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【書評】あなた好みの御朱印を見つけて、神社参拝の旅に出よう 評者:河原レイカ

神様と縁結び 東京&関東 開運神社の御朱印ブック 久能木紀子著

 駅の構内で、記帳台の前に親子が行列を作っていました。「何だろう?」と覗いてみると、列に並んでいる子どもたちの手には帳面が握られています。親子で電車に乗り、所定の駅で降りて、キャラクターのスタンプを集めていくスタンプラリーでした。
 スタンプラリーの由来が気になり、インターネットで検索してみたところ、スタンプラリーの原点は「御朱印集め」だという情報がヒットしました。
 御朱印とは、神社を参拝した証としていただくことができるもの。神社を巡り、帳面に御朱印を集めていく「御朱印集め」は、老若男女問わず、親しまれているものです。「御朱印集め」に馴染みがあるからこそ、駅や飲食店などで実施されるスタンプラリーも普及し、現在では、子どもたちに人気のイベントになっているのかもしれません。
 ただし、御朱印は、スタンプラリーで収集する記念のスタンプとは異なります。「神様と縁結び 東京&関東 開運神社の御朱印ブック」の著者・久能木紀子さんによると、「一筆ずつ心を込めて書いていただいた御朱印は、いわば神様の分霊」とのこと。御朱印は、礼拝の対象として扱うべきものだそうです。

 本書では、15世紀以前に建てられた由緒ある神社67社の御朱印を紹介しています。まず、「仕事運・勝運・学業成就」「恋愛・縁結び」「厄除け・健康」「金運・商売繁盛」の御利益別に、神社の歴史や祀られている神様の紹介とあわせて御朱印を掲載。また、関東の観光スポットの一つ、江の島・鎌倉の古社に注目し、御朱印拝受の1日旅を提案しています。
 少し足を伸ばしてみたいという方には、険しい山や荒波が押し寄せる岬に建てられている古社を紹介している頁がお勧めです。街中にある神社と比べると、決して交通の便が良い場所にあるとはいえませんが、日常生活から離れることができ、気持ちがリセットできそうです。険しい道のりを経て参拝するからこそ、これらの古社でいただく御朱印には、よりいっそうありがたみを感じるでしょう。

 本書では、御朱印の見方、神社の参拝の仕方や御朱印のいただき方などのマナーも説明されています。また、神社と神様に関する基礎知識も盛り込まれています。御朱印を主役にした神社のガイドブックですが、神社参拝のマナー本であり、神社や神様の基礎知識を習得できる教養本でもあります。

御朱印一つひとつの魅力を発見

 本書で紹介されている御朱印一つひとつをじっくり見てみると、それぞれの個性が見えてきます。
 手書きで書かれた墨の文字(墨書)は、神社それぞれ筆致が異なります。例えば、新田神社(東京都大田区)の御朱印の墨書は太く、力強い文字です。この神社は、南北朝時代に謀殺された武将の新田義興の霊を鎮めるために建立された新田大明神を祀ったことが起こりだそうですが、こうした由来を知ったうえで御朱印を眺めると、文字が力強い理由が分かる気がします。

 前鳥神社(神奈川県平塚市)の御朱印の墨書は比較的細めの文字で、筆の流れを感じさせます。この神社は、論語などの漢籍を日本で初めて学んだといわれている菟道稚郎子命(うぢのわきいらつこのみこと)を祀っています。学問の神様を祀った神社の御朱印は、墨書に知性や気品が漂っているように感じます。
 押し印に注目してみると、神社印や社務所印だけを押したシンプルな御朱印から、神社のシンボルマーク「社紋」の印、神社のキャラクターの印など複数の印を押した御朱印があります。
 神田明神(東京都千代田区)の御朱印にはマスコットの「みこしー」の印が押してあります。招き猫発祥の地といわれる今戸神社(東京都台東区)は招き猫の印が押されており、猫好きにはたまらない御朱印です。
 期間限定の御朱印もあります。櫻木神社(千葉県野田市)では、3月の「さくらの日まいり」限定の御朱印があり、鎮守氷川神社(埼玉県川口市)は春夏秋冬で御朱印の色が変わるそうです。

 本書に掲載されている計82の御朱印を眺めていたら、大勢のメンバーが所属するアイドルグループが思い浮かびました。アイドルグループの中で自分が応援しているメンバーを選んで「推しメン」と言いますが、本書に掲載されている御朱印の中から、自分好みの「推し御朱印」を選ぶのも楽しそうです。気になる御朱印を見つけたら、本書と御朱印帳を鞄に入れて、神社参拝の旅に出かけましょう。

神様と縁結び 東京&関東 開運神社の御朱印ブック
神社ライター 久能木紀子(著)
ブルーガイド編集部(編)
評者:河原レイカ【会員番号223】
医療業界紙記者/パラスポーツジャーナリスト。医療系専門出版社で10年以上のキャリアを持つ。医療機関や製薬企業、薬や治療などの話題について取材・執筆している。また、2004年のアテネパラリンピック観戦をきっかけに、障害者スポーツ(パラスポーツ)に魅了され、パラスポーツの取材を開始。パラスポーツ情報サイト「パラスポ!」http://paraspo.info/ を運営している。


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