最近話題の新ランキングと、過去のスマブラSP JPRとを比較し、考えたこと

最近、EMageさんという方によってコロナ禍以降の大会を集計対象とした日本のスマブラプレイヤーランキングが公開されました。

前任者のHarukiさんがJPR制作からは身を引くことを公言していること、こういったプレイヤーランキングは多くの人の注目を集めることから、新しくランキングを制作する人が現れることは良いことだと思います。集計お疲れ様でした。

EMageさんも上記ツイートで言及している通り、まだ感覚的に妥当だと感じるようなランキングにするために計算式や集計対象大会等、修正をしていきたいとありますので、この点からも「新しいJPRが発表された!」というよりかは「コロナ禍以降の新しい常識に合わせ、妥当性のあるランキングを作るために広く議論するためのたたき台を作っていただいた」と受け取る方が正しいと個人的には思っています。

いずれにしてもとても貴重な資料であることに間違いないので、長年プレイヤーとしてランキングを気にしながら大会に出ている立場から、また、個人的にランキング設計に興味があり、Harukiさんとも何度かお話させてもらった立場から、スマブラSPにおける過去(2019年)のJPRにおいて表現されている思想や意味合いと、今回新たに公開されたランキングのそれを比較し、どこが異なっているのかについて僕が気付く範囲でまとめていきたいと思います。

前提として、2019年に公開されたスマブラSP JPRの計算方法

僕がああだこうだと主観を述べるより、ランキング制作者本人がおよそ全ての情報を出していますので、こちらを見ていただければと思います。

大枠でどういったことを言っているかについて、自分の理解の範囲でまとめると

■全ての大会に共通で、各順位ごとのポイント比率が決まっている
■参加者数と、参加者の質によって各大会の価値(Tournament Tier Point, TTP)を数値化
■各大会の価値(TTP)によって、その大会の優勝者が獲得できるポイントが決定する
■各優勝者の獲得ポイントが決定すると、1つ目の各順位ごとのポイント比率から、全ての順位のプレイヤーが獲得できるポイントが決定する
→ここで、集計対象となる全ての大会における全てのプレイヤーが獲得できるポイントが確定

JPRの決め方
■プレイヤーAが獲得した各大会のポイントを高い順に上から並べ、上位4つの合計値が、AのJPRにおけるランキングポイントになる
■全てのプレイヤーのランキングポイントを集計し、それらを上から並べたものがJPRの順位になる

新しく公開されたランキングの計算方法

■集計対象の大会は、マエスマや篝火を中心に計7つ
■各順位における獲得ポイントは、上の7つの大会全て一定
(1位が1024p、2位が921p、3位が819p...で、TOP128未満は0P)
■大会における価値を定義する上で、"実質人数"という要素を定義しており、これは(実際の参加人数)×1または2によって決まっている
(コロナ禍で参加人数を絞らざるを得なかったが、レベルが高い大会には2をかけているという解釈で良さそう)
■大会における価値を定義する上で、"日数e"という要素を定義しており、数式は省略するが、「直近の大会ほど高い数値になる」ものと解釈して良さそう
■各大会の各順位における獲得ポイント = (各順位における獲得ポイント)×(実質人数)×(日数e)

新ランキングの決め方
■プレイヤーAのランキングポイント=(各大会で獲得したポイントの合計)/(参加大会数)×(信頼度ボーナス)
(信頼度ボーナスについて、数式は省略するが参加大会数が多ければ多いほどデータの信頼性が高いとし、高い数値になる)
■全てのプレイヤーのランキングポイントを集計し、それらを上から並べたものがJPRの順位になる

旧JPR(2019)と、新ランキングの相違点

ざっくりというと、自分は下記のような理解をしています。また、それぞれに対する僕の考えも合わせて書きます。(旧ランキングっていうのは上でずっと言っている2019のJPRです)

①新ランキングは、旧ランキングと異なり、「直近の大会の結果」を重視している
→これはランキング制作者の思想の問題だと思っています。個人的には直近の大会の結果を重視しない方が良いと考えています。

