Summicron-M 35mm ASPHは最良コンディションで安価なヴィンテージレンズ

Leica, Summicron-M 35mm ASPH. v.2 (2016)

ライカM型の焦点距離は35mmもしくは50mmと言われます。
にもかかわらずライカ製の焦点距離35mmレンズを探すとあることに気づくはずです。

35mmレンズは高い¥¥¥

ということに。それでもライカレンズが気になる人向けに、この記事を書いてみました。

結論として
安心して使えるLeica製35mmレンズが欲しい方
におすすめです。

さて、中身に入っていきましょう

意外とヴィンテージレンズ

描写を見ると、f4以上はシャープ!だが、開放付近は意外と解像せず

f8くらい絞るとどこまでもシャープ
M10-P + Summicron-M 35mm ASPH. v2
f8ならカラーでも色ずれなど見えない。全体のコントラストも良好
M10-P + Summicron-M 35mm ASPH. v2
3m程度の距離をf4で。暗部は粘っているし、3D Pop感も良好
M11 + Summicron-M 35mm ASPH.

好きな写りです。ぐっと引き込まれます
お次は開放付近です

at f2
M11 + Summicron-M 35mm ASPH. v2
at f2
M11 + Biogon 35mm f2 ZM

Summmicronは開放でもモヤはないようです。一方、比較対象としてのBiogonは少しモヤがかかったように見えます。

どちらもマイクロコントラストが高い結果、3D Popしています。が、どちらかというと、Biogonの方がより飛び出してくる印象。対して、Summicronは引き込まれる・奥行きがある印象を受けます。

せっかくなので拡大もしてみます。

等倍拡大

拡大してみると、Summicronの線が意外と太いことがわかります。
またSummicronは眉毛の辺りが色ずれしているような気もしてきました。
※等倍なんかしないよ、と言う声が聞こえてきますが、あくまで好奇心からのテストなのでご了承ください

気になったので、いつもの簡易チャートでも比べてみました

全体 - f2
あまり差はわからないが、左のSummicronの方が周辺減光は少ないようです
全体 - f2.8
summicronはすっかり周辺減光なくなった気がします
全体 - f4
大体同じになった気がします
右下端 - f2
Summicronが解像できていないのに対し、Biogonはモヤがあるも解像自体はバッチリ
右下端 - f2.8
f2と同じ傾向に見えます
右下端 - f4
Summicronは突然解像。Biogonもモヤが晴れてスッキリしました

その他要素として、歪曲とフレアも見ておきましょう

開放から歪みは特になさそうで、さすが。

at f2 フレアとゴースト共に少し出ていますが、いい感じ
M10-P + Summicron-M 35mm ASPH v2 w/ hood

フレアも開放逆光だとフード付きで、これくらい発生。とはいえ、全体のコントラスト低下は少ないし、ゴーストも控えめなので、実質問題ないと思いました。むしろ狙えば出せると言う意味では使い出があるとも思います。

※本当のヴィンテージレンズなら、このシーンでコントラスト低下して真っ白になったり、真っ白まで行かずともゴーストや虹がいっぱい出たりすると思いますが、そこは程度問題ということで。。。

急激に前ボケしつつ、フォーカスシフトは最短距離だと大きめ

レンジファインダーの場合、測距は出来るものの、ミラーレスと異なり、どの範囲がピント面なのか構造上撮影前に把握できません。しかし、

F値を変更するとピント位置がずれること……実はこの現象はほとんどのレンズで発生しています。

https://tatsumo77.hatenablog.com/entry/2018/03/26/175747

とあります。とはいえ、ピントの中心が動こうと、f2時のピント中心が、f2.8時のピント範囲に入っていれば、実質ピントは合っているので、大きな問題にはなりません。
さて、Summicron-M 35mm ASPHの場合はどうでしょうか

f2で18cmあたりがピント中心でしたが、f2.8で中心が移動した結果ボケてしまい、f5.6でもボケてます
M11 + Summicron-M 35mm ASPH v2
より遠くを切り出してみると、ピント中心(フォーカス)が後方にシフトしたことがわかります
M11+Summicron-M 35mm ASPH v2

