見出し画像

炊き込みご飯に救われる

仕事や寝不足で疲れてる上に、家の近くのスーパーは、普段仕事用の食材を買う下町の市場に比べて、ぐっと値段が高くて、夕飯の準備どころか、買い物する気持ちさえ消えてしまう。もう今日は、買っておいた瓶詰めのソースのパスタでいいか。そんな気分の日。
冷蔵庫に春キャベツはあった。スープを取るために茹でた鶏肉とスープの残りもある…と、頭の中で段取りしながら家路を急ぐ。

職場と、週一回担当しているカフェと、自宅。都合3箇所のキッチンを行ったり来たりしているので、どこに何の食材が残ってたか、混乱してしまうことが多く、帰宅して冷蔵庫を空けてからその存在を思い出す食材も少なくない。今日もそんな調子だったのだが、幸運なことに、食べたいものと、料理に割けるリソース(気力体力)と、残り食材がうまく手を結んでくれた。
パスタはやめて、炊き込みご飯にする。炊飯器に放り込むだけで完成する、素晴らしい食べ物。

昔から、炊き込みご飯が大好きだった。子ども時代の誕生日には、かなりの頻度で炊き込みご飯をリクエストしたし、中学の修学旅行の途中、学年全員で食べたかやくご飯の美味しさも、未だに忘れられない(お年頃で、人目が気になりお替わりを言い出せなかった恨み)。
家族での外食の時に、例えばうどん屋さんで「かやくご飯つき」という定食を見つけると、必ずそれをオーダーした。が、当時、どうしたことか、結構な確率で、これが売り切れだった。全身が炊き込みご飯への期待で溢れてしまっている幼い私は、売り切れと聞くと、ショックで泣き出してしまう。ある程度の年齢になれば、泣いても仕方ない、お店の人が困るだけだ、とわかっているのに、今日こそは売り切れでも泣かないぞ、と決心しているのに、お店の人の口から「売り切れ」の言葉が出ると、やっぱり涙が出てしまう。
自分でも呆れるが、それくらい、炊き込みご飯が好きだったし、今も好きなのだ。(今は流石に売り切れでは泣かないが、売り切れていないとほっとする程度にはトラウマになっている。)

今日見つけた食材は、
・キャベツ
・鶏スープ
・醤油味の茹でピーナッツ(おつまみ用)/冷凍してあった
・人参
・フェンネルの根っこ(いい匂いがするから、使えるかしらと取っておいたもの)
・フライドオニオン
・台湾風煮玉子の煮汁

上等。中華おこわ(台湾だと油飯)風にすることに決める。普通のお米を2合、糯米は1合。糯米は大好きだけど、すぐお腹が膨れてたくさん食べられないから、普通のお米を混ぜる。普段は1合しか炊かないご飯だが、味付きのご飯のときは、たくさん炊いてたくさん食べるのが、我が家の掟。

お米は、土井善晴さんの「洗米方式」が、なんとなく気に入って最近の定番になっている。研いだお米(我が家は無洗米派なので、洗うだけ)をざるにあげて、表面が乾くまでおいておき、炊く時はそのお米の体積と同量の水をいれる、というもの。お米の銘柄や炊き方には、さほどこだわりはないのだが、この炊き方は美味しいように思うし、手間でもないので、日常に組み込むことにしたのだ。

野菜類は小さく刻み、煮玉子の煮汁に鶏スープ、ごま油を足して、お米と同体積(…よりも、今日は少なめ。具材から水分がでるから。)にして、炊飯器にセットする。味をみると少し薄いようなので、塩を少し足しておく。
具材の大きさは好き好きだけど、私はすべてが一体となって口に入るのが好きなので、小さく刻むことが多い。

具が多すぎてえらいことになってるが、炊き上がったらカサは減るので、問題ない。

おかずは、茹で鶏の香り野菜和え。スープを取るために茹でた鶏胸肉を裂いて使う。メインのおかずにするなら、茹で具合を真剣に見極めるのだが、今回はカフェ営業用のスープが目的だったので、乱暴に茹でてしまった。そのまま食べてもパサパサなので、たっぷりの野菜と一緒にサラダ風に仕上げることにする。

ちなみに、鶏スープを取るなら、鶏ガラが定番だと思うが、それは本当にベストな方法なんだろうか?と疑問を持っている。家庭用コンロで日常生活の中で鶏スープを楽しみたい時、鶏ガラだとすごく時間がかかるし、第一、私の買い物する店だと、鶏ガラが案外に安くない。肉本体を茹でたほうが、短時間で確実に味がでる上、そのお肉も食べられるので、無駄がない。今回の鶏ムネ肉は、3枚で300円(安すぎる)、鶏ガラだと2羽分入ってるけど、200円。

サラダ風に使う野菜は、
・パクチー
・大葉
・三つ葉
・生姜
生姜は出来る限り細かく刻んで(ここは頑張る)、残りはざく切り。
鶏肉の上に、用意した野菜をどっさり乗せて、醤油的なもの(魚醤でも)と、酸っぱい柑橘っぽいもの(レモン、ライム、スイートチリソースなど)、必要なら甘み(砂糖)、お好みなら油(ごま油、ピーナッツ油など)をかけて、よく混ぜ合わせて完成。
今日は白ごまもふった。

作っていると少し元気が戻ってきたので、キノコも焼いて添えることにした。フライパンで縁がカリカリになるまでゆっくり焼くだけだ。
果たして、ご飯はやはり水分が多すぎたようで、理想よりも柔らかく炊き上がってしまったけれど、ふんわり中華の香りとピーナッツの食感が楽しい油飯風ができたし、パサつき気味の鶏胸肉は、フレッシュな香り野菜とライムの果汁に包まれて、あっという間にお腹に吸い込まれていった。

余裕と計画性を持って、きちんと作る料理も楽しいが、一番歓びを感じられるのは、こんな風に、限られたやる気(と体力と時間)と、いい加減な食材で、うまくまとめられた時だと思う。理想形目指して作ると、「うまくいかなかった部分」が多かれ少なかれ出て来るけど、やれる範囲で工夫すると「できた部分」しかない、からかな。
心もお腹も救われた、今日の食事。

読んでくださってありがとうございます。いただいたサポートはレシピ関係の書籍、食材購入等に使わせていただきます。 気に入ってくださいましたら、ぜひ。