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悲願のビリヤード日本一になった話

このnoteは、「2023年の感動体験」をテーマとした HRラボほくりく&金沢の人事部 アドベントカレンダー企画 にエントリーしています🎄

サムネイル画像を見ていただいて分かる通り、日本一になったのは私ではありません。

“ビリヤードの兄貴”と慕う杉本優太さんが、「第70回 全日本アマチュアポケットビリヤード選手権大会」(通称:アマローテ)A級部門で優勝されました。

こちらが杉本兄貴

基本的に人前だとなかなか泣けない性分なのですが、優勝の瞬間は人目を憚からず涙していました。

目が開かないのでこの顔で誤魔化すしかありません。

どうしてこんなに感情を揺さぶられたのか?振り返りながら、当時の熱気みたいなものを思い出し、ここに綴っておきたいと思います。

※長文になってしまったので、お時間ある際に覗いてみてください。

杉本優太さんって何者?

まずは杉本さんについて紹介しておこうと思います。

主な戦歴は
・第29期球聖戦 西日本代表(2021年)
・アマローテ 準優勝(2018年)
・国体記念大会 3位タイ(2016年,2017年)
・9年連続北陸ランキング1位(2011年-2019年)
などなど

ビリヤードをしない人からするとなんのこっちゃ分からないと思いますが、要するに「ビリヤードがとっても強い人」です。

身長は170cmないくらい(自称)

某ビリヤード雑誌さんの記事で明らかになりましたが、「無冠の帝王」という通り名があるとかないとか。

ジュニア時代からビリヤードをはじめていて、「北陸のエース」である杉本さんの全国タイトル獲得は、北陸のビリヤードプレイヤーであれば誰もが期待していました。

兄貴と私

そんな杉本さんとの出会いは、私がビリヤードを始めた11年前の2012年。
当時すでに杉本さんは北陸ランキング1位で激ウマです。

私も大会に出場するようになり、気づけばホーム店舗のビリヤードGETで顔を合わせる度に一緒に撞いてもらうようになっていました。(ビリヤードの動詞は「打つ」ではなく、「撞(つ)く」がスタンダードなのです。)

ある年は、年間で100試合以上も付き合ってもらい、怒涛の73連敗をマーク。73連敗することってなかなかないですよね…

あまり言葉で表現して教えてくれることは少ない杉本さんですが、一緒に撞いて、見て、真似る中で私にも杉本イズムが芽生えたような(気のせい?)
この頃から兄貴呼びが定着しました。

そして、最近では県外の大会にも一緒に行くようになりました。

立野がハラハラなプレイをしながらも優勝

JPAという団体戦ではチームを結成し愛知県へ行ったり、

西日本代表として東日本代表と対戦。惜しくも敗退。

「球聖」(将棋タイトルの「棋聖」のような)というタイトル挑戦時には東京へ帯同したり、

試合前の石川&福井メンバー

その他のタイトル戦にももちろん参戦!
アマチュアビリヤード界にはタイトルが6個ほどあります。
今回のアマローテもその一つです。

多くの時間を共有しているが故に、Google フォトの最上段に表示されています。

私自身も選手としてタイトル戦に参戦している時は、「タイトル獲るぞー!」「やってやるー!」という心持ちでもちろんいるわけですが、どこか心の隅で「兄貴にタイトル取って欲しい」みたいな自分もいたりしました。
(自分のこと諦めてるわけではないんです!これ伝わるかな、伝われ〜!)

因縁の大会「アマローテ」

いよいよ本題のアマローテについて。

体育館に30台ほど特設テーブルを設置。壮観。

ビリヤードしたことない人はまず初めに、

「ローテ」ってなに!?
ここではないでしょうか。(アマはアマチュア大会のこと)

「ローテ」とは、「ローテーション」の略称のことで、ビリヤードのゲームの種類の一つです。

ローテーションとは?

