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2018年6月9日開催/第23回「大賞授賞式」レポート…報告:羽田野友美子

 編集者、ライター、カメラマン、イラストレーターをはじめ、出版、マスコミにかかわるコーディネイター、クリエイターなどの親睦会「ライターズネットワーク」では、前年度に活躍した会員を表彰し、その功績を仲間たちで称える会を毎年行っています。去る6月9日(土)、会員総会に引き続き、大賞授賞式が開催されました。

 全国から集まった仲間を前に、当会代表の凜福子さん【会員番号151】、藤原ゆきえさん【会員番号11】をはじめとする選考委員らから各賞の発表があり、授賞理由が紹介されました。司会は当会副代表の則竹知子さん【会員番号219】です。

●大賞の発表

 第23回となる「大賞」受賞者は、棚沢永子さん【会員番号481】。著作『東京の森のカフェ』(書肆侃々房)の企画・文・写真に対して贈られました。この日の会場となった東京・駒場公園にある日本近代文学館内の喫茶室「BUNDAN COFFEE&BEER」も、同書で紹介されています。

 同書の版元でもある福岡の書肆侃々房(しょしかんかんぼう)の田島安江さん【会員番号142】によると、書店から100冊単位で注文が入ることも珍しくなく、現在6刷で2万部を超え、同社では近年最大のヒット作になっているとのことです。

●特別賞は3組が受賞

 特別賞は、「社会に働きかけたで賞」「次々によく出したで賞」「地方を盛り上げたで賞」の3組でした。

 「社会に働きかけたで賞」受賞者は、「おっぱいシスターズ」としても活動してこられたお三方。授乳服の企画・開発・販売を手がける光畑由佳さん【会員番号420】、母乳育児の啓蒙に尽力してきた竹中恭子さん【会員番号4】、3児の母として母乳育児について執筆してきた ちかぞうさん【会員番号405】です。
 光畑さん、竹中さん、ちかぞうさんは、昨秋開催された「全日本おっぱいサミット」を企画した実行委員会のメンバーでもあり、このイベントを通じて「公共の場での授乳問題」についてオープンな議論のきっかけを作るなど、継続性のある活動に対して同賞が贈られました。授賞式には、「全日本おっぱいサミット」の司会進行役を務められたフリーライター&編集者の今 一生さんも、お祝いに駆けつけてくださいました。

 イラストエッセイストの松鳥むうさん【会員番号444】は、8ヵ月の間に『日本てくてく ゲストハウスめぐり』(ダイヤモンド・ビッグ社)、『あちこち 島ごはん』(芳文社)、『おばあちゃんとわたし』(方丈社)の3冊を出版するという旺盛な出版活動が評価され、「次々によく出したで賞」が贈られました。
松鳥さんからは、早くも次の作品が7月に出版予定との報告があり、会場からは感嘆の声が上がりました。

 金沢でフードコーディネーター、フードライターとして活躍する つぐまたかこさん【会員番号113】は、農家・レストラン・消費者・行政などの橋渡しを行い、地域の食の推進とブランド化に貢献するなど、ライターの範ちゅうを超えた活動が評価され、「地方を盛り上げたで賞」が贈られました。

 各賞の受賞者には、名前が刻印されたトロフィーが授与されます。プレゼンターは、昨年の大賞受賞者の一人、水崎真智子さん【会員番号309】。神戸からの参会です。

●対談で迫る「地方を盛り上げたで賞」受賞者の活動

 続いて行われた受賞者のスピーチののち、対談が行われました。つぐまたかこさんの活動の中身を、食環境ジャーナリストとして活躍する当会相談役の金丸弘美さん【会員番号0】が対談で掘り下げていきます。

 20年前、結婚を機に金沢で暮らし始めた つぐまさんが、どのようにしてフードライターになり、さらにはレストランのメニュー開発、食のイベント企画、講師、地元テレビ番組のコメンテーターなどへ活躍の場を広げていったのか、生産者と消費者をつなぐ方法とは? メニュー開発秘話、主婦を中心とした消費者のココロのつかみ方などなど…。短い時間ながら、過不足なく聴衆の期待を満足させてしまうお二人の掛け合いはさすが。こんな風に、テンポよくインタビューできるようになりたいものだと思いながら聞き入ってしまいました。
 つぐまさんは、節目の年の受賞に感慨もひとしおの様子でした。改めまして、受賞者の皆さん、おめでとうございました!

