『越後奥三面』 劇場公開を観て

ポレポレ東中野で公開中の『越後奥三面』(姫田忠義監督・民族文化映像研究所作品)、ようやく観に行けた。
 (少し体調を崩していたので、なかなか行けなかった。)
何十回と暗記するほど見ているが、デジタルリマスターの鮮やかな色と音で、新鮮な見え方がした。
「20世紀最高の日本映画だ!」と改めて思った。
 
 僕がこの作品に出会ったのは20歳のとき。友人から「新宿御苑の近くで毎週金曜日に面白い映画をやっている」と誘われ、民映研に通い始めたのだった。学生時代に、民族文化映像研究所(通称・民映研)の作品、およそ50本ぐらい観ただろうか。
 毎週の上映会(観客は平均7人ぐらいの小さな上映会だった)が終わると、スタッフの誰かが登場してくれて、お茶を飲みながらおしゃべりをする。自信のない僕は、発言しないですむよう、隅っこに座りながら、映画の背後にある事実や思想をめぐっての、おしゃべりを聴くのが楽しみだった。なんと贅沢な時間だったのだろう!

 やがて大学を卒業し、NHKに入り、「いつかは『越後奥三面』のようなトータルに村の暮らしを捉える映像を作りたい」と思ったが、そんなこと出来るメドも立たず、NHKは辞め、辞表を出したその足で、民映研に「弟子にしてください」と足を向けた。

 民映研時代は、いちばん下っ端だったので、メインの撮影現場にはあまり行けず、どちらかと言えば、小さな仕事をたくさんさせてもらった。テレビの世界とはまったく違う映像作法と思想に心を研ぎ澄まされた。僕が今も映像の仕事を続けていられるのは、この原点があるからだ。
 
 何がその映像製作の原点なのか、いずれ書きたいと思うが、『越後奥三面』―――観ることのできる貴重なチャンスなので、ぜひ観なさんにお勧めする。
 とても好評で、上映してくれる劇場が少しずつ増えているようで、嬉しい。

■東京・ポレポレ東中野は5月17日まで。
■大阪・第七藝術劇場 6月1日~

その他、以下が決まっている。
■福島・フォーラム福島
■神奈川・川崎市アートセンター
■大分・ゆふいんドキュメンタリー映画祭

https://minneiken.wixsite.com/okumiomote


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