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「観る将」が観た第13期女流王座戦第一局

10月25日、リコー杯第13期女流王座戦五番勝負がホテル椿山荘東京で開幕しました。3連覇(通算7期)を目指す里見香奈女流王座と、クイーン王座(通算5期)を狙う加藤桃子女流四段の顔合わせとなりました。女流王座戦は過去5回の女流名局賞の内、3回も選ばれており、好局が生まれやすいタイトル戦なのかもしれません。

加藤女流四段は今期、中村真梨花女流四段、堀彩乃女流1級、渡部愛女流三段、西山朋佳女流三冠を降し、2期連続の挑戦となっています。

両者の対戦成績は里見女流王座の36勝12敗です。タイトル戦では過去11回顔を合わせ、里見女流王座が9回戴冠していますが、前期女流王座戦ではフルセットの激闘となっており、今期も熱戦が期待されます。


里見女流王座は中飛車

加藤女流四段が青灰色に花柄の着物と象牙色の袴で入室し、里見女流王座は紫地に花柄の着物と辛子色の袴で入室します。振り駒で先手となった里見女流王座が中飛車に振って5筋の位を取ると、加藤女流四段は△7三銀と繰り出し超速の構えを見せます。里見女流王座は▲5四歩と仕掛け、加藤女流四段が△4四歩と突いて角道を止めると、5筋の歩を交換してから銀を繰り出し銀対向の形になります。

加藤女流四段の研究か

里見女流王座は美濃囲いに構え、加藤女流四段が△2二玉と寄ると、▲5五銀とぶつけて銀交換します。加藤女流四段が歩で飛車を追い返してから左美濃を完成させると、里見女流王座は25分の熟考で▲4五歩とぶつけて角の捌きを狙います。ここまでノータイムで指し進めていた加藤女流四段が初めて手を止め、次の40手目を考慮中に昼休となりました。各3時間の持ち時間の内、残り時間は里見女流王座が2時間4分、加藤女流四段が2時間13分となっています。

加藤女流四段の辛抱

加藤女流四段は昼休を挟む49分の長考で△5五銀と持ち駒を投じて辛抱し、里見女流王座が4筋の歩を取り込むと、打った銀で取り返します。里見女流王座はじっと9筋の端歩を突き、加藤女流四段が2筋の歩を突いて銀冠を目指すと、▲5八金左と高美濃への組み換えを図ります。

銀の前進

加藤女流四段は8筋の歩を突き捨て、里見女流王座が角で取ると、△4五銀と角道を開けて9筋の香に当てます。里見女流王座は6筋の歩を突いて後手の角の利きを止め、加藤女流四段が3筋の歩を伸ばすと、▲5七金と上がって6筋の歩を支えつつ後手の銀に圧力を掛けます。加藤女流四段は△3六歩とぶつけ、里見女流王座が銀取りに▲4六歩と打つと、3筋の歩を成り捨ててから△3六銀と前進します。

加藤女流四段の端攻め

里見女流王座が▲5三歩と垂らすと、加藤女流四段は1筋の歩を突き捨てて△1七歩と垂らします。里見女流王座は手堅く▲2六銀と打ち、加藤女流四段が△4四角と覗くと、残り1時間を切り▲3五歩と打って1筋への利きを緩和します。加藤女流四段は1筋の歩を成り捨てて香を吊り上げ、△2五歩と打って銀を1筋に引かせ、△3五角と歩を取って再び1筋への睨みを利かせます。形勢はわずかに加藤女流四段に傾き始めたようです。

里見女流王座の辛抱

里見女流王座が▲4八金と上がり、上部への守りを補強しつつ飛車の横利きを1筋まで通すと、加藤女流四段は残り1時間を切り、歩を1筋に連打して銀と香を吊り上げてから△8六飛と角と交換します。加藤女流四段が△4四角打と利きを足すと、里見女流王座は▲1一飛打と自陣に投じて凌ぎます。

加藤女流四段の猛攻

加藤女流四段が△2三銀と玉頭に厚みを加えると、里見女流王座は▲4七銀と上がって後手の銀に当てます。加藤女流四段は△1七角成と飛び込み、角2枚を飛香と交換してから△1五香と走り、里見女流王座が銀で取ると、△1六香と王手で畳み掛けます。取ると王手金取りがあるので、里見女流王座は▲2八玉と引いてかわしますが、加藤女流四段は△1八飛と追撃します。

挟撃態勢

里見女流王座は▲3九玉と引き、加藤女流四段が△4七銀成と銀交換してから△1九飛成と竜を作って王手すると、▲2九香と合い駒します。加藤女流四段は△1八香成と詰めろを掛け、里見女流王座が▲4九玉とかわすと、20分の熟考で△6八銀と打って飛車に当てます。里見女流王座は▲5八飛とかわし、加藤女流四段が△2九竜~△6九銀成と挟撃態勢を作ると、▲5二歩成と"と金"を作って金に当てます。

左辺への脱出

加藤女流四段は△2八成香と詰めろを掛けますが、里見女流王座が▲9八飛と玉の退路を作ると、△3二金と取られそうな金を上がって守りを固めます。里見女流王座は▲5八玉と早逃げし、加藤女流四段に△3九竜と歩を取らせてから、▲3三歩と金頭を叩きます。加藤女流四段は桂で取りますが、里見女流王座は更に歩の連打で後手陣を乱し、▲1四歩と垂らして攻撃の拠点を作ります。先手玉が左辺への脱出に成功し、形勢は大きく里見女流王座に傾いたようです。

手堅い受け

加藤女流四段が△8八歩と飛車の横利きを止めて食い下がると、里見女流王座は手堅く同飛と応じます。加藤女流四段は△3八成香と寄って金に当て、里見女流王座が▲6七玉と早逃げすると、成香で金を取ってから△1二歩と自陣に手を戻します。里見女流王座は金取りに▲4一銀と打ち、加藤女流四段が金を引いてかわすと、▲5三角と打って金に当てます。

2枚角の寄せ

加藤女流四段は更に金を寄ってかわし、里見女流王座がもう1枚の角を▲4三角と打つと、△3二歩と打って凌ぎます。里見女流王座が▲4二"と"と数を足すと、1分将棋となった加藤女流四段は△4四金打と角取りに打って下駄を預けます。後手玉には即詰みが生じたようで、里見女流王座が▲3二"と"から連続王手で迫ると、加藤女流四段は▲1三金を見て投了を告げました。

まとめ

本局は加藤女流四段が研究手順なのか序盤をノータイムで飛ばし、里見女流王座は角の捌きを狙って局面を落ち着かせます。いったんは自重した加藤女流四段が端から攻め掛かり、わずかに優勢になったと思われましたが、里見女流王座は受けに徹して決め手を与えず、後手の包囲網を突破して逆転模様となりました。里見女流王座は反撃に転じ、粘る加藤女流四段を堅実に数の攻めで寄せ切りました。
先勝した里見女流王座は「次局は先後が決まっているので、一生懸命頑張ります」、惜しくも寄せ切れなかった加藤女流四段は「先後が決まっていますので、 準備したいと思います」と話しました。次局以降も前期と同様、熱戦が続くことを期待したいと思います。

リコー杯女流王座戦は、株式会社リコーと日本将棋連盟が主催しています。棋譜等は下記サイトをご覧ください。


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