千本桜

世はオタクカルチャー全盛期
やれ聖地を作れだの、やれコスプレ大会を開けなど、まるで暴徒のように政治にも口を出してくる
ある日、誰かが「千本桜を再現しよう」と言い出した
おもしろそうだと人が集まり、金が集まり、計画は現実のものとなった
「桜を千本植えれる場所はどこにある」
「夜に紛れるような場所はどこにある」
「君の声も聞こえないというが、そんな環境再現できるのか」
ここでもない、あそこでもないと頭を悩ませた結果、東北のある村で作ることとなった
千本桜を見た人はその美しさと幽玄さに感嘆した
外国人もその例外ではなかった
しかし、予想外の問題も頻発した
「数えてみたら千本じゃなかった」
「夜に紛れて迷い、一晩中千本桜から抜けられなかった」
「鋼の檻を作り始めたやつがいる」
管理者は対処に困った
「さて、どうしたものか
千本桜での宴を禁止するなどあってはならないし」
「私に妙案があります」
男が一歩前に出た
「こんなのはどうでしょう、ルール違反を犯した者は隣接する断頭台で処刑するというのは
原作に忠実で喜ばれると思いますが」
「それは名案だ。早速やってみよう」
しかしこれでもまた問題が起こる
「さて、どうしたものか
断頭台で処刑を始めてから、狂信的なファン、ただの死にたがり、ギロチンフェチが殺到してあたりは死体の山だ」
「いえ、これはこれでいいかもしれません
悪霊退散だとか、聖者の行進だとか歌っているので、これも一つの見世物ということにしてしまえば...」

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