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行けば地球が良くなる旅 in BALI④ Green Schoolで考える教育の本質

旅することで世界の課題を知り、視野を広げ、視座を高める。ほんの少しでも社会の課題解決に取り組む意欲を湧かせ、出来れば行動する。そんな行けば少し地球が良くなる旅を企画するNPO法人タビスキ。
私はその立ち上げ前から強く共感して関わっていたこともあり、企画されたツアーには基本的に全参加することにしています。また、私が世話人として参画している経営実践研究会プロジェクト1000の一環との位置付けにもなっていて今回のツアーも半数近くが研究会のメンバーでした。志を応援し合うインフラって本当に暖かくて素晴らしいと思える多くの仲間の参加でした。
そんな赤道直下の国、インドネシアのバリ島でのツアーに参加してのスタディをコンテンツごとに備忘録がてら綴っています。
タビスキの想いを綴ったHPはこちら


VUCA時代を読み解く鍵

今回のバリツアーに参加した私の目的は、日本と遠く離れた赤道直下の島国の文化を知る、大自然の力を活用したエコビジネスを知る、植民地政策により近代化から取り残された島国でのソーシャルビジネスを知る。の大きく3つでした。ツアーに織り込まれた数々のコンテンツを巡りながら、人口が増え続けているる世界最大の島嶼国家から世界を感じたいとの想いです。
グリーンキッチン、グリーンスクール、エシカルホテル、現代のマザーテレサと言われるブミセハット国際助産院のロビンリムさんに会いに行く等々、企画に盛り込まれていたツアーは単なる観光旅行とは圧倒的に違い、深い学びと大きな示唆に溢れていました。
VUCAと言われ、混迷を深める現代を読み解くのには知っておくべき事柄ばかりだったと強く実感しています。きっと来年もバリ島へのタビスキのツアーが組まれると思うので、持続可能な社会や循環型ビジネスモデルを標榜して活動されている方は、インドネシアに行った事がある人も無い人も、是非スタディーツアーに参加されることを強くお勧めします。
ここまで書いてきた記事はこちら、

日本の教育への危惧

私は今年の4月から職人育成のための通信制高校、マイスター高等学校を設立したばかりの教育業界ビギナーです。元大工の工務店経営者、そこでの実務で培った知見を生かした職人育成サポートの研修事業を行ってきたとは言え、高校卒業の学歴を取得できる学校の運営は全く畑違いと言っても過言ではなく、未だに試行錯誤を繰り返しながら学校の運営を行っています。
そんな私が考え、答えを見出すべきは、これからの社会で大きな活躍をしてくれる若者をどのように導けば良いのか?との教育業界で常に問い続けられている命題です。今の日本の学校教育ではICT技術が導入され、パソコンやタブレットが生徒一人ずつに支給されるなど、私が子供のころと比べたら大きく変わっているようにも見えますが、その実、文部科学省の教育方針や学習教科自体は戦後から大した変化を遂げていません。時代が大きく変容しているにもかかわらず、未来を担う子供達への向き合う大人は半世紀前とさして変わらない古い頭のままです。多くの人がこのままでは日本は没落の一途を辿ると危惧しているし、未来を変えるのも、複雑に絡み合った社会課題の解決も根本は教育にあると口にされる方も少なからずおられま、私もその一人です。その思考を実践に移して全く新しい概念のキャリア教育の高校を立ち上げました。

教育施設に適した竹の建築

今回訪れたバリ島には世界的にも有名な学校、グリーンスクールがあり、スタディーツアーのメインコンテンツの一つとして訪問を楽しみにしておりました。その学校の建物はインドネシアの伝統的な建築手法を採用して全て竹で躯体が組まれていました。元大工の教育者の端くれの私としては学校で運用されているカリキュラムやクラスの運用体制と同じくらい建築にも興味があり、まさに一石二鳥の学びの機会になりました。日本で構造に竹を使って、学校で使うような大きなスパンを飛ばした建物を作るのは実質不可能で、それは材の問題もありますが、その前に法律がそれを認めておりません。グリーンスクールに建てられた非常に開放的なユニークで遊び心があり、環境への意識を高められる竹で出来た数々の建築を見て歩きながら、私達が考えている以上に建築が子供達に与える影響は大きいのだと再認識させられました。以前、木造でinternational schoolの建築を行なった際に、木の内装の効果性をクライアントに熱くプレゼンテーションした事がありますが、次の機会にはもっと遊び心満載の非効率でも楽しい空間を提供できるような提案をしてみたいと強く思った次第です。
グリーンスクールのウェブサイトはこちら、

