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よっちゃんイカが僕に自分でやってみることの楽しさを教えてくれた

全英女子オープンで渋野日向子選手が優勝という快挙を成し遂げた。
開幕時には全くと言っていいほど注目されていなかった選手が日本人として史上二人目の、実に42年振りとなるメジャー制覇を達成したそのストーリーは海外でもシンデレラストーリーとして賞賛を伴って報道されているようだ。
どうも暗く不安なニュースが多い最近の報道の中にあって、際立って明るいニュース。
終始笑顔でラウンドする渋野選手の姿もまたその明るさに拍車をかけたと思う。

優勝で一気に注目が集まったのが、渋野選手がコースでパクパクと食べていたお菓子だ。
よっちゃん食品工業で製造されている「タラタラしてんじゃね~よ」というそのお菓子。優勝後、問い合わせや注文が殺到しているということで、通販サイトでは在庫切れになっているところも。
みんなが突如現れたシンデレラにあやかりたくて注文するんだろうか。何にせよ製造元のよっちゃん食品工業は注文の経過を見ながら増産体制を組んで、突然の特需を乗り切る方向でいるようである。

僕はあまり「タラタラしてんじゃね~よ」を食べた記憶がない。それよりも渋野選手が優勝後のインタビュー内で一番好きなお菓子として挙げた「よっちゃんイカ」の方が馴染みがある。

少し話がそれるけれど、テキストで読んでても最高に楽しいインタビューだよなぁ。
飾らないこの感じがとてもいい。お菓子のことばっかり話していて、とても世界一になった選手のインタビューとは思えない。もちろん良い意味でだ。

話を戻そう。
よっちゃんイカは正式名称を「カットよっちゃん」と言う。これ、最近まで僕は知らなかった。当然よっちゃんイカが正式名称だと思っていたよ。

今朝渋野選手のインタビューを見て久しぶりに食べたくなって近所のコンビニへ行ったら「カットよっちゃん しろ」しか置いてなくて仕方なくそれを買ったけれど、本当はあの体に悪そうな色をした昔ながらのが食べたかったんだ。残念。


さて今では少なくなってしまった駄菓子屋だけど、僕の幼い頃にはまだまだ現役で、1つの駅に1つはくらいはあったのではないかな。
駄菓子屋は子供たちにとって格好の遊び場だった。
中でもゲームのできる駄菓子屋は行くといつもかなり賑わっていた。

そしてよっちゃんイカは駄菓子屋へ行くとかなりの確率で買っていた。当時の値段は30円。駄菓子屋ではコスパを常に考えていた僕。
そのお手軽さと満足度を考えると非常に優秀なお菓子だったんだ。
しかも当時はまだ”あたり付き”で、ギャンブル性もあったから、100円玉を握りしめて駄菓子屋に行くなんてときにはとても重宝したものだ。

そんな楽しい駄菓子屋ライフを送っていた僕に、あるとき友達がよっちゃんイカを全く違った方法で食べる方法を教えてくれた。
インターネットもGoogleもない時代、一体どこから仕入れて来たのかよくわからない情報だったけれど、その新しさに僕はすぐに試してみたい!と思ったことを良く覚えている。
それは”よっちゃんイカでラーメンの出汁を取る”という方法だった。

それだけ聞くと一体何の事やらだと思うから補足しよう。駄菓子屋には必ず小さいカップ麺がありますよね?30~50円くらいで買えるものが。
今でも「ブタメン」を置いているコンビニを見るけれど、あの当時僕はブタメンじゃなくて「しんちゃんラーメン」を食べることが多かったかな。

このチキン味ととんこつ味が好きで、良く食べてた。たまに食べ過ぎて夕飯が食べられなくなって困ったのも今となっては良い思い出。

そして友達の持ってきた新しいよっちゃんイカの食べ方というのが、このカップ麺にお湯を注ぐ前に、よっちゃんイカを一袋麺の上にあけて、お湯を注ぎ、その味が十分にスープに染み出したところで食べるというものだった。

いや何それ。
大人になった今考えてみると、聞いても疑いしか生まれない情報だ。
だけど当時の僕はそいつはすげえ!と興奮して、次の日だかに隣の駅の駄菓子屋へ試しに行ったんだ。その友達と一緒に。
そして実践した。

結果は可もなく不可も無くという感じ。
確かにいつもよりスープの味に深みが増した気がしなくはないけど、お湯に浸かって気の抜けたような姿になったよっちゃんイカは決して美味しいとは言えなかったし、トータルで考えて劇的に美味しくなったということは無く、わざわざ一緒にして食べるメリットは感じられないというのが正直な感想。


ただよっちゃんイカラーメンの結果は芳しくなかったとはいえ、そうやってあれこれアレンジしたり試したりする楽しみのようなものは、今思えば駄菓子屋に足を運ぶ理由のひとつだったと思う。
大きなえびせんに梅ジャムをたっぷり塗ってその上からラーメン屋さん太郎を振りかけて食べたときの感動は今でも忘れられないな。

そうそうまさにこの食べ方。

あとはメダルゲームのルーレットに何か法則があるんじゃないかとあれこれ検証して、その結果を友達を共有してみたり。
何の根拠も無い”確実に勝てる方法”を手に入れて喜んで駄菓子屋に行ったのに結果として一度も当たらなかったり。

今みたいに情報が溢れていなかったし、情報があったとしても今みたいに簡単にそこへアクセスできるようなことは無かった時代だったからこそのおもしろさが駄菓子屋にはあった。
情報収集をして、それを実際に自分の手で検証してみるという一連の流れは本当にわくわくした。楽しかった。
多分今だったら「噂のメダルゲーム必勝法!本当に当たるかどうか検証してみた!」みたいな動画を人気ユーチューバーがすぐにアップして、自分の手を動かすこともなくそれがガセだってことに気付かされてしまうんでしょうね。
でもそんなものは無かったから、確かめて納得するには自分がやるしかなかったんだ。

インターネットで買い物をしたり、週末に行くレストランの予約をするときにサイトに掲載されたレビューは確かに参考になる。
参考になるけれど、今でも僕は心のどこかで(でも自分で使って(食べて)みないことにはわからないよなぁ)という気持ちがあって、それはきっと小さい頃に、自分で試してみることのおもしろさを、よっちゃんイカや駄菓子屋が教えてくれたからだろうとそんな風に思っている。

ちなみによっちゃんイカラーメンの話には続きがあって、友達がさらに仕入れて来た情報によれば、僕らの検証した内容自体が間違っていたとのこと。
本当に美味しく食べるにはお湯を注いで味が染み出して気の抜けたよっちゃんイカは捨ててラーメンだけを食べなければいけないらしいというのだけれど、さすがにそんな贅沢はできん!ということでそちらは試すことなく結局そのままになってしまったんだよね。
今度やってみようかな。

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