と言うわけで、最短撮影距離では支障があるレベルでフォーカスシフトしていることがわかりました。そもそも最短距離は本分ではないと言う観点も分かりつつ。

ボケの急峻さの傾向としては、前ボケがかなり急峻。一方で、後ろボケはややなだらかと言えるでしょう。
なので、ピントを外さないと言う観点では、意識としては前のめりになるよりかは、後ろに引き気味に撮影した方がベターだといえます。

明るい単焦点レンズの「ライカ ズミクロンM f2/35mm ASPH.」は、卓越した描写性能と独自の美しいボケ味が特長です……全ての撮影距離で絞り解放から高コントラストかつシャープで歪曲収差もほとんどない描写を実現します。

https://leica-camera.com/ja-JP/photography/lenses/m/summicron-m-35mm-f2-asph-black

とあるのですが、2021年発売のApo-Summicronどとはだいぶ違うようです。
レンズの素性を理解するために、その理由をちょこっと考えてみようと思います。

実はデジタルネイティブじゃない Summicron-M 35mm ASPH

ボケは確かに綺麗。輪郭は若干強く出るようです
M10-P + Summicron-M 35mm ASPH v2

本レンズは2016年に更新されたv2です。が、オリジナルからの変更点は、レンズ位置の微調整、金属フードへの変更、ボケをきれいにするための絞り羽枚数の変更とわずかであり、ほぼオリジナルから変わっていません。

光学系だが、新旧レンズ構成図を見比べてみても違いはまったくなく、5群7枚のレンズ構成から非球面レンズの位置など、構成図を見た限りでは完全に同一に見える。これについてライカの光学開発責任者であるピーター・カルベ氏に尋ねたところ、光学系は従来とほぼ同じだが、より性能を上げるためにレンズ間隔などをほんの少しだけリファインしたという。どうやら相当に微妙な小変更らしく、その違いはレンズ構成図からは読み取れないようだ。

https://store.leica-camera.jp/contents/m-lens-14


前後の凹レンズが特徴的。だがダブルガウスと呼べると思います
https://store.leica-camera.jp/contents/m-lens-14
ちなみにApo-Summicron-M 35mm ASPH (2021)は、
もはやダブルガウスかわからないほどの変形設計

オリジナルは1997年発売。ライカM8の発売が2006年なので、明らかにデジタルセンサーでなく、フイルム向けに設計されたレンズだとわかります。

同じくフォーカスとシフトが大きくて有名な Summilux 35mm ASPH が1993年設計であることを鑑みると、Summicronのフォーカスシフトの大きさも納得です。どうせなら、2016年の改良時にSummiluxのようにFLE化してくれたらよかったのですが、そうならなかったので残念。

Leica 35mm f/1.4 Summilux Pre-FLE
I owned this lens before switching to the FLE version, and I don’t recommend it on digital because the focus shift is actually pretty bad. I had to compensate for this when shooting at f/2.8-f/4, and life’s too short for that.

https://jacktaka.com/leica-35mm-f14-summilux-fle

エルゴノミクスと外観は最高

金属フードがめちゃかっこいいです

描写について難を述べてばっかりでしたが、実はこのレンズ好きです。
というのも、以下3点のエルゴノミクスと意匠によります:

  • 大きめのフォーカスタブにより、慣れれば距離指標を見ずとも感覚でピント合わせができる

  • 間伸びすることなく、リズミカルに配置された数字などの意匠によるかっこよさ(この逆が Carl ZeissのBiogon f2 ZM)

  • 金属製で、適正位置でキュッと止まる、高級感あふれるフード

コンディションの良い35mmレンズの入手は難しい

かっこいいヴィンテージレンズなら、中古市場で探したら良いのでは?という声が聞こえてきそうです。

おっしゃる通りです。
が、素直にうなづけない理由が二つあります。

そもそもLeica製中古レンズが軒並み高い

が、一つ目の理由です。新宿の防湿庫のプライスリストをざっと見ますと、美品は軒並み30万円を超えています。

Summilux-M 35mm f1.4 1st: ¥1,898,000
Summicron 35mm f1.4 2nd: 608,800
Summilux-M 35mm f1.4 Aspherical: ¥2,780,000
Summilux-M 35mm f1.4 ASPH: ¥468,000
Smmilux-M 35mm f1.4 ASPH FLE: ¥538,000