●選考委員会からの総評で裏話が続出

 最後は、選考委員の一人で当会副代表の藤岡比左志さん【会員番号18】による総評です。本づくりやイベントプロデュースの裏話なども紹介され、皆さん興味深く耳を傾けていました。

 もともと編集や営業を担当していた棚沢さんは、『東京の森のカフェ』の企画を出版社に提案したところ、自分で取材・執筆することになったのだとか。急遽、一眼レフカメラを購入し、都内の緑に囲まれたカフェを3年がかりで取材して回ったとのお話に、会場からは、「プロのカメラマンが撮影した写真だと思っていた」「カフェのオーナーの物語が、一つひとつ丁寧に綴られていてよかった」といった声が聞かれました。
 これに対して、「素敵なカフェがたくさんあって、最終的に掲載する36軒に絞り込むのが難しかった」と語った棚沢さん。松鳥さんも同感で、「紹介したいゲストハウスがたくさんありすぎて、できれば絞りたくなかった」と苦心された様子でした。
 「松鳥さんの著書は、ゲストハウス、離島の食文化、祖母との個人的な思い出…とテーマが異なっていても、その根底に流れるものが共通している。出会った“人”や“もの”の魅力が松鳥さんの視点で描かれており、どの作品もほっこりしたイラストと文章で読者を和ませてくれる」との藤岡さんの言葉には、参加者一同、大きく頷いていました。

 ところで、当会の集まりでは、昔から「おっぱい」というワードが頻繁に飛び交っています(笑)。光畑さん、竹中さん、ちかぞうさんをはじめとした会員の子育てに関する分野での活躍によるものなのですが、一般に「おっぱい」と聞くと性的なテーマを連想する人が少なくないようです。
 実は、昨秋の「全日本おっぱいサミット」における広報活動では、そういった性的な期待や関心を持った層まで巻き込んでいこうという狙いがあったのだとか。ネット上で、子どものいる人もいない人も、エロ目線の人も、医学や芸術の観点からの「おっぱい」もぜ~んぶひっくるめて、みんなで公共の場での授乳を考えようと盛り上げた結果、「全日本おっぱいサミット」は外務省の国際女性会議の公認イベントとして登録され、当日は150名もの人が集まったというのですから、「おっぱいシスターズ」のパワーに脱帽です。
 蛇足ながら、検索エンジンで「おっぱいシスターズ」を検索すると、同名の地下アイドルより上位表示されるようになったというエピソードには、会場がどっと沸きました。

 大賞授賞式は、年に一度、全国の会員が一堂に会して親睦を深め、互いの活躍に刺激を受ける場となっています。また一年、それぞれの持ち場でお仕事にいそしんで、来年、元気な笑顔でお会いしましょう。

文:羽田野友美子【会員番号137】ライター、大阪府在住。製薬メーカー勤務後、編集プロダクションを経て、1998年、個人事務所「アイ・クリエイション」を設立しフリーランスに。現在、健康・医療・観光情報等のコピーワークを中心に活動中。また、奈良を愛し、文化の継承、地域の魅力再発見・活性化にも取り組んでいる。
写真:吉永陽一【会員番号 459】1977年生まれ、東京都出身。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型会社を経て空撮会社へフリーランスカメラマンとして登録。約8年前から空撮で捉える鉄道写真に取り組む。空撮以外では鉄道・旅などの紀行取材のほか、レセプションや集合撮影なども行い、陸空で精力的に活動している。公式サイト:「空鉄と廃墟と線路」ブログ:「320x240」


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