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自然素材のウールカーペットは本当に体に悪いのか?

令和3年3月24日 晴れ

建築だけじゃない、その先に。

私が代表を務めている株式会社四方継は昨年、年初の創業20周年を機に大きく事業内容を見直しました。それまですみれ建築工房と言う屋号で女性建築士による自社設計、社員大工による自社施工にこだわった工務店として活動を続けてきましたが、建築だけではなく様々な分野で地域が良くなるような貢献がしたいと、地域コミュニティーサービスの「つない堂」を立ち上げて地域でがんばっておられる事業者の方やその商品やサービスを紹介したり、安心して暮らしてもらえるためのメンテナンスサービスを拡充したり、イベント開催のお手伝いをしたり、事業所を開放してコワーキングスペースとして使ってもらう、オープンコミニケーションの会社へと生まれ変わりました。要するに建築会社の枠を超えて、暮らしを良くする会社を目指しています。

受け継がれる価値のあるものづくり

そんな事業刷新の取り組みに合わせて創業以来の本業である建築業のほうも、「つむぎ建築舎」と屋号を改めて、今までのやり方とあり方を改めて見直し、「受け継がれる価値のある丁寧なものづくり」をコンセプトに掲げ、安くて簡単で早くできる既製品を多用、乱用したものづくりから抜け出すことに決めました。昨年末に改装したショールームに新設した造作キッチンや、多可町のヒノキで作った天井板やフローリングなどに象徴される職人の手仕事にこだわった、オリジナルティーの高いデザイン、設計と施工を行うようになっています。以前から、内装材は自然素材を積極的に推し進めておりましたが、最近は外装のマテリアルも事務所のエントランスに貼ってある天竜焼杉や屋久島の杉、左官による仕上げなどの本物志向を強めています。

天然素材としてのカーペット。

そんな私たちの事業の根底に流れる価値観は「自分たちだけが良ければいいのじゃない」と言う四方良しです。そんな理念に基づいて、人の健康にも地球環境にも良い素材の研究を続けている中で、このたび大阪にある堀田カーペットさんにお邪魔して、天然素材であるウールを使ったカーペットについてレクチャーを受けてきました。住宅業界ではハウスシック問題が取りざたされるようになってから、この20年来、ほこりやダニが溜まりやすいと(いわば風評被害で)カーペットや畳は排他され続けてきました。現在、新築住宅にカーペットが採用される率は0.3%しかなくなっており、ほとんど採用されていないと言っても過言ではありません。私自身も、大工の出身と言うこともありこれまでカーペット敷きの住宅をフローリングに張り替える工事を数え切れないほど行ってきて、それがハウスシック対策に寄与する正義だと思っておりました。しかし、今回堀田会長と社長の話を聞いて目から鱗、もう一度認識を改めて勉強し直す必要性を強く感じた次第です。以下にそのレポートをまとめてみます。

カーペットの圧倒的な存在感と居心地の良さ

私も一応、設計事務所を主宰する管理建築士でもあり、長年大工としても住宅や店舗の設計・デザインに関わってきました。なので、行く先々でかっこいいと思えるインテリアデザインは細かな収まりを見て脳裏に焼つける癖がついていますし、設計実務を行わなくなって久しい今も常にアンテナを張っています。そんな視点から見ると、高級ホテルに行くといまだにエントランスから客室に至るまでウールカーペットが採用されていますし、またアパレルの世界ではハイブランドのショップでもオリジナルの雰囲気を醸し出す床材としてカーペットは大いに活躍しています。実はここ数年、住宅設計者の間でも密かにラグジュアリー感と圧倒的な居心地の良さを醸し出すカーペットが見直されており、フローリング一辺倒だった床の仕上げを見直す流れが出来つつあります。実は私の自宅でもダイニングテーブルの周りにはウールカーペットが敷き込んでおり、足元があったかいのとリビングに寝転べる場ができたのをとても快適に感じています。ついリビングで寝落ちするという難点はありますが・・、そんな自分自身の体験もあり、今一度、インテリア素材としてカーペットを見直さなければと以前から思っておりましたので、日本一と言われる堀田カーペットさんにこの度訪問できたのは非常にタイムリーでラッキーな機会でした。

柔らかい場所にいる安心感と幸福感

この度、堀田カーペット社に有名工務店経営者の面々と一緒に訪問して、会長と社長に様々なお話をお伺いするとともに、工場で糸の巻き上げからテキスタイルとして編み上げられて行く職人の経験と技がモノを言う生産の工程をご説明いただいて、その後、なんと社長と会長のお二人のご自宅で全面カーペット敷きの家での暮らしぶりまで見学させて頂きました。そこには20年経ってもへたっていない綺麗な状態のカーペットや、安心感溢れる階段、リビングや居室だけではなく、キッチンや洗面所までカーペットを敷き詰めても水染みや変色などの問題が全く無い、ウールカーペットの耐久性と防汚性能に優れた素晴らしさを体感、何より足の裏がやわらなか床に接している事の居心地の良さを堪能させて頂きました。今回の堀田カーペットさんへの訪問での私としての結論は、これまで掃除がしにくいとか、ほこりが出やすいとか、アレルギーの元になると言われ続けた、カーペットに対するネガティブな印象はすっかり払拭されて、天然素材であるウールをふんだんに使ったカーペットは強くお勧めしたい床材だと言う認識に変わりました。長時間にわたって丁寧な説明と、マニアックなカーペットに対するレクチャーをしてくださった堀田会長と社長には心から御礼を申し上げるとともに、熱を込めて語ってくれた「カーペットがある暮らし」の良さを私もスタッフやお客様に伝えていかなければならないと思った次第です。