②新ランキングは、旧ランキングと異なり、各大会の参加プレイヤーの数を捉えているがプレイヤーの質を捉えてはいない
→これはプレイヤーの質を捉えるための指標がコロナ禍ということで作りづらいことに起因していると思います。そのため、各大会ブランドによってポイントを振り分ける、とかが妥協案になるかと思います。例えば、篝火は×1倍、西武撃は×0.7倍、マエスマは×0.8倍とか(めttttっちゃ適当です)

③新ランキングと旧ランキングは、そもそも各大会の順位に紐づく獲得ポイント倍率が異なる
→旧ランキングは、1つ順位が下がるごとに大体×0.75されていくという計算ですが、新ランキングは1位~7位くらいまでは1つ順位が落ちるごとに大体×0.83-0.90倍されていくようになっています
→旧ランキングと比較し、TOP8くらいまでは高く評価され、TOP8-TOP32くらいまでは同等の減衰比率、TOP32未満は大きく減衰される計算式になっていそうです

④新ランキングは旧ランキングと異なり、結果の安定感が高く評価される
→旧ランキングは、上位4ポイント以外は集計されないことから、予選落ちを何回しても優勝を4回すれば高く評価されるというものでした。新ランキングはそれに対し、全てを集計対象としてその平均を取っており、安定感が高い人の方が上に行きやすいです

少しだけ、この新ランキングで感覚的に違和感があるところを指摘させてください。この計算式に基づくと、集計対象の7大会において最も価値の高い大会は「西武撃8」になります。

これは、直近篝火4の1.15倍で、篝火1の2.26倍高い評価になっています(間違ってたらすみません)。感覚的には違和感があると僕は思いました。

最後に、今回の主要論点と僕の考え

①直近の大会を重視すべきか

これは昔から議論が分かれるところです。我々が知りたいのは"今"強い人であり、昨日行われた大会の優勝者の方が1年前に優勝した人よりも強いだろうというのは反論として考えられます。

しかし、僕は同等に扱われて良いと個人的に思っています。というのも、拮抗した実力者同士が競った大会の結果はいわば「水物」だと思っていて、運悪く直近の大会でつまずいたプレイヤーが過小評価されるのは実力を反映していないように思います。

また、別の視点としては直近の大会を重視する場合、いつを集計日にするかによってランキングの様相が全く変わってきてしまいます。「5月に集計されていれば15位だったのに、12月に集計された結果28位だった...」みたいな現象は発生し得るんですが、これは感覚的にどうでしょうか 1年間を集計対象とし、日数は考慮しないとすれば、いつ集計しても"年間のプレイヤーランキング"は変わりません。この方が受け取る側としてもしっくりくる気がしています。

②各大会における参加プレイヤーの質をどのように捉えるべきか

JPRにおいてはプレイヤーの質を"前期JPRにおけるランカー数"としていたと思いますが、これを今の時代に適応するのはコロナ禍により期間が空いていたこともあり、難しいと思います。

上で書いたんですが、「なんとなくみんなが思うこの大会はこのくらいレベルが高い」みたいな感覚を大会ブランドごとの倍率に落とし込んで計算式に組み込む、が現実案なのかな?と個人的に思います。

ランキングの歴史を思い返すと分かるんですが、大会の価値を参加者数のみによって定義するとどうしても感覚とずれるところが多いと個人的には思ってるので、この"質"の部分をいかに定義するかが重要だと思います。

③結果の安定感を重視すべきか

これはランキング制作者の思想によるところですが、「実力を正しく反映させることを目的とする場合」は結果が良かった大会も悪かった大会も全てを集計対象とする方が正しくなりそうです。

一方、「ランキングを通して業界を盛り上げることを目的とする場合」は必ずしも全ての大会をランキングに反映させない方が良い可能性もあります。運良く2大会連続で良い結果を取ったけど、次の大会で良い結果を取る自信がない場合、そのプレイヤーにとっての最適行動が「もう大会に出ない」となる可能性もあるためです
(もっとも、その人にとって大会に出るモチベーションがランキングを上げることである場合そうであるだけですが)

なので、ここは思想によるところがあると思っていますが、個人的には新ランキングの考え方に賛同しています。世界ランキングのPGRもこれに近い考えです。

以上です、EMageさんのランキング公開によって、ランキングオタク達の議論が活発になると良いと思っています!ありがとうございました!
(間違っているところあったら加筆する予定です)

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