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食から考える生活/生活から考える食

新しいカテイカマガジンで、阿古真理さんが「一汁三菜」についての考察を書かれていました。

私も、自分の家のご飯なんて、その時々に合わせて、凝ってみたり手を抜いてみたり、適当にやればいいと思っていたので、土井善晴さんの『一汁一菜という提案』のヒットには驚いた記憶があります。
家事の基準というのは、自分の育った家庭のやり方がベースになり、他の家と比較する機会もまずありませんから、その認識は、人によってずいぶん違いがあるのでしょうね。

何はともあれ、専業主婦の存在を前提とした家事のあり方が難しくなってきたのは事実で、若い世代は「自分の母親とは違うやり方」を独自に探さなくてはいけなくなりました。特に食事については、健康、とか正しさ、あるいは伝統の継承、のようなイメージもあって、自分にしっくりくるやり方が見つからないと、より深刻に悩んでしまうのかもしれません。

今年、2018年のはじめに、按田優子さんの「たすかる料理」(リトルモア)という本が出版されました。主には、東京・代々木上原にある按田さんの経営される餃子店と、その食事にまつわるエピソードが紹介されているのですが、そのベースとなっている、按田さんの食、特に自炊に対する考え方が大変興味深いです。
一日三食、そのために時間をとって、ある程度の「型」にのっとった食事を準備をするのが一般的なやり方だとしたら、按田さんは、生活の流れを妨げない形で、少しずつ料理のパーツを仕込んでおき、その時々の予定やリズムに沿って臨機応変に仕上げて食べる。つまり、慣習的な食事の在り方を元に生活を回すのではなく、現実の自分の生活に、無理のない形で食を組み込んでいるのです。
一汁三菜というような「型」からは完全に自由で、自分自身には限りなくフィットした、生活食のスタイルです。そのために使う食材や調理器具も、按田さんに合うよう、定番化されています。

一人が家庭運営のための複数の役割を担うことが一般的になりつつある、いわば新しい時代です。一日三食や一汁三菜という「当たり前らしきもの」から一旦離れ、自分(たち)の生活や性格をもとに、よりしっくりくる食の在り方、家事の在り方を組み立ててみるのはいい試みだと思いました。少し考えてみるだけでも、前向きなヒントに繋がるかもしれません。
まずは、自分自身のペースを肯定的に把握するところから。今の時代の、今の自分の暮らしを創ることができたら一番ですね。

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