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謝罪のキホン

弁護士業務の中には危機管理という分野があり、企業等が不祥事を起こした際の対応のアドバイスをすることがあります。謝罪はその中でもキホンのキで、これを適切に行わないと炎上して事態を悪化させてしまいます。謝罪は決しておろそかにしてはいけないのです。

最近報道などでいろんなタイプの謝罪を見ますが、謝罪会見をした結果、かえって炎上して事態を悪化させてしまう例が多いような気がしています。そういう謝罪は、謝罪のキホンを欠いているものばかりです。

逆に言うと、謝罪のキホンを押さえておけば、万一不祥事が起きてしまったとしても、初動を間違うことなく、不祥事の実態以上に事態が悪化するのを防ぎやすいと思います。

今から述べる内容は企業等の不祥事だけでなく、日常の謝罪にも使える内容だと思いますので是非参考にしてみてください。

<目次>
・なぜ謝罪するか
・ステップ1 謝罪の対象を明確にする
・ステップ2 客観的な事実経緯を正確に伝える
・ステップ3 原因・理由を正確に伝える
・ステップ4 今後の対応・再発防止策等を伝える
・できる限り素早く謝罪する
・誠実さが重要
・結語

なぜ謝罪するか

謝罪は人としてあまりに当然の行為であるため、その目的はあまり語られていないように感じます。

(やや不謹慎ではありますが)何のために謝罪をするかをその機能的側面からドライに考えると、それは、問題の拡大をくい止め、収束に向かわせるため(場合によっては再チャレンジの許しを得るため)といえます。

よく危機管理は火消しにたとえられますが、謝罪は消火器などによる初期消火活動といえます。

こうした目的を意識せずに漫然ととりあえず謝罪することは極めて危険です。

そして、危機管理に“管理”という言葉があるとおり、危機管理のキホンはリスクを自らのコントロール下に置くことです。ここでいうコントロール下に置くという状況とは、一般的にいえば、リスクの輪郭を把握し、そのリスクに対応している状況を指すと考えます。ただ、1つ抜けがちな観点として、相手(企業の不祥事なら一般の人々)にあらぬ想像をさせないということが挙げられます。

人間の想像力は豊かなので、相手に想像する余地を与えてしまうと、不祥事に尾ひれはひれがついて、実態以上に大きくなってしまいます。

謝罪の基本ステップは大きく次の4つに分かれます。

ステップ1 謝罪の対象を明確にする

まず火元を特定しないと適切に消火することはできません。なにについて謝罪するかを明確にしましょう。

謝罪の対象は、相手が不満に思っていることを対象とすべきです。意外とこの点は見落とされがちで、ここをミスしてしまうと、とんちんかんな謝罪となってしまいます。

また、あまりに抽象的なものを対象としてしまうのも考えものです。相手には“なんかすみません”と言っているように伝わってしまうおそれがあります。

きちんと、“〇〇を起こしてしまい誠に申し訳ありません。”などと謝罪の対象を具体的にしておくべきです。

ステップ2 客観的な事実経緯を正確に伝える

謝罪の相手は、なにが起きたのか、なぜ起きたのかということが分からず、フラストレーションを感じている場合が多いです。これらの疑問に応えれば、こうしたフラストレーションが溶けて、冷静になってもらえる可能性が高まります(冷静になってもらえれば、謝罪を受け入れてもらい、建設的な議論ができる可能性が高まります。)。

逆に、これらの疑問に応えずにいると、ああじゃないか、こうじゃないか、事実を隠しているのではないか、とあらぬ憶測を呼んでしまい、問題が拡大してしまいがちです。相手に想像する余地を与えてしまうのです。

なので、問題に関する客観的な事実経緯を説明し、何が起きたのかということを正確に伝えることが重要です。

この際、注意すべき点を次に述べます。

嘘をつかない

ここでの最悪の対応は嘘をつくことです。その場をしのげても、あとで気付かれたら終わりです。謝罪の場で嘘をついてしまうと、その後いくら正しいことを述べても全て信用されなくなってしまいます。そうなると、後は相手の想像力のままに悪く思われてしまいます。

不正確なことを述べない

やってしまいがちなミスは、憶測などに基づいて不正確なことを述べてしまうことです。これをしてしまうと、後で伝えた内容と異なることがわかったときに、(故意ではないのに)嘘をついていたとされてしまうおそれがあります。