メジャーなゲームの一つである「ナインボール」と比較しながら、ルールを簡単にご紹介します。

ナインボール
・9個のボールを使って1番から順番に落としていく。
・9番入れた方が1点獲得する。
・5点先取で勝ち。(点数は試合のルールやハンデによる)
ローテーション
・15個のボールを使って1番から順番に落としていく。
・落としたボールの数字分だけのポイントを獲得する。(1番ボール落としたら1点、12番ボール落としたら12点)
・アマローテは180点先取で勝ち。(試合によって120点、240点など)

ローテーションの特徴をざっくり紹介しておくと。
・ボールを15個使うので選択肢が増え、高いビリヤードIQを求められる
・ボールを15個使うので、緻密なボールコントロールが求められる
・数字が大きいボールほど価値高いので、後半のプレッシャーがえぐい

実は杉本さん、ローテーションが種目の大会だと好成績を残しがちなのです!(立野調べ。でも多分そう。)

2回負けたら脱落、ダブルトーナメント形式

ちなみに今大会は私も出場していましたが、結果は「負け負け」でした。
アマローテは2回負けたら脱落のダブルトーナメント形式を採用しています。
(つまり「負け負け」とは、1勝もできずに敗退したということ。悲しみ。)

シングルトーナメント:1回負けたら終了(一般的トーナメント)
ダブルトーナメント:1回負けで敗者側トーナメントへ、次負けたら終了

「2回も負けることができるなんていいシステムだね」
と思われるかもしれませんが、とんでもない。
こちらをご覧ください。

勝者側だと5連勝でベスト16に入れるのに対して、初戦で負けてしまうと、敗者側で7連勝しないとベスト16に残れません。
試合数で言うと初戦の負けも合わせて8試合が必要になります。

「なんだ3試合分だけか」
と思われるかもしれません。

アマローテを舐めてはいけません。
まだベスト16です。トーナメントにはまだ続きがあります。

んぎゃーーー!

全勝優勝となると追加で4勝必要で、合計9勝必要なのに対して、敗者側だと、追加で8勝必要で、合計15勝(16試合)が必要になります。

結論、一度負けるとタフすぎる。

過去には初戦負けから優勝した猛者の方もいらっしゃるらしいですが(凄すぎる)、なるべく勝ち側でトーナメントを進んでいきたいところです。

あと一歩届かなかった2018年大会

実はアマローテ2018年大会で杉本さんは決勝まで駒を進めています!
しかも!勝ち側から!!

しかしながら、まさかの2連敗。
2018年大会はYouTubeのライブ配信で観ていたのですが、タイトル獲得がこぼれ落ちていく様はえも言われぬ苦しさがありました。本人はとんでもなく悔しかったでしょう。

そんな背景があっての今大会でした。

優勝までの軌跡

立野は早々に負け負けで敗退するも、
杉本さんは順調に勝ち進み、勝ち側でベスト16進出!

さらに勝ち進み、勝者側準決勝まで駒を進めるも、兵庫の吉喜隆一さんに敗け。敗者側に回ります。

敗者側で2連勝!
敗者最終戦では再度吉喜さんと対戦。
見事リベンジを果たし決勝戦へ進出を決めます!


2018年ぶりの決勝戦ですが、前回とは状況が異なります。
敗者側からの決勝進出になるので、ここから2連勝が必要です。

決勝戦の相手は、今年の『マスターズ』(アマタイトルの一つ)チャンピオン、大阪の吉岡保俊さん。

決勝戦開始まで待機中のお二人

吉岡さんもあらゆるタイトル戦で決勝進出するも、あと一歩タイトル獲得に届かず準優勝に甘んじていたというお方。

ですので、マスターズ決勝戦はYouTube越しで一方的に応援していましたし、優勝が決まった時は画面越しに拍手を送っておりました。

そんな勢いのある吉岡さんがお相手でした。
(マスターズ獲ったんだからマジで譲ってあげてくれ!と内心思ってました。すみません。)

決勝前なのにリラックスできてるな。

決勝戦スタート

8から9、気持ちよかったですね。

1ラック目(1-15番までを入れ切るまでの間が1ラック)は、杉本さんが丁寧に取り切って【116-4】(1-15番までを合計すると120点になります。)

取り切り鮮やかでした。

2ラック目は、杉本さんのブレイクショット(ボールを散らばらせる最初のショット)がノーイン。(一つも入らないとプレイヤーチェンジ)
吉岡さんがリズムよく1−15番まで全て取り切り【116-124】 やはり強し!

