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時代の転換期にまず学ぶべきは二項動態思考である理由。

私は職人起業塾なる建築実務者向けの研修事業を行なっています。半年間15回にも及ぶ座学を受講するのは主に大工や塗装、左官、板金等の職人で、その他にも施工管理者や設計士等、現場に携わる実務者は全て対象としています。内容は、「人と人との信頼関係構築が持続可能なビジネスモデルを作り上げる全ての根本である。」との原理原則に基づいて、ドラッカー博士が「マーケティングの究極の目的は売り込みを一切無くすことである。」と言った様に、顧客からの唯一無二の評価対象である「現場」の価値を現場実務者自身が高めることで、マーケットへの影響力を強め、自然に、かつ持続的に事業が「循環する状態」を創り出すことを目標にしています。そして目的は職人を始めとする現場実務者の地位向上です。これからはこれまでの延長線上に無いと言われる時代の大きな転換期を迎え、新たな価値創造とビジネスモデル構築が求められている現代に欠かすことが出来ない考え方を伝えています。

可能思考と二項動態

研修の中で、職人たちに今まで行って来なかった、決められた図面通りのモノづくりとは全く違う、新たな現場価値創出へのアクションを促します。
現場でのコミュニケーションと目的を明確に持った、心を込めたモノづくりは顧客を含むステークホルダーすべてに圧倒的な信頼を得ることが出来ます。その先に必ず未来は開ける、そんな現場主義の観点から丁寧にその理論と構造を紐解いて、これまで決まった作業をこなす事だけが仕事だと思っていた実務者が新たなチャレンジに踏み出せるようにとサポートを行っています。
現場実務者たちが事業に対して新たな観点(目的や存在意義)を持ち、自分たちの仕事の意味を深く見つめ直し、働くことの定義を書き換えることで、誰もが持つ潜在的な才能を開き、圧倒的な成果を生み出すことができるようになります。そして、その入り口となる概念が可能思考二項動態思考です。研修の初めに必ずこの2つの概念を頭の中にインストールしてもらえるようにカリキュラムを組み立てています。

気付いていない大きな可能性。

可能思考は文字通り、自分にはできる。との可能性を信じ、自信を持ってもらうことです。人はセルフイメージ以上のことは出来ないと諦めます、新たなチャレンジを踏み込んでもらうには、まず初めにセルフイメージを書き換える必要があります。これが出来なければ新たなチャレンジをする事はできないと言っても過言でなく、大概どんな研修に行ってもまず初めに(様々な形で)組み込まれています。
一般的には洗脳的なアファーメーション(大きな声を出して「できる!」と言い続ける・・)を行う研修が多いようですが、私たちは論理的に冷静にそれぞれが大きな才能を持っていることに気づいてもらうようにしています。研修二日目に記憶術であるアクティブブレインセミナーの講座を行い、1日で160個の脈絡のない単語を記憶して、絶対にできるわけがないと思っていることをできた!との体験に書き換えてもらいます。正しい方法を知り、粘り強く反復すれば、必ず達成することができるのを強烈に認知してもらいます。まず、これまで気付いていなかった大きな可能性に気づき、自分でも現場で新たな価値を生み出し、未来を切り開くことができるのだと自信をつけてもらってから研修を進めるようにしています。

どっちも、が未来を切り開く

可能思考と同じ位重要なのが、二項動態の考え方です。人は誰しも、自分が持つリソースや時間に限りがあることを知っており、何らかの選択を迫られた際には二項選択の考え方でどちらかを選びがちです。しかし、本来、人には無限の可能性があり、簡単に1つを選んで1つを切り捨てる「どっちか」を選択をするのではなく「どっちも」やると言う二項動態の選択肢があります。自己限定の枠を取り払い、新たな価値を生み出して未来を切り開くなら、今までやってきた事だけをやり続けるのではなく、新たなチャレンジが必須ですが、二項選択の思考が染み付いていると、それが出来ません。
どっちか、ではなく、どっちも、を選べるようになるには、自分が持つキャパシティーの大きさと、まだ発揮できていない潜在的な大きな可能性の両方を認知する必要とがあります。「自分は所詮こんなもんだ、」との低いセルフイメージを持っていては、選択肢が示された際に即座に「両方ともやるなんて無理。」となってしまいます。二項動態が可能思考とセットで伝える必要があるのをご理解いただけると思います。

天は自ら助くる者を助く

私は、自分自身が大工から経営者になった経緯や、スタッフの職人たちが、自分たちでプロジェクトをまとめあげるリーダーになって活躍してくれているのを間近に見て、職人は決められた作業をその通りに行うだけの役割を飛び出して、様々な価値を生み出せることを知っています。
人は誰しも生まれながら、良知と呼ばれる善なる良き心を知っており、その心に従って判断し、行動すれば必ず人からの信頼を得られる。そして、信頼こそが持続可能な循環型ビジネスモデルの基本であり、この原理原則に沿ったアクションが実践できれば誰もが大きな成果を挙げられることを私達は実際の事業で20年に渡って実験と実証を繰り返してきました。
もう15年以上、一切の宣伝広告を行っておらず、宣伝費として広告代理店等に支払う費用を正規雇用した職人の福利厚生に置き換えています。この、職人の自助論とも言えるシンプルな理論が実装された時、職人の社会的地位向上の扉が開かれます。そして、職人達は単なる現場作業員ではなく、現場価値を高めるための様々な役割を担うことになります。ここで可能思考と二項動態への理解が必要となるのです。

真理と原理原則を体得する二項動態思考

私が以前に書いた二項動態関連のnoteはこちら↑。
ここで紹介している野中郁次郎先生の著書「野生の経営」で二項動態の概念についての解説や事例も載っています。もう少し分かりやすく説明すれば、二項動態とは元々、二項同体という字を使っていたようです。19世紀の哲学者 清沢満之氏がヘーゲルの弁証法を修正する概念として編み出したとのことで、二項は存在するがその極を消すことで多義性や多元性を受け入れつつ、その二項を繋げるとの言葉です。それを野中郁次郎先生が「動態」に言い換えたのは現実社会における二項は相互に影響し合い、混ざり合う動的な関係だからとのことです。
この概念は大袈裟かもですが、この世はすべからず表裏一体であるとの真理を表しています。光と影、陰と陽、経済と道徳、心と身体、利益と顧客満足、人の暮らしと地球環境、等々・・、この世界はどちらかを選んで片方を切り捨てることが出来ないことだらけであり、この真理に立脚すれば、二項動態とはごく自然な考え方となります。
職人起業塾の塾生のメンバー達には、選択肢を示された際に即座にどっちも、と言えるような、自信に満ちた強い心を持って貰いたいと願いつつ、共に学びを深めて行きたいと思うのです。

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2024.2月〜東京でも職人起業塾を開催します。
経営者のオブザーバー参加は無料です。ご興味を持たれた方はお気軽にお問い合わせください。


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