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「観る将」が観た第3期白玲戦七番勝負第六局

10月21日、ヒューリック杯白玲戦七番勝負第六局が、札幌市の「札幌ビューホテル 大通公園」で行われました。1つ返して2勝3敗とした里見香奈白玲が最終局まで決着を持ち越すのか、西山朋佳女流三冠が勝って奪還するのか、注目の一局となりました。

前夜祭では、里見白玲が「明日は自分の力を精一杯出しきれるように、全力を尽くして頑張りたいと思います」と述べると、西山女流三冠は「明日は第六局と佳境になってきましたが、新たな気持ちで一局一局を頑張ってまいります」と話しました。


西山女流三冠は向かい飛車

西山女流三冠が白地に赤や青の模様が入った着物と濃紺の袴で入室すると、里見白玲は桜色に花柄の着物と亜麻色の袴で入室します。後手の西山女流三冠が向かい飛車に振ると、里見白玲は左銀を▲4六銀と繰り出します。西山女流三冠は飛車を3筋に振り直して受けますが、里見白玲は3筋の歩をぶつけて仕掛けます。

里見白玲は袖飛車

西山女流三冠は角を2筋に引いて受け、里見白玲が飛車を3筋に寄せると、3筋の歩を取り合ってから△3三銀~△3四歩と先手の銀を追い返します。お互いに陣形を整備し、里見白玲が2筋の歩を伸ばしてから飛車を2筋に戻すと、西山女流三冠は△3三角と上がって受けます。両者とも駒組みに戻り、里見白玲が再び飛車を3筋に寄せたところで昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は里見白玲が2時間31分、西山女流三冠が2時間30分と拮抗しています。

大駒の総交換

西山女流三冠が昼休を挟む27分の熟考で6筋の歩を伸ばすと、里見白玲は43分の長考で▲3四飛と走ります。西山女流三冠が△5三銀と引いて角道を開けると、里見白玲は角交換に応じ、飛車も交換します。両者の駒台に飛車と角が乗る乱戦になりましたが、形勢はほぼ互角に保たれているようです。

西山女流三冠の端攻め

里見白玲は3筋の桂頭を歩で叩き、西山女流三冠が桂を2筋に跳ねてかわすと、▲3三歩成と"と金"を作ります。西山女流三冠は9筋の端歩をぶつけ、里見白玲が▲4三"と"と寄ると、△6二銀とかわします。里見白玲が39分の長考で残り1時間を切り、9筋の歩を取ると、西山女流三冠は7筋の歩を突いて自玉の懐を拡げます。

里見白玲の馬

里見白玲は▲6五桂と跳ね、西山女流三冠が7筋の歩をぶつけると、香取りに▲3三角と打ちます。西山女流三冠が桂取りに△6四歩と打つと、里見白玲は▲5三桂成と飛び込んで銀桂交換し、▲3二飛と打ち込んで攻め掛かります。西山女流三冠も残り1時間を切り、9筋の香頭を叩いて吊り上げてから5筋の歩をぶつけます。里見白玲は角で取って馬を作り、西山女流三冠が9筋の香を走ると、▲9五同香と応じます。大駒が後手陣の急所に刺さり、形勢はわずかに里見白玲に傾いてきたようです。

西山女流三冠の竜

西山女流三冠は王手香取りに△9八飛と打ち込み、里見白玲が馬を引いて玉を守ると、香を取って竜を作ります。里見白玲が▲9九香~▲8六銀と竜を追ってから▲1一馬と香を補充すると、西山女流三冠は銀取りに△7四桂と打ちます。里見白玲は▲7五銀とかわし、西山女流三冠が△9七歩成と飛び込むと、香で"と金"を取ってから再び▲8八馬と引き付けて竜を追います。

竜と馬の城壁

里見白玲は竜取りに香を打ち、西山女流三冠が香を合わせて受けると、香取りに▲9七歩と打ちます。西山女流三冠は飛車取りに△6五角と打ち、里見白玲が▲3五飛成とかわして竜を作ると、△8五竜と反撃の糸口を探ります。里見白玲は▲7七金と玉頭を補強し、西山女流三冠が△7六角と出ると、▲8六歩と突いて竜に当てます。西山白玲が△7五竜と銀を食いちぎると、里見白玲は竜で取って鉄壁の城砦を築きます。