分かっている正確な事実経緯だけを伝え、分からないことは分からない、調査中なら調査中と答えましょう。

不利益な事実を隠さない

不利益な事実を隠しても、後で判明したときに嘘をついていたとされてしまうおそれがあります。

むしろ、不利益な事実をも明らかにすることで、その場では辛い思いをすることになりますが、本当のことを言っていると信用され、それ以上の追及を受けにくくなります。

ステップ3 原因・理由を正確に伝える

次のステップは、なぜ起きたかという疑問に応えるものです。その不祥事が起きた原因・理由を正確に伝えましょう。

ステップ2の事実経緯から原因・理由が明らかな場合には特段言及しなくても良いと思いますが、そうでない場合には、相手のなぜに応えるために言及した方が良いと思います。

但し、正確な原因・理由がわからない場合に分からない、調査中などと答えるべきなのはステップ2と同じです。

また、捜査機関等の捜査・調査を受けている場合には、別段の配慮が必要ですので、ご注意下さい。

ステップ4 今後の対応・再発防止策等を伝える

こうして不祥事の輪郭を伝えた後は、これにどうやって対応するかを述べ、相手を安心させる必要があります。

今後の対応ないし再発防止策として考えていることを伝えましょう。

できる限り素早く謝罪する

以上が謝罪の基本動作ですが、何よりも大切なことは、できる限り素早く謝罪することです。そうしないと、不祥事の火がどんどんと燃え広がり、取り返しがつかなくなってしまいます。

素早く謝罪できれば、事案に一応の区切りがつきますし、場合によっては相手もより具体的な対応策の検討に協力してくれたりします。謝罪にはこうした建設的な方向に事案をシフトさせる力があります。

但し、ただ早く謝罪すればよいというものではなく、ある程度は事実関係をおさえておかないと、何のための謝罪かが分からなくなります。まずは事実関係を素早く調査し、素早く整理してから、素早く謝罪しましょう。

誠実さが重要

あと、謝罪で気をつけるべきはその心がけです。とにかく誠実に謝罪することを心がけましょう。

とりあえず謝っておけばいいという考えは態度から透けて見えます。ノンバーバル(非言語)の情報量は言語情報よりもはるかに多いのです。

結語

謝罪は極めて重要なコミュニケーションの方法で、誠実に謝罪をすることができれば、むしろ信頼を得ることも可能です。

いざというときのために、謝罪のキホンを日頃から意識してもらえたら嬉しいです。

危機管理の分野はあまり言語化されてないノウハウもありますので(マスコミ対応など)、機会があったら投稿したいなぁと思います。

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法律書よりビジネス書が好きな弁護士。弁護士業務や弁護士になるまでに培った経験をなるべく言語化して共有したいと考えております。皆様からサポート・リアクションをいただき本当に感謝しております。励みになります。

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弁護士 Shoot Law

法律書よりビジネス書が好きな弁護士です。弁護士になってから、あるいは、弁護士になるまでに身に着けた考え方などについて、言語化してnoteに落としていきます。

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コメント3件

素晴らしい、俗な具体例から抽象的かつ一般的でご経験を活かされた記事です。
謝罪の機能は1)自身の謝意を示す、こと以外に2)謝った事実を作る(ShootLaw様の記述でいうところの「再チャレンジの許しを得る」)が考えられます。大人の世界では2)が重要なように思います。
一方で「謝ると死んじゃう病」というものもあります。不合理な行動にも思えますが、当人の主観では合理的なのでしょう。

お仕事柄、「(上手に)行う」のが前提かと思われますが、謝罪を行わないという合理性はありますでしょうか?

いちゃもんであれば事実を認めることになってしまうから?それは謝罪の対象を明確にすることで回避可能な気がしています。
ton960さん、確かに謝罪を上手く出来ないかもしれないという自信のなさから謝罪しない選択をしてしまう人がいると思いますが、危機管理の観点からオススメできません。謝罪のキホンさえおさえておけば、適切に謝罪することが出来ると思います。但し、こちらに全く非がない場合や、重大な法的責任を負いうる場合などには、謝罪をしないという選択が合理的である場合も確かにあります。ただ、多くの場合そうではなく、特に、その後も信頼関係を構築すべき相手に対してであれば、誠実に謝罪する方が良いと私は確信しています。弁護士の中にも謝るとミスを認めたことになるとして、決して依頼者に謝らない人もいますが、私はそれは依頼者との信頼関係を軽視しているような気がしていて、好きではありません。私は良きコミュニケーションの1つとして謝罪を肯定的にとらえています。素敵なコメントを頂き誠にありがとうございます。
ご返信ありがとうございます。
おっしゃる通り、「良きコミュニケーションの1つ」としてとらえるべきですね。
ご同業の方を例にしていただきました「ミスを認めたことになる」という事例も、相手との不和を生んだ対象を明確にして「良きコミュニケーション」をすべきだと私も思います。
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