人気で手に入りやすい チランジア10選

初歩のチランジア・種類と管理方法にフォーカス!

「エアプランツ」と呼ばれ、数年前にインテリアグリーンのブームを巻き起こしたチランジア※1。
簡単に扱えるから……と買ったはよいものの、つい枯らしてしまった!という経験はないでしょうか?

今回は「ハンギングブームの立役者」と言っても過言ではないチランジアについて、その管理方法の初歩をお伝えします!

①チランジア・ウスネオイデス Tillandsia usneoides
あまり目立たない三枚花弁の小さな緑色の花を咲かせます。
花には芳香があり、香りによって開花していることに気がつく場合も多く、さまざまな太さの種類が存在します。 

②チランジア・ベルゲリ Tillandsia bergeri
花がきれいで、子株も出しクランプも楽しめ、非常に丈夫で言うことなしの品種なので、入門種としてもオススメ。 

③チランジア・ハリシー Tillandsia harrisii
美しい銀色の葉を持つ銀葉種※2を代表する品種です。
葉は多肉質で厚みがあり美しい白銀色。
葉をロゼット型に展開していき、非常に観賞価値が高いです。ワシントン条約Ⅱ類に指定され、自然界では絶滅危惧種になっています。

④チランジア・キセログラフィカ Tillandsia xerographica
チランジアの王様とも呼ばれ、非常に人気のある品種。白く幅広の葉がうねりながらカールするその姿は非常に美しく、見事な花を咲かせます。
入手は容易で雑貨屋でも見かけることが多いですが、ワシントン条約Ⅱ類にあたり自然界では絶滅危惧種なので大切に取り扱いたいものです。

※1ブロメリア科は8亜科58属、3,200種に分類され年々増え続けている。チランジア属はその中に含まれ、土が不要で樹に着生して葉から水分を吸収しながら育つ。
※2銀葉種は、葉の表面に持った白い鱗片(トリコーム)を持ち、これにより空気中の水分や窒素などを取り入れる。

⑤チランジア・イオナンタ Tillandsia ionantha
ポピュラーで育てやすいチランジア。「イオナンタではじまり、イオナンタで終わる」と言われるほど、品種も多く奥が深い! 

⑥チランジア・テクトラムTillandsia tectorum
非常に人気の高いチランジアで、ふわふわの毛足の長いトリコームが特徴です。なるべく風通しのよい乾燥した場所で管理するとgood。

⑦チランジア・コットンキャンディ Tillandsia ‘Cotton Candy’
ストリクタとレクルヴィフォリアの交配種※3で、大きなピンクの花苞から白に近い青紫色の花を咲かせる銀葉の美種。交配種としては最も普及し、花苞が付いた状態で売られていることも。

⑧チランジア・ストレプトフィラ Tillandsia streptophylla
非常に美しいフォルムと花をもつ壺型種※4を代表するチランジア。自生地ではチランジア・セレリアナ同様、葉と葉の間の空間にアリが巣を作る「アリ植物」としても有名です。 

⑨チランジア・ストラミネア Tillandsia straminea
非常に大きく成長する大型の銀葉種。芳香があり縁が紫の白い三枚花弁の花を咲かせます。ベルベットのような肌触りの肉厚の葉も特徴的です。 

⑩チランジア・カプトメデューサ Tillandsia caput-medusae
壺型種を代表するチランジア。葉をくねらせながら成長する姿が、ギリシャ神話に登場するメデューサに似ているためこの名前が付けられました。ソーキングなどを行うとピンと葉を伸ばす姿もとてもユニーク。

※3交配種は、交配によって作られた新しい種。人工交配と自然交配とが存在し、作出した人物が任意で名前をつけることが可能。または種名×種名で表記されることもある。
※4壺型種は、株元が壺の形のように膨らんでいるもの。

ほとんどのチランジアは海外から輸入されているというのが現状です。
日本とは気候や環境が違うので、飾り場所や水やりに関する知識を持って育てましょう。

飾る場所は、風のよく通る明るい日陰

空気の流れが大切なチランジア。
蒸れに弱く、新鮮な空気を好む特性があるので風通しのよい場所が理想的です。
室内で完全に空気が止まった状態はチランジアには悪い環境なので、扇風機で風を作るなど工夫をして下さい。
春から秋は屋外のディスプレーでもOK。
冬場の管理は、10度を下回らないように室内へ移動させます。

直射日光は当たらなくても育ちます。
むしろ強い日差しは葉焼けの原因となるため、明るい日陰のほうが適しているのです。
もしも直射日光が当たる場合はカーテン越しの光にするなど、光の調整が必要となります。
積極的に光を当てたい場合は、午前中のみなど時間を区切るとよいでしょう。

水やり方法について

チランジアは水分量の少ないエアプランツではあるものの、水やりが必須ということは言うまでもありません。
しかし、腐敗する原因で一番多いのは、水やりが適切に行われていないことよるもの。
これから提示する3つの方法のうち、育てているチランジアの種類や、自分の管理環境、好みのペースなどにマッチしたものを選びましょう。

