見出し画像

安価なお酒の追及について

最近、Twitterでパック酒スキの人たちと相互フォローになって、いわゆる安酒といわれる大手のメーカーが作った日本酒を飲みあさっていた。価格帯は2リットル1000円行かないくらい。これは、過去調べたアルコール度数当たりの金額でいうと、4リットルのペットボトル甲類焼酎と同レベルであり、かなり効率がいい。効率がいいというといかにもアル中の代表みたいな発言であるし、別にそれは否定しないのだけれども、最近気が付いたことがある。

うまい。うまいのだ。

ただ、すべてがうまいというわけではない。中には、え?これ薄すぎない?とか、逆に濃すぎて意味わからんけど、ってなるものもある。

でも、それって別に安いからまずいというわけではなく、高い吟醸酒などでも自分に合わないものもある。俺自身は山廃のような濃厚な酸味の強い、野性味の強い酒というのが好きなのだが、きっとそれが苦手な人も多い。それと大差はないわけだ。

価格が安い=手をかけていない、というような印象を、特に酒では受けがちである。が、メーカーに勤めていて思うが、安くしただけでは売れない。品質を保ったまま安くしなければならないわけであり、そこには大手メーカーだからできる並々ならぬ努力があると感じるわけだ。

とはいえ、俺はそのメーカーの努力を飲んでいるわけではない。実際に味がまずければ飲まなくなる。そういう中で出てくるのがこの言葉だ。

うまいぞ。

どういう作り方をしているのかわからないのだけれども、現在のパック酒はとても種類が多い。恥ずかしながらその存在をつい最近までしらなかった。原酒、山廃、純米、などなど…。酒造会社も多い。度数も幅広い。なんだこれ、パラダイスじゃないか。

当然、先ほどの逆で、高い日本酒、地酒のバリエーションもとても多いし、どちらかというと全国の価格帯の高い酒のほうがバリエーションが多いだろう。ただ、それを極めるのは金銭的、時間的、肝臓的にほぼ不可能であると感じている。せいぜい、自分が住んでいる場所、旅行先くらいなもので、しかも別に利き酒師のように味覚やお酒を表す語彙がない俺には、飲んだ酒の味や名前を一期一会で覚えられる能力もないし、そもそも酔っ払いで何も覚えられない←

そういう意味で、大衆酒たるパック酒はお求めやすいお値段であるし、量も多いし(結局そこ?)、とてもよい。ただし、今までそれって可視化されていなくて、共有しようとすると「またしょりえさんが安酒で語ってる、あの人結局味わかってないじゃん」ってなっていたが、最近は冒頭にも書いたがTwitterで仲間が増えたせいで、自信もついてきた(なんの?)

さて、ここまで日本酒のことを書いてきたわけだ。ある理由から2011年から日本酒縛りで生きてきたし、別にそれを変えようとも思わないんだけど、最近実は「安酒」かつ「醸造酒」というジャンルで、コンビニワインに注目している。

きっかけは、中国でとある料理人から聞いた「セブンイレブンのワインも、きっちりデキャンタして味を調えると、高級ワインと変わらない味が出るんです。馬鹿にできないですよ。」と言われてからだ。それから、なんとなくワインを買いだして、帰国してからはコンビニワインをたまに買って飲んでいる。

これ、実に奥深い。単純にうまい、というだけの話ではなく、何かポテンシャルを感じる部分がある。

まず、日本酒とワインという点で比較してみる。一番大きい違いは度数である。日本酒は基本的に15度近辺。原酒だと19度と、醸造酒では最も高い部類であるが、ワインはそれと比較すると2-3度くらい低く、11-13度程度。そのため、割と長く飲める。次に、原料の品種による違いが日本酒と比較して非常に大きい。日本酒でも、当然使用されている酒造適合米の種類によって風味は異なるわけだが、それが万人に説明なしでわかるレベルか、というとはなはだ疑問であり、自分も飲み分けられる気がしない。例えば、山田錦と五百万石から作られた純米酒を出されたとしても、自信をもってどちら、とは言えないし、言語化もできないだろう。ワインは違う。いや、こういうと語弊がある。ワインだってブドウの種類で明確に味分けできるとは思わない。ただし、メルロー=甘い、くらいの感覚ではわかるし、日本酒よりそこの微妙な違いがないんじゃないかなって気がする。そもそもブドウが違うと色も違う。赤ワインと白ワインって同じワインって言っていいの?ってくらい味も違うし。(ここら辺は個人の感想です)

そういう点で、ワインは度数が低くて飲み続けやすく、味の違いが分かりやすくて酒を飲みなれていない人でも好き嫌いがわかりやすいので、感想を共有しやすい、ということがあるのかと思う。

ただし、それはワインに関する格式が取っ払われた場合である。

ワインに関して、やれ赤ワインは肉に合うだの、白ワインは冷やして飲まなきゃいけないだの、極めつけは、開けたら飲み切らないと味が変わる、だのいう言説がはびこること、これがとてもよくないと感じる。赤ワインだって肉じゃない付け合わせがあるものも存在するだろうし、常温で飲んだ白ワインのほうがおいしい場合もある。開けた後の酸化で味が変わったとしても、別にそれはそれでいいじゃんという気もしている。

そこら辺の格式を取っ払ってくれるのがコンビニワインなんじゃないかと思う。何しろ安い。一本500円程度なので、前述のアルコール効率的にはかなり高いし、それくらいであれば気楽に飲める。別に封を開けて残したって罪悪感(酒を飲んで罪悪感があるとか、本当によくない!!)はないし、期待値も低いからうまかった時の衝撃は大きい。というか、少なくともセブンプレミアムのワインはうまい。

もちろん、日本酒も同じだ。大衆酒は確実に日本酒のすそ野を広げてくれると感じる。酒を飲むのを特別なことと感じないからだ。

そんな安価なお酒を飲みあさっていくのはとても楽しい。少なくとも、世界の解像度がもう一段上がった気がする。この安酒道、しばらく歩んでみようかと思う。

ちなみに、今飲んでいるのはセブンイレブンで400円弱で買ったワインだ。これは「冷やしておいしいワイン」と書いてあって、メルローなので甘い!みたいな触れ込みだったので昨日冷やして飲んでみたんだが、どうも舌に残る感じがしていまいちだった。まあ所詮400円かーとか思っていたのだが、本日常温で飲んでみると、なんとも酸味と甘みのバランスがよいではないか!空気と触れた、というのもあるかもしれないが、断然昨日よりうまい。こういう、雑な楽しみ方ができるのもコンビニワインやパック酒のだいご味である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?