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良いプロジェクトとは

弁護士をしていると、いろんなプロジェクトに出合います。弁護士としてお手伝いをしていく中で、これは上手くいきそうだなと感じるプロジェクトと、なんだか危なっかしいなと感じるプロジェクトがあり、おおよそ、その勘は当たっているような気がします。

今回は、弁護士という当事者と第三者の中間的な立場から見た良いプロジェクトの特徴についてまとめてみたいと思います。

<目次>
・手を動かす人に少なくとも1人熱狂している人がいる
・全員が熱狂しているわけではない
・実現すべき価値が明確であり、メンバーに共有されている
・結語

手を動かす人に少なくとも1人熱狂している人がいる

良いプロジェクトの特徴の一つとして、手を動かす人に少なくとも1人熱狂している人がいるということが挙げられます。

プロジェクトでは必ずといっていいほど問題が発生します。かかる問題を乗り越える原動力となるのは、頭の良いチームマネージャーというよりは、案件を何とか実現したいと熱狂している人の存在です。かかる熱狂があってこそ、クリエイティブな解決策が思い浮かんだりするのです。こういう熱狂している人がいると、私のような弁護士としてプロジェクトに参加している者にもその熱狂が乗り移り、弁護士目線で見たクリエイティブなオプションが提示できるようになったりもします(弁護士としては、熱狂がなくともそのようなオプションを提示したいものですが、案件がクールダウンしてしまっているとなかなかそういうオプションの提示ができないものです。)。熱狂はメンバーに伝播し、それぞれのポテンシャルを引き出す触媒となるのです。

リンカーンの名言に、「意志あるところに道は開ける。(Where there's a will, there's a way.)」という言葉がありますが、まさにこのとおりです。

ここでのポイントは、手を動かす人に熱狂している人がいるという点です。例えば、社長が熱狂していても、現場が全員冷静だと、社長をクールダウンさせる方向に力が働いてしまいがちで、社長の熱狂を原動力に転換することがなかなか難しくなります。

全員が熱狂しているわけではない

逆に現場が全員熱狂している場合、弁護士目線からするとやや危なく感じます。問題点をそのままに突っ走ってしまい(全員が熱狂している”祭り”の状態になると、なかなかマイナスの要素を冷静に聞いてもらえないことがあります。)、後で問題が顕在化してしまうというおそれがあります。

こういう依頼者だけでは適切なブレーキが効きづらい状況に陥っている場合には、弁護士が悪者になって案件にブレーキをかけざるを得ません。弁護士業務の中でときたま訪れるあえて空気を読まない場面です。そのときは依頼者から怪訝な顔をされてしまいますが、依頼者が不利益を被るよりは、弁護士が悪者になった方が良いのです。

但し、法的観点が絡まないビジネスジャッジ的な判断においては、弁護士でもなかなか有効にブレーキをかけられない場合があります。こういう場合は、ブレーキをかけられそうな担当者にビジネスジャッジ上の問題点を共有して、冷静に判断するよう働きかけることになります。

実現すべき価値が明確であり、メンバーに共有されている

プロジェクトは複数人で一定の価値を実現するために行われるものです。

でも、プロジェクトの中には、上長からの命令だけをより所にプロジェクトが推進されている場合も少なくありません。こういう場合、依頼者にヒアリングをかけても実現すべき価値が明確でなく、弁護士としてもアドバイスがしづらい状況となります。

これは、上長が実現したい”want”を共有せずに("want”については実はシンプルな交渉のコツもご覧ください。)、何をするかという"do”のみを伝えていることから起きる悲劇といえます。案件が途中でブレてしまい、立ち往生することもあり、そこから案件を立て直すのにさらに時間的・金銭的追加コストが生じてしまいます。

他方、実現すべき価値が明確で、メンバーに共有されていれば、各メンバーの役割もはっきりとし、余計な調整コスト等も生じずに、スムーズにプロジェクトが進むようになります。良いプロジェクトは、早くクローズするし、コストも大きくかからないのです。そのためには、プロジェクトで実現するべき価値を明確にし、これをメンバーにしっかりと共有することが大切だと思います。この意味においては、良いプロジェクトは比較的少人数で回されていることが多いように思います。人が増えればプロジェクトが上手くいくというわけではないのです。

結語

以上のように、良いプロジェクトとは、アクセルとブレーキが適切に効く状態で、ハンドルがしっかりと握られている状態が作られているプロジェクトであると考えます。これがしっかりしていれば、目的地に早く着くことができますよね。

今回は「#とは」のイベントに便乗して、良いプロジェクトとは、ということを投稿しました。こういう縛りがあると逆に投稿するネタが思い浮かんでくるような気がします。またこういうイベントがあれば是非参加したいなぁと思います。

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法律書よりビジネス書が好きな弁護士。弁護士業務や弁護士になるまでに培った経験をなるべく言語化して共有したいと考えております。皆様からサポート・リアクションをいただき本当に感謝しております。励みになります。