次世代を担う人材教育の基礎

多くの先進的な取り組みがなされているグリーンスクールで行われている数々のカリキュラムの中で、最も重点を置かれている特徴は自然との共生だと感じました。データーに塗り固められた机上の空論ではなく、自然を全身で感じながら実践的な授業が行われているのは全く違う、深い理解を生み出す可能性を感じました。「何を学ぶかよりも誰から学ぶか」の方が教育の効果性への影響が大きいとよく言われますが、「どこで学ぶか」との学ぶ環境も実は非常に重要です。国際社会のSDGsへの批准によって持続可能な社会モデルの構築が人類の(ビジネスでも)命題になっている今、環境問題への理解やリテラシーは、今後、社会に出てから欠かすことができないスキルになってきます。自分たちが学校で使うエネルギーや水、食料を自然の恵として直接受け取る体験は自然に向き合う姿勢が圧倒的に変わります。また、トイレから汲み出した排泄物を堆肥にして野菜作りに活用し、成長した野菜を口にするなど、都会暮らしをしている子供達には一生関わることのない自然の循環の中に身を置くことで、自然は開発を繰り返して奪うものではなく、お互いに与え合いながら共生できるように循環させる対象だとのパラダイムが身につくのではないかと思いました。それは今後の社会で活躍する人材の基礎的要件になってくると思うのです。ちなみに、学校の運営等については一緒にツアーに参加した一般社団法人国際エデュテイメント協会の森さんがnoteに詳しくまとめてくれているのでウェブサイトと共に紹介しておきます。

イエナプランスクール TARUWARA

森さんのnoteに詳しくありますが、今回のスタディーツアーではグリーンスクールの他にも日本人経営者が運営しているインターナショナルスクールのイエナプランスクール TARUWARAにも訪問させてもらいました。グリーンスクールは生徒達の授業が終わって下校した後に案内をしてもらいましたが、TARUWARAは授業真っ最中に入らせてもらい、イエナプランで学ぶ子供達の姿を直接見させて頂きました。ドイツのイエナ大学実験校でペーター・ペーターセンが創始した「人間の学校」から始まりオランダで広まったイエナプランスクールでは様々な国境越えて、同じ教育を施せるシステムが考案されており、様々な人種の子供たちが混ざり合って、それぞれ違う主張をぶつけたり受け入れたりしながら授業を受けていました。私たちが訪問した際は、ジンジャーでジャムを作る授業を行っていたようで、子供たちがディスカッションして役割分担を決めて進める様は、日本の小学校とはやはり少し違うと感じました。主体性を育てるのを主眼にしていると感じましたが、グリーンスクールほど振り切っていなくても環境に対する向き合い方もしっかりとカリキュラムに落としてあるようでした。国際社会を生きる上での多様性を受け入れることと、自分の主張をはっきり述べることの両立と共に循環型社会への姿勢を学んでいるのは非常に素晴らしいと感じました。やっぱり未来を切り開く人材教育は主体性と多様性の受け入れ、そして環境へのリテラシーなのだと畳み掛けるように見せつけられた気がします。

タレンティズムの思想にそった教育の在り方

TARUWARAのオーナーの石畳さんは子供が幼稚園に通う歳になる際に、通わせたいと思う園がないから幼稚園を作り、その流れのまま小学校も作ったと言われます。「では、この流れのまま、お子さんの成長に伴って小学校、高校と創設されるのですよね?」と質問するとそのつもりです。とのパワフルな返答が返ってきました。本当に子供の未来を想い、何一つ諦めることなく、無ければ自分で作ればいい、今の世界に嘆くのではなく、自分が世界を変えるのだとの強い意志はカッコイイを通り越して美しいとさえ感じました。こんな大人の下で学ぶ子供達はきっと世界は変えられると考えるようになると思います。大人が持つべき決意と責任を改めて考えさせられました。

今回、素晴らしい2つの学校を訪問し、学ばせてもらう中で私が感じたのは、未来を切り開く人材を育む教育は、それなりにコストがかかるという現実です。グリーンスクールではローカルの子供達も通える補助を出す仕組みがあるとのことでしたが、インターナショナルスクールに通えるのは全体から見ればごく限られた家庭に生まれた子供達です。誰もが持っている才能を開花させて、ボトムから世界をよくしていくべきとのタレンティズム的な思想からすればやはり少し物足りない気がしました。先進的な学び、主体性を育む、多様性を認めコミュニケーションができる、環境や社会に対する高い意識を持つ、の3要素を踏まえた学校に、望めば誰でも入学できるシステムが広く普及する必要があると強く感じました。
石畳さんを見習って、必要だけれど無いなら作る。私達が日本で立ち上げたマイスター高等学院をそんな学校へと進化させることで、世界に通用する職人の輩出ができるようになるかも知れないと、決意を胸にバリ島を後にしました。本当に素晴らしい機会でした。タビスキとご縁に心から感謝します。

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主体性、多様性、人を思いやる心、そして世界に誇る日本の技術を身につける高校を運営しています。


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