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「観る将」が観た第3期白玲戦七番勝負第五局

10月14日、ヒューリック杯白玲戦七番勝負第五局が、京都市の「ザ・ゲートホテル京都高瀬川」で行われました。1勝3敗とカド番に追い込まれた里見香奈白玲が巻き返すのか、西山朋佳女流三冠が一気に奪還するのか、注目の一局となりました。


戦型は相三間飛車

西山女流三冠が紺地に紫や水色の花柄の着物と灰色の袴で入室すると、里見白玲は淡い橙色に花柄の着物と紺色の袴で入室します。先手の西山女流三冠が初手に三間飛車に振り5手目に3筋の銀を立つ趣向を見せると、里見白玲は△5三銀~△4四銀と繰り出してから、12手目に三間飛車に振ります。

5筋と9筋の位

西山女流三冠が飛先の歩を交換すると、里見白玲は5筋の位を取ってから歩で飛車を追い返します。西山女流三冠が9筋の位を取ると、里見白玲は玉を7筋まで移動してから3筋の歩を交換して銀で取ります。西山女流三冠は27分の熟考で▲3七歩と受け、両者とも陣形の整備に戻ります。

西山女流三冠の端角

里見白玲は5筋の歩を伸ばして角道を開け、西山女流三冠が▲7七桂と跳ねて角交換を拒否すると、△4六銀と歩を取って攻め掛かります。西山女流三冠は▲5六飛と歩を取って銀に当て、里見白玲が3筋に銀を引くと、▲9七角と覗いて後手陣を睨みます。里見白玲は△5二金上と受け、西山女流三冠が飛車を7筋に戻すと、△3四飛と浮き飛車に構えます。

里見白玲も端角

西山女流三冠は▲4七金と上がって高美濃に構え、里見白玲が1筋の歩を突くと、▲3六歩と突いて後手の銀を追い返し、▲3七銀と上がって厚みを築きます。里見白玲は1筋の位を取り、西山女流三冠が▲3八金と矢倉の形に構えると、△1三角と覗いて先手の動きを牽制します。次の49手目を西山女流三冠が考慮中に昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は里見白玲が2時間32分、西山女流三冠が2時間30分と拮抗しています。

里見白玲が飛車で揺さぶり

昼休が明け、西山女流三冠が▲4六銀と上がると、里見白玲は△5三銀と引いて飛車の横利きを通します。西山女流三冠が▲5六飛~▲5五銀と中央に戦力を集めると、里見白玲は角を2筋に戻してから△8四飛と飛成を狙います。西山女流三冠は8筋の歩を突いて防ぎ、里見白玲が飛車を7筋に寄ると、▲8五歩と伸ばします。両者とも小刻みに時間を使い、隙を作らないように指し進めています。

西山女流三冠も飛車で揺さぶり

里見白玲は21分の熟考で△5四歩と打ち、先手の銀を6筋に引かせてから△7六飛と潜ります。西山女流三冠は▲3五歩~▲2六飛と飛成を狙いますが、里見白玲は△3三角~△2四歩と防ぎます。お互いに戦機を探って細かい揺さぶりを掛けていますが、立会人の糸谷八段は先手の方が少し指し易いと評価しています。

慎重な駆け引き

西山女流三冠は24分の熟考で8筋の歩をぶつけ、里見白玲が6筋の歩を突いて先手の角の利きを緩和すると、▲3四歩と伸ばして角に当てます。里見白玲が角を4筋に引いてかわすと、残り1時間を切った西山女流三冠は7筋に底歩を打ちます。この手は飛交換になった後の両取りを防ぐ手ですが、里見白玲も残り1時間を切り、じっと8筋の歩を取ります。西山女流三冠が▲4六金と守りの金を前進すると、里見白玲は△9六飛と、先手の角と歩の間に入ります。

西山女流三冠の踏み込み

攻めの糸口が掴めない西山女流三冠は飛車を3筋に寄せ、里見白玲が銀を上がって3筋を補強すると、歩で銀を追い返してから5筋の歩をぶつけます。西山女流三冠は5筋の歩を取り込んで銀で取らせ、3筋の歩を成り捨てて▲3三同飛成と角と刺し違え、飛銀両取りに▲8七角と打ちます。激しく駒がぶつかりましたが、形勢は里見白玲が指し易くなってきたようです。

金底の歩

里見白玲は△4五銀とぶつけて金銀交換してから△9七飛成と角と交換し、西山女流三冠が▲6三角と王手で飛び出すと、角を合わせて交換します。西山女流三冠は13分の考慮で桂取りに▲3六角と打ち直し、里見白玲が手厚く△4六金と受けると、▲4五角と桂を食いちぎり、攻防に▲3一飛と打ち込みます。里見白玲は5筋に金底の歩を打って自陣を固め、西山女流三冠が1筋の香を取って竜を作ると、△3七歩と金頭を叩いて桂で取らせてから△4六金と先手玉に迫ります。

里見白玲の玉頭攻め

西山女流三冠が金取りに▲4七香と打つと、里見白玲は△3七金と桂を食いちぎります。西山女流三冠が玉で金を取って上部脱出を図ると、里見白玲は△5八飛~△6八飛成と銀を取って竜を作ります。西山女流三冠は金取りに▲5五桂と打ち、里見白玲が△4九角と詰めろを掛けると、金桂交換して得た金を自陣に投じて粘ります。

西山女流三冠の反撃

里見白玲は△6七角成と馬を作って銀に当て、西山女流三冠が▲6一銀と後手玉に迫ると、△3六歩と玉頭を叩いて2筋に引かせ▲2五桂と追撃します。1分将棋に突入した西山女流三冠は竜を3筋に寄せて守りに利かせ、里見白玲が馬で銀を補充すると、▲5二銀不成と金を取って王手します。

着実な寄せ

里見白玲が玉を7筋にかわすと、西山女流三冠は▲3六竜と後手の攻撃の拠点となっていた歩を取りつつ馬に当てます。里見白玲が構わず△3七歩と金頭を叩くと先手玉には受けがなく、西山女流三冠は竜で馬を取り、詰めろを掛けて形を作ります。里見白玲は△3八歩成と金を取って王手し、西山女流三冠は投了を告げました。

まとめ

本局はお互いに三間飛車に振り、端角を覗いて浮き飛車で揺さぶりをかける慎重な駆け引きが長く続きました。両者ほぼ同時に残り1時間を切ったところで、西山女流三冠が積極的に仕掛けましたが、陣形をうまくまとめた里見白玲が主導権を握りました。西山女流三冠は懸命に粘って後手玉に迫りましたが、里見白玲は手厚い指し手を続けて寄せ切りました。
2勝3敗と1つ返した里見白玲は、先手番となる次局に向け「引き続き集中して頑張りたいと思います」と意気込みを話しました。西山女流三冠も「状態を整えて頑張りたいと思います」と話しており、次局以降も熱戦を期待したいと思います。

ヒューリック杯白玲戦は、ヒューリック株式会社と日本将棋連盟が主催しています。棋譜等は下記サイトをご覧ください。


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