Summicron-M 35mm  f2 8枚玉 カナダ製: ¥699,800
Summicron-M 35mm f2 6枚玉: ¥359,800
Summicron-M 35mm f2 7枚玉: ¥379,800
Summicron-M 35mm f2 ASPH v1: ¥349,800
Summicron-M 35mm f2 ASPH v2: ¥369,800

Summarit-M 35mm f2.5: ¥129,800
Summarit-M 35mm f2.4 ASPH: ¥225,800

Summaron-M 35mm f3.5: ¥179,800
Summaron-M 35mm f2.8: ¥299,800

※全て美品価格(2020年09月09日付)

https://news.mapcamera.com/k4l/leica-price-guide/

Summicronの中で一番安いのは、この現行レンズなのです。

研磨も難しい35mm

ではいずれかのジャンク品を買って、修理に出しOHと研磨をして最高状態にすれば安上がりなのではないか、と考えました。

が、お聞きしたところによると35mmは前玉以外の研磨が難しく、かつ素人修理に近い分解により中玉が傷ついた個体が増えているとのことで、修理に丁度良い個体に出会うのは難しいようです。

※サンハンズマロン(L型)とエルマー35mmをジャンクで買って、研磨してもらうつもりだったのですが残念です。

Summarit-M 35mm f2.5はうーん

上のリストで一番安価かつ、2007-2014と生産時期が比較的新しいSummarit f2.5が良いように思えます。

http://rangefinder.yodobashi.com/lens/leica/summarit35.html

そう思い中古品を触ってみましたが、ゴム製かつ抵抗感がスカスカのフォーカスリングは、好みが分かれるところだと思いました。

結論「最良コンディションで安価な Leica製35mmレンズ」

結局、個人的には、Summicron-M 35mm ASPH v2は

  • 意外とヴィンテージな写りで

  • エルゴノミクスと意匠が最高な

  • 最良コンディションで手にいれやすいLeica製35mm レンズ

でした。
ではどんな方におすすめかというと

「安心して使えるLeica製35mmレンズが欲しい方」

だと思います。
ただし新品45万円のレンズの写りが「意外とヴィンテージ」程度で良いのか、というのはかなり悩ましい問題だと思います。
個人的には

  • ヴィンテージで安価なサンハンズマロンを頑張って探す

  • 10万円追加してSummilux 35mm f1.4 ASPH FLE

  • Leicaは諦めてZeissかVoigtlanderの35mm

を買う方が、より満足感が高い気がしています
では35mmでどんなレンズを買えばいいのか、はこちらで解説しているので、ご覧ください。

More Photos

Edgeに至るまでボケは綺麗
M10-P + Summicron-M 35mm ASPH v2
コントラストが強い中でも、しっかり暗部も粘っている
M10-P + Summicron-M 35mm ASPH v2
グイッと目を引く力強さを感じる
M11 + Summicron-M 35mm ASPH v2
現像方法の好みもありますが、線は比較的太い
M11 + Summicron-M 35mm ASPH v2
確かf4で3mぐらいのショットです。この程度被写界深度を稼げているとリアリティのある描写に
M11 + Summicron-M 35mm ASPH v2
サビの表現はまぁまぁ
M11 + Summicron-M 35mm ASPH v2
画面コーナーに太陽が入ると遠慮なく虹気味の跡が出ます
M11 + Summicron-M 35mm ASPH v2
定番スポット。RAWだと暗部に人の顔が残っていることがよくわかります。
M11 + Summicron-M 35mm ASPH v2
確かf5.6。ガラスの透明感はちゃんと出ていますね
M11 + Summicron-M 35mm ASPH v2


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