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「観る将」が観た第13期女流王座戦第二局

11月10日、リコー杯第13期女流王座戦五番勝負第二局が仙台市の「懐石料理 東洋館」で行われました。先勝した里見香奈女流王座が一気に防衛まであと1勝と迫るのか、加藤桃子女流四段が巻き返すのか、注目の一局となりました。

前夜祭では、里見女流王座は「仙台に対局者として来ることができてうれしく思います」、加藤女流四段は「仙台には対局でもプライベートでも来ていて、グルメを堪能しました」と挨拶しています。


里見女流王座は中飛車

里見女流王座が白のスーツ姿で入室し、加藤女流四段はグレーのワンピースに紺のジャケットを着て入室します。後手の里見女流王座は飛車先を受けずに中飛車に振り、加藤女流四段が飛車先の歩を交換すると、△3二金と上がって受けます。加藤女流四段が舟囲いにしてから角道を開けると、美濃囲いに構えた里見女流王座は21分の熟考で△3五歩と伸ばします。

里見女流王座の仕掛け

加藤女流四段が▲3六歩とぶつけて交換すると、里見女流王座は5筋の歩をぶつけて角道を通します。加藤女流四段が27分の熟考で角を交換してから▲4五銀と出ると、里見女流王座は22分の考慮で香取りに△5五角と打ちます。加藤女流四段が▲7七角と合わせて2筋の金を間接的に睨むと、次の40手目を里見女流王座が考慮中に昼休となりました。各3時間の持ち時間の内、残り時間は里見女流王座が1時間52分、加藤女流四段は2時間23分となっています。

激しい順を回避

昼休が明け、里見女流王座は△4六角と出て5筋突破を狙いながら飛車に当て、加藤女流四段が歩で飛車取りを受けると、△3三桂と跳ねて金取りを受けつつ銀に当てます。加藤女流四段は▲5六銀とかわしつつ歩を取り払い、里見女流王座が△5四飛と浮くと、▲4七金と上がって角に当てます。何か所も駒がぶつかりましたが、両者とも激しい順を避け、駒台には歩以外の駒は乗っていません。

飛車交換

里見女流王座は角を1筋に引き、加藤女流四段が3筋の歩を突いて桂の活用を図ると、金を3筋に寄せてから香を上がって角の利きから外します。加藤女流四段は▲8六角と覗き、里見女流王座が銀取りに△5五歩と打つと、▲6五銀とかわして飛車に当てます。残り1時間を切った里見女流王座が△2四飛とぶつけ、飛交換して角で取ると、加藤女流四段は▲5九金と寄って飛車の打ち込みに備えます。

お互いに竜を作っての攻め合い

里見女流王座は△2九飛と打ち、加藤女流四段が▲1七香とかわすと、△2八飛成と竜を作って香を追います。加藤女流四段も▲1一飛と打ち込み、里見女流王座が△1三香と角の利きに逃げると、▲1二飛成と竜を作って金に当てます。里見女流王座は金底の歩を打って受け、加藤女流四段が▲4八金引と陣形を整えると、△1七竜と香を取ります。形勢はわずかに加藤女流四段が指し易いようです。

加藤女流四段の自重

控室では先手が角を切って2枚替えする手を有力と見ていましたが、加藤女流四段はじっと▲7七桂と跳ねて力を溜め、里見女流王座が△2八竜と再び竜を好位置に戻すと、9筋の歩を突き捨ててから▲9三歩と垂らします。里見女流王座が5筋の歩をぶつけて銀で取らせ、△5二香と打って銀に当てると、加藤女流四段は3筋の歩を伸ばして角の利きを止めます。

絶好の竜引き

里見女流王座が8筋の歩を突いて先手の桂跳ねを防ぐと、加藤女流四段は残り1時間となり▲9五香と走ります。里見女流王座は△5一銀と引いて先手の角の利きから外し、加藤女流四段が取られそうな銀を▲4七銀と引くと、△3五角と歩を取って再び角の利きを通します。加藤女流四段が▲4六歩と打って角の利きを止めると、里見女流王座は△2四竜と引いて玉頭の守りにも利かせます。

角竜の田楽刺し

加藤女流四段は▲3四歩と打って後手の竜の位置を変え、▲9二歩成と飛び込んで香を交換し、▲3六香と角と竜を田楽刺しにします。里見女流王座が△5八歩と叩いて先手玉の右辺への退路を狭め、8筋の歩を伸ばして角に当てると、加藤女流四段は香で角を取ってから▲9七角とかわします。

里見女流王座が9筋を突破

里見女流王座は8筋の歩を突き捨て、角取りに△9四香と打つと、加藤女流四段は▲9六歩と打って香を引き付けてから▲7九角と引いてかわします。里見女流王座は△8八歩と垂らし、加藤女流四段が▲8五桂と跳ねて後手の玉頭を睨みつつ竜の横利きを止めると、△9八香成と先手陣に攻め込みます。形勢は里見女流王座に傾き始めたようです。

加藤女流四段の遠見の角

加藤女流四段は▲1三竜と香を取り、里見女流王座が△8九歩成と角を捕獲すると、▲1四竜と引いて左辺への展開を目指します。里見女流王座は歩で竜の横利きを止め、加藤女流四段が▲9四歩と垂らすと、△8四歩と桂頭を叩いて催促します。加藤女流四段は▲9六香と攻め駒を足し、里見女流王座が△8二玉と早逃げすると、竜取りに▲1七角と打って遠く後手玉の退路を睨みます。

角交換での凌ぎ

竜が逃げると後手玉は詰んでしまうので、里見女流王座は"と金"で角を取って王手し、△2六角と打って角交換します。加藤女流四段が歩と銀で竜を追い、▲9三桂成と王手すると、里見女流王座は△7一玉とかわします。加藤女流王座は3筋の桂頭を叩き、里見女流王座が△4六竜と転回を図ると、▲3三歩成と桂を取り、▲6六桂と打って竜の横利きを止めつつ7筋に跳ねて美濃崩しのチャンスを待ちます。

竜切りからの決め手

里見女流王座が△9七成香と引くと、加藤女流四段は▲4七金左~▲5六金と竜を追い、金取りに▲4五桂と打って攻め合います。里見女流王座は金を引いてかわし、1分将棋となった加藤女流四段が竜取りに▲7五角と打つと、△7五同竜と食いちぎって先手陣の急所に△5九角と打ち込みます。加藤女流四段は自陣に銀を打って粘りますが、里見女流王座が△7六香と王手すると、しばらく下を向いていた顔を上げて投了を告げました。

まとめ

本局は里見女流王座が積極的に動きましたが、加藤女流四段は丁寧な指し回しでわずかに優勢になったように見えました。加藤女流四段が強く踏み込む手順を自重すると、里見女流王座は竜を引き付けて守りにも利かせ、9筋から反発して逆転模様となりました。加藤女流四段は遠見の角を放って後手玉を追い詰めましたが、里見女流王座は角交換で凌ぐと、最後は竜で角を食いちぎって寄せ切りました。
連勝スタートで防衛まであと1勝となった里見女流王座は、対局後のインタビューで「次も先後が決まっているので、準備をして挑めたらと思います」と淡々と話しました。加藤女流四段は「とにかく全力を尽くすのみです」と力強く話しており、次局での巻き返しに期待したいと思います。

リコー杯女流王座戦は、株式会社リコーと日本将棋連盟が主催しています。棋譜等は下記サイトをご覧ください。


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