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自分に合った包丁の話

有賀薫さんと山口祐加さんがキッチン用品について語るイベントが、東京で開催されました。参加はできませんでしたが、キッチン大好きな私としては気になるイベント。
参加された方のレポートも、楽しく拝見しています。

特に、五十嵐さんの気付き、“「いいものを選んだほうが良い道具」と「どうでもいい道具」の緩急をつける”というのは、ほんとそのとおりだなと思い、また、五十嵐さんのように、そういう視点を求めている人がいるんだなというのも、私にはちょっとした発見でした。

現実には、予算にも限りある中、緩急をつけざるを得ない、というところからのスタートだったりはするのですが、同じように出ていくお金であっても、過不足なく、自分にフィットした使い方だと、気持ちよくいられます。

触発されて、私も、自分の包丁について書いてみようと思います。
自宅以外のキッチンでも働いてきて、そして、この5月に、新しく料理教室を立ち上げました。そのため、一般の人よりは、少しだけ多くの家庭用包丁に触れてきたかなと思いますので、そのあたりをシェアしてみます。

包丁については、有賀さん、山口さんと同じく、きちんとしたものを手に入れたほうが良い派。手に近い、手に変わる動きをするものについては、初心者であっても、良いものを使ったほうが絶対にいいと思います。

驚きはないものの、すっかり手に馴染んだマイ包丁

結婚して初めて手に入れたマイ包丁(それまでは実家暮らしでした)が、これ。大阪・堺(刃物の名産地です)の銘が入ったもの。ステンレスの三徳包丁(刃渡り18センチ)です。


道具屋筋(東京でいうと合羽橋でしょうか)に店舗があり、たまに通りかかるそこしか知らなかった、という理由で選んだお店でしたが、いかにも初心者の、これから張り切って料理するよ!という若かりし私に、お店のおじさんが親切にアドバイスをくれたのを覚えています。
この段階では、他の包丁をほとんど知らないわけですが、違和感なく使い始めました。刃も厚すぎず薄すぎず、多少の固いものでも、安定して切ることができます。
ちなみに、このとき一緒に出刃包丁、そのあと少ししてから菜切包丁も買いましたが、和包丁は私には使いにくく、今でも、買うなら洋包丁と思っています。

買い比べるチャンスがやってきた

それから10年以上経ち、今回料理教室を立ち上げることになって、改めて包丁を選ぶことになりました。今回必要なのは複数本。せっかくなので、いろいろ比較しながら買ってみたいものです。ネットを検索したり、家や職場で使っている包丁を改めて観察したり…

そして、新しく購入したのがこちらの3本+1本です。
上から、鋼の牛刀(刃渡り21センチ)、ステンレスの牛刀(18センチ)、ステンレスの三徳包丁(17センチ)。

+1本というのは、一般的な家庭用の形ではないけれど、今回、とっても使いやすくてちょっとした発見だったもの。骨スキ包丁といいます。

(関係ないけど、包丁の銘が入るのって、左右決まってないんですねぇ)

気は使うけど、切れ味・使い勝手の牛刀

鋼の牛刀は、最初に購入したのと同じ、堺一文字のもの。お店の人には、手入れの簡単なステンレスを勧められましたが、以前の仕事場にあった鋼の包丁の切れ味が忘れがたく、「鋼だけど、配合の工夫でやや錆びにくい」というこれを選んでみました。18センチの三徳と比べるとやや長いのですが、お店の人によると、牛刀は刃幅が細くなる分、やや長いほうが使いやすいよ、ということでこちらに。
やはり切れ味は抜群で、それに、包丁差しから抜き差しする瞬間、時代劇の日本刀みたいな、シャキーン!という音がします。(音はどうでもいいんですが笑)
錆びやすいので気は使いますが、使っていて楽しい。
最初は偶然入ったお店でしたが、この店のものが私には合っていたのでしょう。包丁とはラッキーな出会いだったと言えるかもしれません。

有名ブランドだけど、残念な結果に

2番めのものは、ネットで購入したものですが、実は、私にはしっくりきませんでした。
刃幅が狭く、食材を最後まで切ろうとすると、かなり手首を落とさなくてはなりません。負担を感じますし、また、刃が薄いのか頼りなく、これまで固いと感じなかった食材まで固い…。(レンコンが固いと感じておられる方、包丁が理由かもしれませんよ!)
有名ブランドですが、合う合わないは、ブランドとは関係ないのでしょうね。
同じ牛刀の鋼と比べると、刃幅にはこれくらい差があります。

価格と切れ味のバランスに納得の三徳

3番目のは、一番手頃な価格のステンレス。正直、見た目の丸っこさ(典型的な三徳包丁の形ですが)が好きではないのですが、教室用に複数個買える価格のものを、と試しに購入してみました。価格の割にはよく切れると思います。(実際のところがわかるのは、何度か研ぎ直してからかな?)

リンクを張った五十嵐さんの記事にあった、握ったときの感覚でいうと、3番目のものが、これもまたあんまり好きではありません。が、軽くて小さめなので、そこはクリアできる感じです。他はあまり気になりません。
今持っている中では、持ち手よりも、刃幅と厚みのほうが、大きな要素となっているようです。

ちょっと特殊だけど、お気に入りの1本

最後に、+アルファの1本。
実は、別の仕事場で使わせてもらっていた、長年研いですっかり短くなった鋼の牛刀というのが、大変に気に入っていました。
もともと良い品なんだと思うのですが、刃渡りが15〜16センチになってしまっていて、かといってペティナイフではないので刃の厚みはしっかりあり、文字通り手の延長として使い回せるものだったのです。
同じようなサイズの牛刀を探してみたのですが、当たり前ですが、ありません。
新しい仕事場で、魚をさばく用の厚めの包丁(とはえ、出刃包丁を使うほどではない)も欲しかったので、探していたときに目に止まったのが、この骨スキ。もともとは肉の塊から骨を取り外すのに使うものなのですが、比較的厚くて刃渡りは短く(15センチ)、見た感じが、短くなった牛刀にそっくりでした。
思い切って購入してみたところ、もった瞬間から、これだ!と思えるフィット感。

短いので、刃先の感覚が手に伝わりやすく、魚を卸すのにも好都合です。
必須の道具とはいえませんが、こういうお気に入りが手元にあると、ちょっと楽しくなりますね。積極的に切ろうという気持ちになる。

包丁というのは、使ってみない限り違いがわかりにくいので、初心者の方は特に悩まれると思いますが、もしチャンスがあれば、仲の良い方のお家に行ったときに触らせてもらうのは良いかもしれませんね。

キッチン道具について、またちょこちょこ書いてみようと思います。



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