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「小泉純一郎は変人」ではなかった。

小泉純一郎・元総理とフリージャーナリスト常井健一氏の共著『決断のとき――トモダチ作戦と涙の基金』を読んだ。「政治家・小泉純一郎」を嫌いな人にこそ、オススメしたい本だと思った。

本の帯に「けっこう、余計なことを話したね」と、小泉氏の言葉が書いてある。小泉さん、この本ではホントにけっこう話しちゃった感じ。政局裏話のくだりでは、特定の政治家を皮肉っていて笑えるところもあるし、「なるほどそうだったのか」といまさらながら納得できることもある。俳優と「未来の総理」となった「2人の息子の育て方」も書かれている。やっぱり、小泉さん、しゃべりすぎました(笑)。

(読んだあとに写真を撮ったので、折り目がたくさん……。汚くてすみません)

800円では安すぎる「特ダネの連続」

本は、1章から4章まで小泉氏の語り下ろしがあり、それを包むように、序章と終章を常井氏が書き下ろしている。1章から4章まではもちろんだが、とくに序章と終章は、小泉氏の話をもとに丁寧な取材で磨き上げられた「重厚な情報」がふんだんに盛り込まれている。特ダネが連発されるているのに、これで800円とは…。安い。

常井氏と私の付き合いはかれこれ10年になる。以前から折に触れて文章を読ませてもらっていた。だから、この文も「ヨイショ原稿」なんでしょ? と思われるのだろうが、ガチで読書感想文を書いている。

そもそも文章表現は個性だから正解があるわけではないことが前提だが、常井氏の文章はときに文語調になり、私は「難解だな」と思うことがしばしばあった。だが今回は、手間ひまかけて掘り起こしたファクトを、丹念に平易な言葉で積み上げている。

少し肩の力が抜けたのか。それとも、レトリックを超え、圧倒的な取材力を根拠にした自信によるものなのか。とにかく筆致が変わった。

本を読んで反省したこと

政治家・小泉純一郎氏への評価は人によって「いろいろ」だろう。だが、この本を読むと、これまでの「小泉観」は変わると思う。それほど、これまで報じられ、私たちが認識してきた小泉氏の像は「本人に訊きもせずに実像とはかけ離れた『なにか』をつくりあげ」(終章から引用)られたものなのだと気づかされる。

そんなことを考えていたら気づいた。私自身も「嫌いだ」と思った政治家の発言を聞こうとしていないのではないか、と。

この本を読むと、小泉氏の多様性と寛容性を感じ取れる。言うまでもなく、私自身も多様な面があるのに、たったひとつの出来事で嫌われたとしまったとしたら……。

私たちは政治家をいとも簡単にレッテル貼りし、政治家の言葉を聞こうとしていないのではないかと、反省した。

現代人に対する警鐘に耳を傾けたい

いま原発ゼロを訴える小泉氏は本の中で、近い将来のことも語っている。この「元総理の声」が意図することはなんだろう。ポジショントークにあふれ、現実を直視することを疎かにしがちな現代人に対する警鐘のように思えた。

(この文章は2月27日にFacebookに投稿したものを改稿したものです)


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shoichiro kawano

新聞社で社会部記者や週刊誌の編集をしていました。中退して現在はフリーランスです。独自取材したオリジナルなものを、できるだけ多く書いていきたいと思っています。ダジャレもたまに書きます。Twitterは@shoichirok
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