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『ロデオ・サマー』

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「世界で最も危険なスポーツ」ブルライディングに、テキサスで挑戦する若者を追ったルポ。コーヒー1杯分の「旅費」で旅に同道ください。
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❶『ロデオ・サマー 800キロの牛に乗りたい男』

❶『ロデオ・サマー 800キロの牛に乗りたい男』

0)
アメリカという国をひと言で表わすのは難しい。
最先端のテクノロジーで効率と合理性を極限まで追い求める社会かと思えば、誰がどう見ても無謀なアクションに挑んで無様にコケるようなおバカ映像のほとんどはアメリカ人の所業だったり、何事も過剰で、特大で、むちゃくちゃすぎてつかみどころがないようにも見える。

多様な人種に担われた多様な文化が入り混じっていて、地域によって異なるのは気候だけではなく、ものの

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❷「60キロが800キロに乗るということ」

❷「60キロが800キロに乗るということ」

1)
日本から飛行機に乗って、久しぶりにアメリカに来ると、毎回感じることがある。
それは、「人間も自然の一部であり、生き物の一種に過ぎない」ということだ。
たいていの町にはすぐ近くに草原があり、川や湖があり、木の枝には鳥がいて、幹にはリスがいる。犬はもちろん身近にいるのだが、車で少し走れば鹿がいて雁がいる。あちこちに牧場があって、馬や牛が草を食んでいる。今回来たテキサス州オースティンにはアルマジロ

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❸「世界で最も危険なスポーツ」

❸「世界で最も危険なスポーツ」

2)
ロデオの大会で優勝すると、トロフィーやメダルの代わりに、ベルト・バックルをもらえる。時には滑稽なくらい大きなものもあり、仮面ライダーの変身ベルトのようになる。
ロデオ・カウボーイたちはそれを誇らしげに腰につけるのだ。

「会場に行けば、みんなデカいバックルしてるのに、俺だけウェスタンショップで買ったやつです。自分もバックルがほしいです」
タイトは切なそうに笑って言うが、八秒への道のりは長い。

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❹「ホールド・オン・タイト!」

❹「ホールド・オン・タイト!」

3・最終回)
メジャーリーグには、人種の壁を破って活躍したジャッキー・ロビンソンという黒人の英雄がいて、毎シーズンに一日、全選手がロビンソンの背番号であった「42」を付けてプレイする日がある。

ここに「ロデオ界のジャッキー・ロビンソン」とも喩えられる黒人のカウボーイがいる。名を、マーティス・ダイトマンという。

今から五十年前のまだ人種差別意識が色濃かったアメリカで、ダイトマンは黒人ブルライダー

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