◎夜間に空気中の水分や窒素などを吸収して、ゆっくりと成長するので、夕方から夜にかけての水やりがおすすめ。
逆に、日中の気温の高い時に水やりをしてしまうと株元が蒸れて腐敗の原因に。
◎冬季と、湿気の多い時期には水やり頻度を減らすこと。
◎葉がしおれる、葉の先端が枯れてしまうなどの症状が出たら水分が不足している可能性が高い。

霧吹き

水やり方法では基本中の基本です。 頻度の目安は週に2~3回。
水の好きな品種は週に3回は与えたいところ。
チランジアの全品種に対応します。

霧吹きで、全体がしっかりと湿る程度に水を吹きかけていく。葉と葉の間に水が貯まっていると、傷みが出る場合があるので、逆さにしてしっかりと水を切る。

ディッピング

たくさんのチランジアを管理している場合、霧吹きよりも楽に水やりができることからおすすめの方法です。
乾燥を好むタイプはこの方法を避けましょう。

株全体を水を貯めたバケツやたらいへ浸けこむ。
霧吹きでは水が届きにくい葉の間にまで浸透するメリットも。

浸ける時間は短時間でOK。取り出したら、必ず水気をしっかりと切る。

ソーキング

チランジアの株全体を水中に浸して、一晩(8時間程度、長時間は禁物)吸水させる方法です。
朝には水を切って乾燥させます。
10日に一度、ソーキングを行えば霧吹きもディッピングも必要く、こまめに水やりができない人におすすめです。

ただし、乾燥を好むタイプのチランジアにはやってはいけません。
頻繁に行うと負担になるので、霧吹きやディッピングで済ませられる人ならやらなくても大丈夫。
愛好家によっては、「できるだソーキングはやらない」という声も。
長時間の輸送などで極度に乾燥させてしまったチランジアは通常の水やりでは回復しないため、対処法として行われることもあります。

チランジアの花

チランジア・カプトメデューサ Tillandsia caput-medusae
チランジア・ジョネシー Tillandsia jonesii

「チランジアは、一生に一度だけ花を咲かせます。花を咲かせた親株はいずれ枯れてしまいますが、その枯れるまでの間に子株を出して世代交代をします。開花する直前に見事に色付き紅葉する姿は非常に魅力的です」(折谷さん)

チランジアの着生方法

チランジアのほとんどが着生させて楽しむことができます。
そのスピードは、半年から1年以上と、ゆっくりです。

コルクや流木に着生させる方法

コルクや流木、木材、ヘゴ板などへの着生が一般的。

ソーキングするときは、流木やコルクごと水に浸ければ大丈夫です。
ただし着生させる材質は、塩抜きやアク抜きの処理がされていて、腐りにくいものを選ぶこと。

ドライバーでコルクに2ヵ所、穴を開ける。
#28ワイヤーをチランジアの根元付近の本体に引っ掛ける。
根が出ていれば直接巻くのも可能に。
麻紐のほか、硬すぎないワイヤーであれば#28以外でも代用できる。

ワイヤーの両端をコルクの穴へ2ヵ所通し、裏面でねじる。
この際、湿度を好むタイプのチランジアには根元にミズゴケを巻くのも◎。

株の根元がコルクにくっついていれば、やり方はラフでOK。
ワイヤーや麻紐を使用しにくいものには、グルーでくっつけるという荒業も。

鉢に植えつける方法

鉢に敷き詰めたミズゴケに着生させることで、鉢からチランジアが生え出ているように見えキュートな印象に。
好みの鉢を使って挑戦しましょう。

タンクタイプのチランジアは、この方法で管理すると調子よく成長していきます。
ミズゴケの代わりにバークチップ、軽石、ヤシチップなども使えますが、きちんとアク抜きをしてから使用することを忘れずに。
鉢にミズゴケを詰め込む。
ぎゅうぎゅうにせず、ある程度ゆとりを持たせる。

ミズゴケの上に直接、チランジアを置く。
そのままにしておくと、自然に根が伸びて着生する。

品種によって、水を好むもの、乾燥を好むものなど性質が異なります。
また、花を咲かせるときに大きく見た目を変えるものもあって、奥が深いですね。
もっと詳しく知りたい人は監修者、折谷さんの「フロンティアプランツ」のホームページで!

月刊フローリスト 撮影/松井洋子

教えてくれた方
折谷兼潤 Kanemitsu Oritani
Frontier Plants(フロンティアプランツ)代表

フローリストとしてコンテストなどで厚生労働大臣賞をはじめ多数受賞歴を持ち、デモンストレーションや講師の仕事、雑誌の掲載、書籍、展示会、花育などのワークショップなど幅広く活躍。
フローリストとして活躍する一方でブロメリア(エアプランツ)のエキゾチックな魅力にとりつかれる。
このすばらしい植物の魅力をもっと広く知ってもらうため2016年「Frontier Plants フロンティアプランツ」を設立。
現在は北海道を拠点にブロメリアをメインにビザールプランツ(珍奇植物)の卸売、販売を行う。
ブロメリアの魅力を伝えるためにチランジア図鑑の作成、イベント出店を通してブロメリアの普及活動に尽力。

http://www.instagram.com/frontierplants/
http://www.facebook.com/frontierplants/
http://frontierplants.com/

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