見出し画像

合わせる顔を使い切って

時は流れ2024年。束の間の休暇の中で暇を持て余したので、京都を闊歩した。気が向くままに歩き倒した結果、異国の民しかいない京都御所に迷い込んでしまい、そこで力尽きて最寄りのマクドナルドに飛び込み、ハンバーガーなどを齧りながら眠ってしまった。

眠りが少し深く食い込んでしまい身体が動かない。このまま丸太町のマクドナルドで命尽きてしまうのかと危機を感じ、さすがにそれは嫌だと飛び起きた。マクドナルドに蔓延るイチャイチャ高校生カップルに囲まれながら死んでいくのだけはごめんである。彼らを横目に店内から立ち去る。急ぎ足で京都駅へ。

京都駅は年始独特の賑わいを見せている。満員の電車に乗り携帯に焦点を合わせると、連日の慌ただしい出来事についてたくさんの情報が入ってくる。それらの情報を整理して受け止める脳を持ち合わせておらず、脳がショートし、携帯から目を離し前を見た時、見覚えのある顔がこっちを見ていた。数秒脳を回転させ中学時代の同級生と一致した。名はフジモリくんだ。一瞬目があったがすぐに携帯に焦点を戻した。

携帯を見ながら脳を回転させ思い出していく。確か彼はバスケットボール部で、中学校の入学式で知り合いがおらず泡を吹いている小籠包に最初に話しかけてくれて仲良くなったはず。3年間クラスは違い接点は少なくなっていったが、会えば気軽に話す関係性だったはず。彼は勉強が得意で、確か進学校に進学した後医学部に入り、医者になったのではないかな。
接点はあったはずだが、彼の「側」の部分しか思い出せず、当時の思い出を掘り起こすには至らなかった。
話しかけたりできればよいのだろうが、私はもう「合わせる顔」を持ち合わせていない。向こうも私に気付いてはいると思うが、お互い合わせる顔を持ち合わせていなかった。
停車駅から乗ってくる客に流されながら、少しずつポジショニングを変えて私は彼から離れていった。
諸行の無情さを噛み締めた中年男性2人が揺れる電車の中で、漂っている。

京都の街を歩きながら、その昔京都で活動していたピアノガールの音楽を聴いていた。
この曲はあの頃の空気感や切なさをそのまま真空パックしていて、曲を聴けばいつでもあの頃にスリップできる。優しい曲。

ピアノガール/walking winter




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?