博士課程@経済学部vs公共政策大学院

いよいよ明日テストなのですが、テスト前になると部屋の掃除がしたくなるように、ついほかごとをしたくなるので、Twitterで教育経済学にゆかりのある米国の経済学者たちが博士号を経済学部で取得する事と、公共政策大学院で取得する事の、メリットとデメリットを議論していてとても興味深かったので、それをちょっとまとめてみようと思います。

日本だと、まだあまり公共政策大学院で博士課程というのは馴染みが無さそうですが、米国だとハーバードのケネディースクールの博士課程なんかは結構名前が知られています。

経済学部の博士課程ではなく、公共政策大学院の博士課程で学んだ場合、①ミクロ経済学と計量経済学は、必修として経済学部の院生と同じ授業を取るケースが多いが、マクロ経済学や貿易なんかの分野はカリキュラムに入っていない事が多く、自分で必修外として学びに行かなければならないので負担が増す、②学ぶ内容とクラスメイトの幅が経済学部よりも広い、③ミドルからシニアになるとペーパーで判断されるので遜色なくなるが、博士課程取得後の最初のジョブマーケットは、そもそもの仕組みの違いなどから、経済学部の院生よりも結構厳しい戦いを強いられる、という3点にまとめられそうな感じでした。

教育経済学に興味関心があるけど、経済学部に行くか、それとも教育政策に行くかも大体似た図式だなと感じました。うちのカリキュラムを振り返ってみても、①ミクロと計量は経済学部で受講することが望ましく、労働経済学なんかも勧められるが、マクロは無視されている、②ミクロと計量は必修だけど、文化人類学的な手法で論文を仕上げる人もいて、確かにクラスメイトの幅は広い。あと、歴史や制度が入るのは分かるとして、質的調査法も必修で入る上、サイコメをある程度やることも求められるので、授業の幅がやたらと広い、という特徴をもちます。

ジョブマーケットは、経済学部から教育政策に行くという選択肢はあるのに逆はないし、そもそもが経済学部よりも厳しい印象があります。ただ、公共政策大学院と比べると、教員養成系のポストで教育学部に滑り込める可能性がある分、少し楽な印象があります。

国際協力に話を絞ると、世界銀行系に就職したいなら経済学部一択な感じがしますが、国連機関系(ユニセフ・ユネスコなど)を目指すならそうでもない感じがします。というのも、国連機関が実施するインパクト調査の場合、mixed methodを使うのがmustなので、質的調査法も分かる教育政策の方が活きる場所があるからです。とは言え、世銀から国連系へ転職する難しさに比べると、国連系から世銀への転職は半端なく難しいので、若くて教育経済学&国際教育協力に興味があるけど、具体的に将来何をしたいのか分からなくて、経済学か開発学か公共政策か教育政策かで悩んでいるなら、経済の大学院に行っておくのが無難な感じがします。

実務経験を基に30代からの博士課程となると(日本だとギョッとされるかもしれませんが、自分の身近には意外といるんですよね。そういえば、うちのNGOの代表も30代からの博士課程仲間です)、この経済の大学院に行っておく無難さが減ります。というのは、①経済学部の文脈で強い推薦状を集めるためのコストがバカ高くなるので、どうしてもランクが低めの大学院に行かざるをえなくなる一方で、教育大学院での文脈で活きる推薦状は集めやすいのである程度ランクの高い教育大学院に行ける可能性がある(ただし、ハーバードとスタンフォードレベルは下でマスターを取っていないとキツイので、そこからやり直すことを考えると、経済学部用の推薦状を揃えるのと同じぐらいコストが高い)、②ジョブマの不利を実務経験で補える、③多くの人が卒業後のキャリアプランが明確なので、無難な選択肢を取れることに魅力を感じない、という3点に集約できると思います。

なので、人生をやり直すなら、機会費用と採りうる選択肢の幅を考慮すると、下のような感じになるかなと思います。

高校3年生の自分に戻されたら、経済学部への進学を目指す

教育学部3年生の自分に戻されたら、経済大学院への進学を目指す

世銀入行直前の大学院2年目の夏に戻されたら、…うーん

世界銀行3年目に戻されたら、ハーバードかスタンフォードの教育大学院で1年コースで修士取り直しからの博士課程進学を目指す

ユニセフでのJPO終了時点に戻されたら、今と同じ選択肢を取る…と思ったけど、テスト前で現実逃避しているので同じ選択を取って2か月もテスト勉強をするはめにはなりたくない苦笑


経済学部か公共政策大学院かで悩んでいる人は少ないと思いますが、記事の内容が万が一誰かの助けになっていたら幸いです。

さて、テスト勉強に戻ろう。

サルタック・シクシャは、ネパールの不利な環境にある子供達にエビデンスに基づいた良質な教育を届けるために活動していて、現在は学校閉鎖中の子供達の学びを止めないよう支援を行っています。100円のサポートで1冊の本を子供達に届ける事ができます。どうぞよろしくお願いします。