絶望をふわりと浮かせるスイッチ

あなたの絶望を浮かせたい

第3回の投稿は、いままでと少し趣向を変えて、絶望との付き合い方について。

生きていると多かれ少なかれ絶望を感じるときってあると思います。
あの闇が上から降りかかってくるような目の前が真っ暗になるような息が詰まって苦しくて抜け出せなくなるような、あの感じ。快晴の空までグレーに見えてきます。

私は、弁護士業務の中で、日々依頼者の皆様の絶望と接しています。依頼者のつらい顔を見るのは私もつらいですし、何とかしたいと思います。でも、弁護士ができることって限られていて、最終的には自分で絶望を浮かせてもらわないといけません(ちょっと冷たいようですが、これは事実だと思います。)。今回は、弁護士業務ではなかなか面と向かって伝えづらい絶望との付き合い方について投稿します。

司法試験に、落ちた。

私は、大学3年生のときに旧司法試験を受けて、択一試験で落ちました。旧司法試験は、①択一試験(マーク式)、②論文試験、③口述試験(面談)があり論文試験の成否で合否が決まるような試験で(口述まで行けば9割は合格するといわれていました。)、択一試験はその足切り的な意味合いのある試験でした(とはいえ、難しいですし、択一の合格率も高くありません。)。

今までになくメチャクチャ勉強して臨んだ択一試験。択一試験後は論文試験の準備をしていました。択一試験は受かると思っていた、けど落ちたのです。

法務省の掲示板まで見に行き、私の番号がないことを確認した後はあまり記憶がなく、気づいたら自宅の布団でピーピー泣いていました。それまで高校受験、大学受験と順調に進んでいた私は、落ちるということに極めてナイーブでした。親や友達からの慰めの言葉は頭に入って来ず、将来に夢も希望も持てないような気分まで落ち込みました。まさに絶望です。

でも、冷静な目で見るとちょっと落ち込み過ぎですよね。落ちて当たり前の試験なのですから。また頑張ればいいじゃん、って思いますよね。まさにそのとおり。

自分にとって最悪な一日は、誰かにとって何でもない日常なんだ。

翌日も絶望を抱えたまま、翌年の試験の勉強をしに大学の図書館までとぼとぼ行きました。ふと構内を見ると、いつもと変わらない風景の中で、人々がそれぞれの変わらない日常を過ごしていることに気づいたのです。

そのとき、自分にとって最悪な一日は、誰かにとって何でもない日常なんだと気づき、ふっと気持ちが軽くなったことを感じました。これは何でなのだろう。

絶望って極めて主観的なもので、客観的な・絶対的な絶望ってないんだと思います。

そうだとすれば、自分の認識を切り替えれば(スイッチすれば)、絶望は浮いて空に消えていくのではないか。そう思ったのです。

そこでそのとき、絶望との付き合い方について深く考えました。

何が”ない”かではなく、何が”ある”かを考える

絶望とは、先が見えない状況です。つまり、心が現在に向いておらず、(遠い)将来を向いていて、しかもその将来が見えない状況なのだと思います。

でも、今遠い将来のことを考えていたって仕方ありませんよね。10年前の自分に今の自分が予想できたかを考えると、いかに自分の予想・予測があてにならないかに気づくと思います。

私は、絶望を含むあらゆる不安は、心が現在に向いていないことに起因していると考えています。自分でコントロールできないことに心が向いているから不安になるのです。

ならば、自分がコントロールできる”イマココ”に心を向ければいい。最近流行りのマインドフルネスも同様の考え方ですよね。

自分が今何を持っていて、何ができるかを考える。

それを使って、ゼロから組み立てていけばいいじゃないですか。あれがない、これがない、あれができない、これもできない、と言っていてもないものはないのです。

今の自分に目を向ければ、意外と良いもの持っているもんですよ。それを使って”どうやったら”豊かな人生が過ごせるかを考える。以前投稿したやる気の話にも通じるものです。

自分が今何を持っていて、何ができるかを考えるようになれば、いつの間にか絶望は浮いて空に消えていき、光の中を地に足をつけてまた歩き始められるようになる。私はそう信じています。

結語

いかがでしたでしょうか、絶望の浮かし方。普段の弁護士業務の中で、「今あなたにあるものに注目しましょう、意外と良いもの持っているはずですよ。」なんて面と向かって伝えられず、 note への投稿となってしまいました。

でも、ご相談があったときに、依頼者の現在の状況を客観的に整理して伝えるだけでも、依頼者の顔が晴れて、自らすべきことを考えるようになる(時には依頼者が自ら解決策に気づく)ことも多いです。心が”イマココ”に向いたということなのでしょう。

絶望の浮かし方、みんなに広まっていくといいなぁ。

感想、ご批判等がありましたら、是非是非コメントください。

法律書よりビジネス書が好きな弁護士。弁護士業務や弁護士になるまでに培った経験をなるべく言語化して共有したいと考えております。皆様からサポート・リアクションをいただき本当に感謝しております。励みになります。