駒得の拡大

1分将棋に突入した里見白玲は▲3三飛と打ち込み、西山女流三冠が金を寄ってかわすと、▲2三飛成と竜を作って桂に当てます。西山女流三冠が△8四銀と打って竜に当てると、里見白玲は竜を角と刺し違えてから▲2五竜と桂を取ります。西山女流三冠は△7五銀と前進し、里見白玲が▲7六歩と銀取りに打つと、△3八飛と王手します。里見白玲は銀を引いて受け、西山女流三冠が△8六銀と先手玉に圧力を掛けると、じっと9筋の香を歩で取ります。先手が角桂香の駒得となり、形勢は大きく里見白玲に傾いています。

自陣竜の粘り

西山女流三冠が6筋の歩を突き捨ててから金銀交換し、馬取りに△8六金と打つと、里見白玲は▲9四桂と王手で反撃します。西山女流三冠が玉を7筋に引いてかわすと、里見白玲は3筋の飛頭を歩で叩きます。取ると王手飛車があるので、西山女流三冠は金を馬と交換してから△3二飛成と竜を自陣に引き付けますが、里見白玲は▲1七角と自陣角を打って王手し、▲8二銀と追撃します。西山女流三冠が玉を6筋にかわすと、里見白玲は▲5五銀と遊び駒を活用してじわじわと後手玉に迫ります。

手堅い受け

西山女流三冠は△5四金とぶつけて金銀交換し、竜で取って活用を図りますが、里見白玲は手堅く▲5五金と打って竜を追い返し、▲6四金と出て7筋の桂を取りに行きます。西山女流三冠は△4九角と王手し、里見白玲が玉を5筋にかわすと、△7六角成と馬を作って食い下がります。里見白玲は金で桂を取り、西山女流三冠が△6三銀打と金取りに打つと、竜銀両取りに▲6四桂と打ちます。

ギリギリの攻め合い

西山女流三冠も1分将棋に突入し、竜を逃げずに△7四銀と金を取ると、里見白玲は桂で竜を取ってから▲2二竜と攻め込みます。西山女流三冠が△6三玉と上がって竜の利きから逃れると、里見白玲は▲6四金と捨てて、▲5二竜と金を取り返しながら後手玉に迫ります。西山女流三冠は△7五玉と上部脱出を図り、里見白玲が馬取りに▲6七金と打つと、△6五桂と王手します。里見白玲が玉を4筋に引いてかわすと、西山女流三冠は△5七金と追撃し、先手陣の金を剥がしてから△4五桂と先手玉の脱出路を塞ぎます。

竜切りの寄せ

里見白玲が▲5五飛と王手し、▲4五飛と桂を食いちぎると、この飛車を取ると自玉が危ないので、西山女流三冠は△6七金と打って先手玉に迫りつつ自玉の上部を開拓します。里見白玲は▲7八桂と打って後手玉の上部脱出を防ぎ、西山女流三冠が竜取りに△6三銀と上がると、▲6三同竜と銀を食いちぎります。西山女流三冠は竜を取って下駄を預けますが、後手玉には即詰みが生じたようで、里見白玲は▲6五飛から王手を続けます。西山女流三冠は数手指し続けましたが、里見白玲の▲8八桂を見て投了を告げました。

まとめ

本局はいきなり大駒を総交換して激しい展開となり、西山女流三冠の端攻めに乗じて駒得した里見白玲は、堅実な受けで徐々にリードを拡げて勝勢の局面を築きました。両者1分将棋となる中、西山女流三冠は諦めずに玉頭から圧力を掛け、先手玉をあわやのところまで追い詰める豪腕を発揮しましたが、里見白玲は冷静に対処し、最後は竜切りから一気に寄せ切り193手の激闘を制しました。
本シリーズは2期連続で最終局に決着を持ち越すこととなりました。対局直後のインタビューで、里見白玲は「自分の力を出しきれるように頑張りたいと思います」、西山女流三冠は「またしっかり状態を整えて、頑張りたいと思います」と話しています。女流棋界の最高峰を決める戦いが、熱戦になることを期待したいと思います。

ヒューリック杯白玲戦は、ヒューリック株式会社と日本将棋連盟が主催しています。棋譜等は下記サイトをご覧ください。


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