かーペットに対する危惧

ここに詳しく書いてもきっと伝わらないと思いますので、詳細はリアルにお会いする機会にお伝えしたいと思いますが、重要なポイントだけいくつか記しておきたいと思います。そもそも、カーペットが使われなくなった大きな理由の一つにホコリやダニの死骸などのハウスダストが溜まりやすいと言うことがあります。確かに全くそんなことは無いとはなりませんが、マメに掃除機だけかけていたら、フローリングよりもホコリの吸着性が高いのでホコリは舞い上がらず、室内の空気は綺麗な状態を保てるのが実験で証明されています。また、汚れやすく掃除がしにくいと言うのも、ポリやナイロンの成分が高いものは別として天然ウールで適正に処理されたものは圧倒的に撥水効果が高く、水が染み込まないのを確認しました。また、コーヒーや醤油など染みになりやすい汚れも湯で叩けば殆ど取れるとのことで、意外にメンテナンスもしやすいようです。確かに衣服でもウールは汚れにくいですし、すぐに水が染み込むようでは羊が風邪を引いてしまうので当然、と言われていましたが、なるほどその通りです。あと、無駄毛(遊び毛)が出て埃っぽくなる点についても、それが汚れと一緒に掃除機に吸い込まれることによって自浄効果になっているので悪くはなく、普通に掃除だけすれば全く問題では無いとのこと。カーペットに対するネガティブな印象は思い込みだったと認識を改めました。

エエもんどっさり

堀田カーペット社を訪問して最も印象に残ったのは、工場に掲げてあったスローガン「エエもんどっさり グッドモラル」の言葉通りのモノづくりに対する熱い情熱でした。同社ではウィルトンと呼ばれる機械織りのカーペットに特化して生産を行なっておられ、主要メーカーでは主流になりつつあるタフテットと言われる布に毛を刺す、コストを抑える代わりに耐久性が低くなる技法を用いていないとのことで、安かろう、悪かろうのモノづくりと決別して手間暇がかかり、コストも高くなっても良いモノを世に送り出したいとの気概が伝わってきました。実際に工場での生産現場を見せてもらい、昔話の鶴の恩返しに出てくるはた織り機と同じ構造の巨大な機会を使って織り上げて行くアナログな現場は元大工の私としては非常に萌えてしまいました。
このウイルトンと呼ばれる織物のカーペットはタフト(基布に羊毛を刺して作る技法)に比べて構造的な破壊がなく、20年〜30年は問題なく使用に耐えるらしく、素人目では一見、同じように見えるものでも製造工程にこだわる事で長く愛用される商品が出来上がると言うのはどんな分野でも同じなのだと大いに納得させられました。

良いカーペットを選ぶ3つの条件

ちなみに、堀田社長にレクチャーを受けたカーペットを選ぶ際に留意する3つの条件とは、①モノづくりの方法、②素材、③密度です。①のモノづくりの方法とはタフケットなのか、ウイルトンと言う織物なのかで耐久性が大きく変わる、また価格も大きく変わると言う事です。②の素材についてはウールと耐久性を高めるために混合されるナイロンの他にもポリエステル、PP、アクリルなどがあり、それらはへたりやすかったり、防汚性や撥水性に乏しかったりと価格が低い分、内装材本来の機能としてのデメリットも大きいとのことでした。③の密度については見た目のラグジュアリー感に大きく影響するだけではなく、歩き心地、踏み心地が大きく変わり、カーペット本来の「柔らかな場」と言う人が癒される効果に大きな影響を与えるとのことでした。要するに、良いカーペットとは織りの技法で作られていて、適切に処理された天然ウール80%〜90%とナイロンの混合で、密度が高いものとなり、価格帯も上がって当然ですが、それなりの価値があるとの事。カーペットメーカーとしてのポジションからの価値観と選択基準ではありますが、分野は若干違えども、同じモノづくりに携わっている私としては大いに同意、次世代に受け継がれる丁寧なモノづくりに取り組まれている姿勢に諸手を上げて賛同した次第です。今回の堀田カーペット社への訪問を機に、私たち株式会社四方継 つむぎ建築舎でも同社の商品を直接扱わせて頂く事になりましたので、ご興味がある方はお気軽にお問い合わせを頂ければと思いますし、私どもからの提案に盛り込ませて頂きたいと思います。
堀田会長、社長、そして良い機会を下さった本橋さん、清水さん、この度は本当にありがとうございました。良い勉強をさせて頂きました。

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◆四方良しの世界を作る株式会社四方継のHP:
https://sihoutugi.com
◆一般社団法人職人起業塾のオフィシャルサイト:
https://www.shokunin-kigyoujyuku.com
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https://www.shokunin-kigyoujyuku.com/application/contact/

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