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「観る将」が観た第33期女流王位戦 挑戦者決定戦

3月14日に女流王位戦の挑戦者決定戦が行われました。女流王位決定リーグ紅組優勝の渡部愛女流三段と、白組優勝の西山朋佳女流二冠との顔合わせになりました。渡部女流三段は女流タイトル初挑戦となった第29期女流王位戦で、里見女流王位から3勝1敗で奪取した経験があります。西山女流二冠は女流タイトル獲得通算9期で、女流王位戦は女流棋士に転向した今期が初参加となります。両者は第1期白玲戦の七番勝負で激突しており、西山女流二冠(当時三冠)が4勝0敗のストレート勝ちで初代白玲を戴冠しています。

振り駒で先手となった渡部女流三段は居飛車、西山女流二冠は四間飛車の駒組みを進めます。西山女流二冠が穴熊を目指すと、渡部女流三段は左美濃に構えてから銀冠に組み替えます。西山女流二冠が7筋に飛車を回すと、渡部女流三段は▲8六銀と上がって角頭を守り、すぐに9筋から仕掛けます。西山女流二冠が△7三金と寄って辛抱すると、渡部女流三段は▲5五歩と突いて後手の銀を引かせてから飛車を浮きます。西山女流二冠が次の48手目を考慮中に昼休となりました。各3時間の持ち時間の内、残り時間は渡部女流三段が1時間57分、西山女流二冠が2時間23分と差が付いています。

昼休が明けるとすぐ、西山女流二冠は7筋から反発します。渡部女流三段も8筋と6筋の歩を突き捨て開戦の機会を探りますが、西山女流二冠は△8三金と寄り穴熊の上部に金冠を被せて受け止めます。渡部女流三段は▲8四歩と打って後手の金を7筋に押し返し、四段目に先手の歩を並べて後手の玉頭を制圧しますが、先手の玉頭も空間が空き隙がありそうです。渡部女流三段は5筋の歩も突き捨てて角道を開け、▲3三飛成と角と交換して桂取りに▲4四角と飛び出し開戦します。

西山女流二冠は桂取りを受けずに△2八飛と敵陣に打ち込み攻め合います。渡部女流三段は残り時間が1時間を切り、▲6八銀と引いて自陣を固めます。お互いに桂を取り合い、西山女流二冠は△9八歩と香頭を叩きます。取るしかありませんが、続く△8六桂が金香両取りの痛打となります。後手の7二の飛車の利きが先手陣に通るともたないので、渡部女流三段は▲7六桂と打って辛抱します。西山女流二冠が慌てず桂取りに△7五歩と打つと、渡部女流三段は▲9三歩成と成り捨て敵玉を睨み▲4六角と据えます。渡部女流三段の残り時間が30分を切り、形勢も西山女流二冠に傾いてきたようです。

西山女流二冠が△7六歩と桂を取ると、渡部女流三段は▲8六銀と桂を食いちぎり▲7六金と歩を払って粘ります。西山女流二冠はわずか2分の考慮で△8七銀と寄せに入ります。渡部女流三段が▲8七同金と取った瞬間、後手玉にも易しい詰めろが掛かりますが、当然承知している西山女流二冠は王手の連続で△6四桂と打ち、先手の角道を遮断して詰めろを逃れます。西山女流二冠が馬を取って△6六角と打つと、渡部女流三段は残り3分まで考えて▲9三香成と形を作ります。西山女流二冠が▲4八金と王手を掛けると、渡部女流三段は無念の投了を告げました。

本局は西山女流二冠が珍しく穴熊に囲ったのに対し、渡部女流三段が積極的に端攻めを仕掛けました。西山女流二冠が手厚く玉頭を守ると、渡部女流三段は飛車角交換して激しい戦いに突入しました。西山女流二冠が桂取りに構わず先に攻めたのが好判断だったようで、一気に先手陣を攻略してしまいました。女流王位リーグの最終局を体調不良で不戦敗して心配された渡部女流三段でしたが、持ち味の強気の攻めを見せたものの届かず、惜しくもここで敗退となりました。

西山女流二冠は里見女流王位への挑戦権を獲得し、先日西山女王に里見女流四冠の挑戦が決まったマイナビ女子オープンと合わせて、2つのタイトル戦を同時並行で戦うことになりました。対局後に里見女流四冠との十番勝負になることを聞かれた西山女流二冠は「技術面が問われるシリーズになるのかなと思う」「体調面に気をつけて挑みたい」と語りました。両雄のダブルタイトル戦で幕を開ける2022年度の女流棋界は、勢力図が大きく変わる可能性もあり非常に楽しみになってきました。

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