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人間尊重と社会システムの俯瞰 〜SINIC理論研究会#3〜

昨日、大阪で開催されたソーシャルカンパニーフォーラム2023ではオムロン社のシンクタンク、ヒューマンルネッサンス 代表取締役 立石郁雄氏による基調講演が行われました。会場は超満員、全国から450名以上の人が集まっており、50年前に予想されたSINIC理論がいかに的確に未来を予測していたか、そして、その未来予測に応じて新規事業を立ち上げ、時代の変化に先んじて変容してきたオムロン社と立石一真氏の凄さが広く認知、拡散される場となりました。
私が世話人として参画している経営実践研究会ではいくつかの専門的な分科会を立ち上げています。その一つがオムロンの創業者、立石一真氏が50年前に未来学会で発表し、その精度の高さが今なお取り沙汰され、単なる予想や預言の域を超えていると近年、大きな話題になっているSINIC理論の研究会です。そこで示されている、これから起ろうとしてている自律社会への変容を経営者が知り、適者生存の法則に則って生き残れるようにと、最適化への方策を研究しています。今回は基調講演で改めて全体像の復習をさせてもらえました。


最も人を幸福にする人が最もよく幸福になる

この度の立石郁雄氏による基調講演ではSINIC理論の細かな部分を深掘りするというよりも全体的な概要を説明されました。SINIC理論の書籍を読んだり、これまで配信されている動画を見たりしながら自分たちの腹に落としこみ、使えるレベルまで咀嚼すべく研究を続けている研究会メンバーにとっては全体像を俯瞰して見直すとても良い機会になったと思います。このところ、つい難解な概念や数式を紐解くべく、深く細かなディティールに入り込んでしまいがちだったので、ちょうどいい機会になったと感じました。
そんな立石社長の基調講演の中で、私の耳に残ったのは「人間自体に、人間性を尊重した自律の原理がある。」とのフレーズでした。創業者の立石一真氏が好んで色紙に書いたのは「最も人を幸福にする人が最もよく幸福になる」との言葉で、利他こそが自利であると、天国では長い箸を使ってお互いに食事を与え合うが、地獄では背丈よりも長い箸を使って自分の口にばかり運ぼうとするので自分では食べることができないのが餓鬼地獄。立石一真氏がそんな仏教の世界観を持たれていたのが色濃く反映されていると感じました。

未来は想像し創造するもの

以前のnoteにも書きましたが、SINIC理論は未来学からの客観的な視点で紡ぎ出された予測です。しかし、同時に人間が歩む未来はかくあるべき。との強い意志と意図も反映されています。図に示されているようにテクノロジーとソーシャルとサイエンスが種を撒き、刺激し合い、ニーズを作り、進化を繰り返して50年前の予測を現代の事実へと具現化してきた側面が確かにあると思うのです。その意味では立石一真氏、オムロン社は未来を想像してから実際に創造してきたと言っても過言ではありません。そしてその意志の中心に人間性の尊重を最重要の原点においていたのだということを今回、改めて再認識しました。
また、エンジニアとして創業した立石一真氏は経営もエンジニアリング(工学)だと考えておられたようで、即ちとことん合理性を追求する側面を持っていたと言います。合理性を貫いて、それを地道にやり抜くしかない。との言葉は、当たり前のことを当たり前に積み重ねる原理原則を指し示しており、そのことを経営における合理性だと言及されています。立石郁雄氏が映し出されたスライドに「本当の合理性というものは、人間尊重の経営というつもりでやることである。人間自体に、人間性を尊重した自律の原理がある。」との一文がありました。まさに原理原則にかなった経営の観点から、経営、社会の両方で未来のあるべき姿を想像し、創造してきたのだと感じました。SINIC理論の本質は、人間性のもつ自立性から紡ぎ出される、誰もがありのままの自分を生きられる、人間中心の自律循環社会への願望なのかも知れません。


誰も取り残さない第三の道

話は変わって、本日は第3回目のSINIC理論研究会が行われました。この研究会では書籍「SINIC理論」を読み解きながら、地域企業の実務者がそこに書かれてある未来予測と、あるべき姿を目指す強い意思を読み解き、社会実装への具体的なアクションにまで落とし込み、それを広く伝播することを目的に掲げています。
今回、第二章のSINIC理論とは、を解説する章を読み解く回で、書籍のまとめと解説を聴きながら私が感じたのは、情報化社会から現在の最適化社会、そして2025年から突入すると予測されている自律社会、その先に目指すべき自然社会への変容は、人が誰も、差別も区別もされることなく、人らしく、自分らしく生きられる成熟を求めた願いを込めて予測されたのではないか。ということです。強く、善なる意図と意思をやっぱり感じるのです。
人類の歴史はこれまで、人が幸せに生きられる社会を追い求めてきました。全ての人が平等に働き、暮らせる社会を目指した共産主義はシステムはそれを動かす権力が腐ることを証明してしまいました。ソ連の崩壊もそうですが、カンボジアのポル・ポトが掲げた崇高な理想と残虐極まりない所業の数々は完全に原理共産主義の実装の難しさを露呈しました。共産主義国家の崩壊の後、市場原理に基づいた資本主義が世界を席巻しましたが、残念なことに資本主義は格差と分断を極めることがあからさまになっています。トマ・ピケティが証明した通り、富める者はより富み、貧しいものはさらに貧困を極めるのは世界中至る所で証明されています。
SINIC理論が自然社会に続くロードマップで見据えていたのはこれまでのイデオロギーとは違う第三の道ではなかったか、と思うのです。

オレたちが創る未来

AIが普及して、誰もが知能を身につける事が出来る様になり、インターネット上にあらゆる知識は存在する。子供たちは学校で誰一人取り残されない社会の実現について学び、社会に貢献する仕事をしたいと就職先を選ぶ時代。表面だけ取り繕った偽善は全て暴かれるし、利己的な価値観にどっぷり浸かった人は嫌われ、市場から排他される。
あらゆる業種業態、規模の大小に関わらず、全ての事業所は、存在意義を認められる事業に取り組まなければ誰にも見向きもされなくなりつつあり、SX(ソーシャル・トランスフォーメーション)ができない企業、社会的な意味や意義を持たない企業はマーケットから退場を余儀なくされる。まさに最適化が一気に進むのが今の時代であり、あと2年、2025年までにそれが一気に広がり、スタンダードがひっくり返るのは高い確率で実現するように思います。その時、我々はどのように社会にインパクトを与える事業に転換できるのか?その問いこそがSINIC理論を研究する本質だと思います。これから私達の研究会で導き出した解を広く伝播することで、立石一真氏が願った未来、そして私たちが求める社会の具現化が進むのだと思います。
この度のソーシャルカンパニーフォーラム2023in大阪は、そんなインサイトを得られた、素晴らしい基調講演でした。運営頂いた植田実行委員長を始め、メンバーの皆様と立石郁雄アドバイザーに心から感謝いたします。ありがとうございました。

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未来を想像し、創造する若者の育成に取り組んでいます。


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