思います」と語っています。

藤井竜王が五冠を獲得したのが昨年の2月でしたから、これまでの勢いからするとようやく六冠目を手にしたという言い方もありますが、この1年間は五冠すべてを防衛した上で新たなタイトルを手にしたのは快挙と言うしかありません。

もはや誰がどうやって藤井竜王の独走を止めるのかが焦点になっていますが、竜王戦七番勝負では広瀬八段が、王将戦七番勝負では羽生九段が、藤井竜王の経験が浅く自らの経験を活かせる局面に誘導して主導権を握る作戦で臨みました。2人とも先手番で2局、中盤までに得たリードを終盤まで完璧な指し回しで快勝しましたが、後手番では藤井竜王を崩すことができず惜しくも敗退となりました。

棋王戦五番勝負では渡辺棋王が、現在の主流となっており藤井竜王も得意とする角換わり腰掛け銀で真っ向勝負を挑みました。お互いの研究の広さと深さが問われる展開となり、渡辺棋王は後手番で一矢報いて意地を見せましたが、残念ながら失冠となりました。名人戦七番勝負でも藤井竜王の挑戦を受けることが決まっている渡辺名人としては、棋王戦と同じ戦い方をするのか、広瀬八段や羽生九段の戦い方を取り入れるのか、悩ましいところかと思います。

藤井竜王は最近、タイムマネジメントをかなり意識して戦っているように感じます。序中盤から惜しみなく時間を投じて経験のない局面になってもバランスを保つところは変わりませんが、1年前に比べると終盤にも時間を残しています。あまり関係ないのかもしれませんが、早指しの一般棋戦でさえ終盤まで考慮時間を残していることが多く、4棋戦の完全制覇という大偉業の要因になったような気がします。

一方ではご本人が「長考した場面で適切な判断ができなかったところが結構多かったと思うので、読みだけではなくて、複雑な局面であっても俯瞰的に捉えて判断する力が足りていないのかなと感じる」と話した通り、1時間以上の長考の末に指した手で形勢を損ねるシーンが何度かありました。藤井竜王のことですから、長考して深く深く読み進めることで相手の良い手も見えてしまい、踏み込むべきところで踏み込めなくなってしまうことがあるのかもしれません。

これは師匠の杉本八段が「ここ数局を見ると、有利な将棋がいったん互角になるなど、やや安定感がない。半年前の方が隙が無かった。しかしそれは不調ではなく、得意だったものを捨てて新しいものを試しているのかもしれない。成長する前段階なのでは?」と発言されているのとも重なる部分があると思っています。

藤井竜王が将棋の真理探究に向け、師匠の見立て通りに更なる飛躍を遂げることを期待しつつ、見守り続けていきたいと思います。

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