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志は免罪符ではない

先日、東京目黒の雅叙園で開かれた第8期未来創造企業認定式典に参加してきました。本業で社会課題の解決に取り組み、経済的価値と社会的価値の両立を行っている企業が80項目以上のチェックリストの審査を受け、第三者機関に「良い会社」であると認定される式典です。私が代表を務めている株式会社四方継も1年半前にこの認定を受けて、めでたく3年前から続けてきた事業の再構築、地域課題解決型事業へのドメインの転換が第三者から認められる形になりました。認定企業になってから、あちこちで自社の取り組みを紹介する機会をいただいたり、書籍で紹介されたりすることになりました。
その流れで、現在、未来創造企業の認定コンサルタントのお役目をいただいており、認定を目指す企業のサポートも行っています。
今回の第8期では私がサポートした企業も含め31社が認定され、1期からのトータルは通算125社にも上ります。

良い会社の条件

CSV経営(共有価値創造型企業)の認定基準は、社員、顧客、取引先の三方よしだけではなく、地域社会への貢献や地球環境への配慮など、幅広い項目でチェックが行われます。しかも、それが事業計画の中に落とし込まれており、実行されているかどうかまで厳しく査定されます。最終的な認定は、評議員の方から下されるのですが、その前段階で経営者だけではなく、社内のメンバーと共にすべてのチェック項目に対して、自社の評価をすることが必要です。当然と言えば当然ですが、その事業所で働く人たちが、自分たちの会社を良い会社だと思わ無ければ第三者による認定など何の意味もありません。
その意味では、未来創造企業に認定された会社は、間違いなく良い会社であると言うことができます。

SXとはなりわいを変えること

現在、本業で社会の課題を解決するとの志の高い経営者と企業が年間あたり60社程度増え続けています。式典に出席してみると、こんな素晴らしい企業が日本中にたくさんあるのだと嬉しくなりますし、日本の未来は明るいのではないかと思ってしまいます。
国や民間機関の認定を取得すると言うと、現状行っている事業についての評価をされると思いがちです。しかし、この未来創造企業の認定取得に限っては、社会貢献や地球環境への負荷低減の取り組みを事業と一体にしておく必要があり、ほとんどの事業所が何らかの新たな取り組みをしなければ要件を満たさないのが実情です。どっぷりと資本主義経済の中に組み込まれた、日本の事業所が社会性と経済性を両立しているのはごく稀でほとんどの事業所はSX(ソーシャルトランスフォーメーション)と呼ばれるなりわいを変えるほどの業態変容に迫られます。本業で解決できる社会課題を見つけ、志を立てることが、未来創造企業認定への第一歩となります。

志は免罪符ではない

第8期認定式の冒頭で、評議員の小樽商科大学の泉先生が語られたのは、「志は免罪符ではない。」との厳しい言葉でした。世の中のために良いことをやっているのだから、少々の無理を押し通したり、ガバナンス違反はしょうがないと高慢になることだけは絶対にあってはならない。同時に、ウェイクウォッシュ(社会課題に気づいたふり)、パーパスウォッシュ(志を立てたふり)、にも気をつけるようにとの注意も口にされました。
大事な事は何を言ったかではなく、何をやっているかだと言われますが、志を立てたところで、世界は一切何も変わらないのは自明の理。社会課題に気づき、その不条理を声高に叫んだところで、誰の苦しみも悲しみもなくなりません。なんらかのアクションを起こさなければならないのですが、それを継続するには事業性が欠かせません。社会性と経済性を両立するのは簡単ではありませんが、未来創造企業の認定を目指すのはその高いハードルを乗り越えるチャレンジに他なりません。

経済合理性の外に置き去りにされた課題

近代の日本では経済成長こそが唯一無二の目標だとばかり経済合理性を追求して来ました。その結果、マーケットの小さい、マネタイズに障壁が高いジャンルには目もくれず、金になりそうなところばかりを探し回り、その部分に対する商品やサービスを開発し続けて来ました。置き去りにされた部分は国や自治体による救済やケアに頼るしかないし、その役割と責任を担っていると思いますが、現在の急激な環境の変化に対応するには公的な予算の配分は時間がかかり過ぎるうえに、既存の枠に囚われて新たな事案には慎重です。その結果、社会課題は累積し、複雑に絡み合い、より解決困難になってしまっています。例えば、小中学校生徒の不登校問題。現在33万人の児童が学校に通わずにこれまでの学歴社会から零れ落ちておりますが、なんら抜本的な対応は見られません。労働人口が圧倒的に減少する時代にも関わらず、です。

SXを担う環境とインフラ

結論、急激に増え続ける社会課題の解決は民間が事業として行うしかなく、しかも経済合理性の外側のジャンルにアプローチする厳しい道を歩まねばなりません。非常に難しいですが、既に実践している事例に学べばヒントは必ずあります。未来創造企業の認定は取得がゴールではなく、翌年以降の継続更新が必要で、毎月ある研修を通じて認定企業同士の横のつながりが形成されます。100社を超える事例に学びながら、これまで成し得なかった経済合理性の外の社会課題を解決するビジネスモデルの構築を進めることができます。志を具現化するSX、生業を変えるビジネスモデル転換のインフラが整備されているのです。
絶対に志を掲げただけで満足して何も行動がついてこない様なことにだけはならない様にとの泉先生の叱咤を心に刻んでもらいたいと思います。自戒を込めて。

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未来創造企業認定コンサルタントとして、SX(ソーシャルトランスフォーメーション)のサポートも行っています。

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