3月4日に、マイナビ女子オープン挑戦者決定戦が行われました。北村桂香女流二段と大島綾華女流初段という、ともにタイトル初挑戦を目指すフレッシュな顔合わせとなりました。

北村女流二段は2013年プロ入りの28歳です。今期は鈴木女流三段らを降して予選を突破し、本戦では長谷川女流二段、上田女流四段、伊藤女流四段を破って勝ち上がっています。2015年の女流王将戦以来、久し振りの挑戦者決定戦進出ですが、女流順位戦はB級に在籍し、女流名人戦では第48-49期に女流名人リーグ入りを果たすなど、いつタイトル戦に登場しても不思議ではない実力者です。

大島女流初段は2021年プロ入りの21歳です。今期は加藤(結)女流初段らを降して予選を突破し、本戦では頼本女流初段、里見女流四冠(当時)、加藤(桃)女流四段を倒して勝ち上がっています。女流順位戦はC級ですが、今年度は女流王位リーグに参戦し、伊藤女流四段らを破って4連勝した後、西山女王をあと一歩のところまで追い詰めながら、惜しくも敗れて紅組優勝を逃しています。この数か月はタイトル戦常連の4人と互角以上に戦っており、急速に力を付けてきた期待の若手の一人です。

戦型は横歩取り

振り駒で後手となった大島女流初段が横歩取りに誘導し、北村女流二段は青野流で迎え撃ちます。大島女流初段は△2六歩と垂らし、北村女流二段が▲3八金と受けると、△7六飛と横歩を取ります。北村女流二段が▲7七角と受けると、大島女流初段は角交換してから△7四飛と引いてぶつけます。

飛交換から角の打ち合い

北村女流二段は飛交換に応じてから香取りに▲3七角と打ち、大島女流初段が△7三角と合わせると、▲4六歩と角道を止めて局面を落ち着かせます。大島女流初段は25分の熟考で△3三桂と跳ね、北村女流二段が次の33手目を考慮中に昼休となりました。各3時間の持ち時間の内、残り時間は北村女流二段が1時間55分、大島女流初段が2時間6分となっています。

北村女流二段が角切りの強襲

昼休明け、北村女流二段が▲2八歩と補強すると、お互いに銀を上がって陣形を整えてから、大島女流初段は4筋の歩を突きます。北村女流二段は▲2六角と垂れ歩を取り、大島女流初段が△4六角と飛び出すと、▲4四角と歩をもう1枚取ります。大島女流初段が△7三桂と力を溜めると、北村女流二段は▲5三角成と玉頭の歩を食いちぎり、王手角取りに▲5六飛と打ちます。

大島女流初段の痛烈な角打ち

早くも残り1時間を切った大島女流初段は22分の熟考で玉を4筋に引き、北村女流二段が飛車で角を取って王手すると、△4五歩と飛頭に歩を打って守ります。北村女流二段が▲5六飛とかわすと、大島女流初段は飛車取りに△6五角と打ちます。飛車を逃げると3筋の金を素抜かれるので、北村女流二段は34分長考して残り1時間を切り、▲8六角と王手してから▲6六歩と突いて飛角交換を催促します。

大島女流初段の玉頭攻め

大島女流初段は単に飛角交換するのではなく、△5五歩と打って飛車と角を取り合い、5筋に攻めの拠点を残します。北村女流二段は▲9八角と自陣に打って後手が右桂を跳ねるのを防ぎますが、大島女流初段は4筋の歩を伸ばして△4五桂と左桂を跳ねて先手の玉頭に迫ります。北村女流二段は▲6八銀と玉頭を補強し、大島女流初段が空いたスペースに△8八飛と打ち込むと、▲5三角成と馬を作って下駄を預けます。

飛車を見捨てての着実な寄せ

大島女流初段は△5七歩と玉頭を叩いてから、もう1枚の飛車を△6九飛と打ち込み、北村女流二段が▲7八金と引いて飛車に当てると、構わず△5八歩成と"と金"を作ります。北村女流二段は金で飛車を取り、大島女流初段が△6八飛成と竜を作って王手し、"と金"で銀を取って詰めろを掛けると、金を上がって詰めろを逃れます。大島女流初段が慎重に3分考え、銀で王手してから"と金"で金を取って詰めろを続けると、北村女流二段は攻防共に見込みなく、投了を告げました。

まとめ

本局は大島女流初段が横歩取りからの激しい戦いを挑み、北村女流二段はいったん局面を落ち着かせに行ったものの、角切りの強襲から攻め合いを選択しました。大島女流初段は角を打って飛車を取り、2枚飛車で先手陣に攻め込むと、"と金"で銀と金を拾って着実に寄せ切る快勝となりました。
大島女流初段は挑戦権獲得により女流二段に昇段し、女流王位リーグで惜敗した西山女王との五番勝負に挑みます。対局直後には「まさか自分がタイトル挑戦までいくとは考えていなかったんですけど、挑戦が決まったからには一生懸命、準備したいと思います」と初々しく話しています。進境著しい新鋭が、初めてのタイトル戦でどのような将棋を魅せてくれるのか、期待して見守りたいと思います。

マイナビ女子オープンは株式会社マイナビが主催しています。棋譜は下記サイトをご確認ください。