10月7日、霧島酒造杯第45期女流王将戦三番勝負が宮崎県都城市の霧島創業記念館「吉助」で開幕しました。女流三冠を保持する西山朋佳女流王将に挑戦するのは、久し振りのタイトル挑戦となる香川愛生女流四段です。

西山女流王将は、奨励会在籍時代の第41期に当時の里見女流王将を破り、自身初の女流王将になっています。第42期は防衛しましたが、第43期に失冠し、前期は再び奪還して通算3期の獲得となりました。

香川女流四段は女流王将戦との相性が良く、第35期に当時の里見女流王将を破って自身初タイトルを獲得し、第36期は清水女流六段(当時)を降して防衛しています。第37期に失冠したものの、第38期にも挑戦権を獲得し三番勝負に挑んでいます。今期は木村女流1級、中井女流六段、小高女流初段、渡部女流三段を破り7年ぶりの三番勝負登場です。

向かい飛車穴熊対居飛車穴熊

振り駒で先手となった西山女流王将が、3手目に角頭の歩を突き向かい飛車に振ります。西山女流王将が美濃囲いに構えると、香川女流四段も左美濃に囲います。西山女流王将が銀冠から穴熊を目指すと、香川女流四段も銀冠から穴熊に組み替えます。

小競り合いが勃発

両者ともに穴熊の堅陣を築き、西山女流王将が9筋の歩をぶつけると、香川女流四段は6筋の歩をぶつけます。西山女流王将は9筋の歩を取り込み、香川女流四段が5筋の歩もぶつけると、▲9五角と飛び出し桂に当てます。香川女流四段が飛車を7筋に寄せて桂に紐を付けると、西山女流王将は4筋の歩をぶつけます。

激しい攻め合い

香川女流四段は5筋の歩を取り込み、西山女流王将が飛車を5筋に回して受けると、9筋の香を走って角に当てます。西山女流王将は▲7七角とかわしますが、香川女流四段は△8五桂と追撃します。西山女流三冠は角を8筋に引いてかわし、香川女流四段が飛車を5筋に寄せて突破を図ると、4筋の歩を取り込んで後手の金を吊り上げ、6筋の歩を取り込んで角の利きを金に当てます。激しい戦いに突入し、形勢はわずかに香川女流四段に傾いているようです。

角金交換

香川女流四段は△3三角と上がって金に紐を付けますが、西山女流王将は▲4四角と金を食いちぎり、▲5四歩と飛頭を叩きます。取ると金を飛角両取りに打たれるので、香川女流四段は飛車を4筋に寄ってかわしますが、西山女流王将は▲9四香と香を取ります。駒割りは角と金香の2枚替えとなり、形勢はほぼ互角に戻っています。

馬と飛車の攻防

香川女流四段は△9九角成と馬を作り、西山女流王将が飛車取りに▲4八香と打つと、△4五歩と打って守ります。西山女流王将が▲5六飛と歩を補充してから▲5九飛と引いて桂に紐を付けると、香川女流四段は飛車取りに△8六角と打って攻防に利かせます。西山女流王将が▲5七飛とかわすと、香川女流四段は△6六馬と引いて飛車を追います。

2枚の馬と"と金"

西山女流王将は▲4四歩と飛頭を叩いてから、角取りに▲8七飛と回り、香川女流四段が△5九角成と2枚目の馬を作ると、▲5三歩成と"と金"を作ります。香川女流四段は5筋の歩を伸ばし、西山女流王将が飛車取りに▲5四金と打ちますが、構わず△5七歩成と"と金"を作ります。西山女流王将は飛車で"と金"を食いちぎってから、▲4四金と飛車を取ります。形勢は大きく西山女流王将に傾いてきました。

西山女流王将の玉頭攻め

香川女流四段が△4九飛と打ち込むと、西山女流王将は▲4三"と"と寄って金を引かせ、▲5二飛と打ち込みます。香川女流四段は△6四馬と引いて自陣に利かせますが、西山女流王将は2筋の歩を突き捨て、▲2四歩と銀頭を叩いて吊り上げ、▲3四金と寄って銀に当てます。

一直線の攻め合い

香川女流四段は2筋の歩を伸ばして銀に当て、西山女流王将が▲2三歩と銀頭を叩くと、構わず△2七歩成と銀を取って攻め合います。西山女流王将が▲2二歩成と銀を取って王手し、再度▲2三歩と金頭を叩くと、攻防ともに見込みがなくなった香川女流四段は投了を告げました。

まとめ

本局は西山女流王将が珍しい角頭の歩を突く作戦を採用し、香川女流四段は序盤から慎重に時間を使って隙を作らずわずかに優勢の局面を築きました。西山女流王将は角で金を食いちぎって主導権を奪い返しますが、香川女流四段も2枚の馬を作って先手陣に攻め込みました。西山女流王将は後手陣の玉頭から攻め掛かり、香川女流四段も怯まず攻め合いましたが届かず、一気に寄せ切りました。
西山女流王将は、仕掛けにうまく応じられて苦しい序中盤でしたが、豪腕を発揮した終盤の迫力には好調を感じさせました。
惜しくも敗れた香川女流四段は、Youtubeで「内容的には充実していた」とファンに結果報告をしており、次局での巻き返しに期待したいと思います。

霧島酒造杯女流王将戦は、株式会社 囲碁将棋チャンネルが主催し、霧島酒造株式会社が協賛しています。棋譜等は下記サイトをご覧ください。