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「観る将」が観た第50期女流名人リーグ優勝決定戦

岡田美術館杯女流名人戦は、前期女流名人リーグの上位6名と予選のトーナメントを勝ち上がった4名が総当たりのリーグを戦い、優勝者が西山朋佳女流名人に挑戦となります。今期の女流名人リーグは、里見香奈女流四冠と内山あや女流初段が7勝2敗で並び、11月29日に優勝決定戦が行われました。

里見女流四冠はここで紹介するまでもない女流棋界の第一人者で、今年度は女流王位、清麗、倉敷藤花を防衛し、現在女流王座の防衛戦が進行中です。先日は白玲を西山女流四冠に奪還されており、年度末に行われる女流名人戦での五冠復帰を目指しています。

内山女流初段は2020年プロ入りの19歳で、今期の女流名人リーグ入りにより女流初段に昇段しています。第2回女流ABEMAトーナメントで渡部愛リーダーからの指名を受けて参戦しているので、ご存じの方も多いかもしれません。


里見女流四冠は向かい飛車

振り駒で後手となった里見女流四冠が向かい飛車に振り美濃囲いに構えると、内山女流初段は天守閣美濃から更に▲9八玉と引いて銀冠に囲います。里見女流四冠が高美濃を組み上げて飛車を5筋に回すと、内山女流初段も飛車を5筋に回して対抗します。里見女流四冠が6筋の歩を交換すると、内山女流初段は5筋と4筋の歩を突き捨ててから▲5六金と力強く仕掛けます。

里見女流四冠が角切りの強襲

里見女流四冠は8筋の歩をぶつけてから△4二角と引き、内山女流初段が銀取りに▲5五歩と打つと、△4六歩と伸ばして銀に当て返します。内山女流初段が銀で歩を取ると、里見女流四冠は8筋の歩も取り込んで銀に当てます。内山女流初段がこの歩も銀で取ると、里見女流四冠は△8五歩と打って銀を9筋に引かせ、△9七同角成と銀を食いちぎります。内山女流初段は玉で馬を取るしかありませんが、里見女流四冠は飛金両取りに△6九銀と打ち込み、優勢の局面を築きます。

内山女流初段は馬を引き付けて抵抗

内山女流初段は▲5四歩と銀を取り、里見女流四冠が△5八銀不成と飛車を取ると、▲6五歩と角道を通して攻め合います。里見女流四冠は△6九飛と打ち込み、内山女流初段が▲1一角成と香を取って馬を作ると、△8九飛成と桂を取って竜を作り金に当てます。内山女流初段が▲8四香と王手してから▲8八馬と引き付けて竜に当てると、里見女流四冠は竜を6筋にかわします。

竜切りからの即詰み

里見女流四冠は9筋を端攻めして△9六歩と垂らし、△4七銀不成と金に当てると、内山女流初段は▲5五金とぶつけて金交換します。里見女流四冠は△5九竜と寄って銀に当てますが、内山女流初段は銀を見捨てて▲6七金と寄って辛抱します。里見女流四冠が竜で銀を取り、△6六歩と金頭を叩くと、内山女流初段は馬で取って竜にぶつけます。里見女流四冠は竜と馬の交換に応じ、△8七銀のタダ捨てから即詰みに討ち取りました。

まとめ

本局は内山女流初段が端玉の陣形を敷き中央から仕掛けましたが、里見女流四冠は機敏に反発して角切りの強襲から先手陣を切り崩しました。内山女流初段は馬を自陣に引き付けて粘りましたが、里見女流四冠は先手の玉頭から攻め掛かり、一気に寄せ切る快勝となりました。
第36期から12連覇してクイーン名人の称号を持つ里見女流四冠は、女流名人戦について「最初に獲得したのが高校生の時でしたので、それからたくさんタイトル戦を戦わせていただいて、凄く成長させてもらった棋戦だと思っています」と話しました。西山朋佳女流名人との五番勝負については、「年も変わって気持ちも新たになりますし、しっかり対策を立てて挑めたらと思います」と話しており、今年度4期戦目となる両者の対決を楽しみにしたいと思います。
旋風を巻き起こし、惜しくもタイトル初挑戦を逃した内山女流初段は、来期に向け「今年よりは難しい戦いになると思いますけど、すぐに挑戦というよりも一歩一歩実力を付けて残留を目指す感じになると思います」と謙虚に話しました。今期の活躍を自信にして、更に大きく飛躍することを期待したいと思います。

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