8番から13番まで取り切って1勝!

運命の3ラック目!(180点先取りなので、3ラック目には決着がつきます)
お互いに行き切れそうで行ききれない展開。吉岡さんが8番でセーフティミス。そこを逃さず杉本さんが取り切って勝ち!まずは1勝!

とはいえ、ミスの少ないハイレベルな攻防。
プレーオフまでの間も緊張感のある時間が流れていました。

プレーオフへ

8から9、痺れました。

1ラック目、1試合目とは変わってお互いにミスが出る展開に。
杉本さんの8番ミスの後の配置が上の画像。
吉岡さんがキュー(球をつく棒のこと)で指し示すラインに手玉をきっちりコントロールして、そのまま15番まで取り切り。【9-111】

プレーオフに入ってから、より一層両陣営応援団の声量も大きくなっています。いつもであればなんて事のないショットに対しても「ナイス!」と声をかけたり、拍手したり。もう応援せずにはいられないのです。

画面左の11番(赤色)を入れるのが難しいと見るや

2ラック目は一転して杉本さんが優位に進めるシーンが増えます。
決め手になったのは画像の11番を撞くシーン。
意図的にボールを入れずに相手の攻め手を無くす、セーフティを選択。

その結果がこちら。

画面下の15番(エメラルドグリーン)の裏に手玉をコントロール

ビッタビタ!(きっちり隠れた時の音)

一歩間違えばカウンター食らってましたが、このショットで吉岡さんがミス。その後杉本さんが取り切って【124-116】

まさに激闘!

ナイスブレイクに石川応援団に声援が飛びます。

運命の3ラック目は、杉本さんのナイスブレイクでスタート!
1番から取り切りを重ねますが、8番ボールが難しい形に。
あと28点なのに…

ここでもまたセーフティを選択。結果は…

やっぱりビッタビタ!

しかし、これまた吉岡さんは当て返します。
当てた後の形がこちら。

8番ボールを画面左のサイドの穴に直接入れることもできたのですが、杉本さんはここであえて8番を当てて11番を入れるコンビネーションショットを選択します。

コンビネーションを選択した理由(読み飛ばしてもらって大丈夫です!)
杉本さんが勝つためには残り28点
→順番に入れていくとなると、8番,9番,10番,11番の4つを入れる必要あり
→ですが、先の展開を考えると9番から10番へのコントロールが難しい
→8-11コンビ入れて、8番,9番を入れれば28点到達!1個省略できる!

コンビの結果は…

入れたけど、15番邪魔すぎいいぃ!(そりゃ兄貴もこんな体勢になります)

コンビを選択するナイスアイデアだったのに…
どうしてこんなことに…

結局杉本さんは、クッション(壁)を利用して8番ボールに当てに行きますが当てることができませんでした。痛恨のファールです。

通常ファールすると次に狙うボールをセンターに置き、上の画像のように手玉を狙いやすいところ(動かせるエリアに制限はあるものの)に置いてプレーを始めることができます。

しかしながら今回のケースを見てみると、

センターになんかいる!(フットスポットにもいる!)

この場合、理想的な形でスタートすることはできません。
ここが完全に勝負所なので、あらゆる選択肢について考えを巡らせていたのではないでしょうか。

長考の末、吉岡さんの下した決断は、8-15コンビネーション。
先ほどの杉本さんの8-11コンビネーションと同じく、コンビを入れた後の形が一番よくなる(取り切りやすくなる)可能性があると判断したのかもしれません。

念入りに時間を使ってショットしたその結果は…

抜けた。

兄貴、ここで決めてくれ。

簡単な球ではありませんが、8番、9番上がりです。

ゆっくり息を吐いてから構えに入る。

今日一番の静寂に胸が苦しくなります。

結果は…

入れた!9番に当てた!出たたあああああぁ!

9番ボール入れて優勝!!!!!

兄貴、あんた最高や!!!!!

本当におめでとう!!!!!

さいごに

ここまで読んでいただいておいてアレなんですが、クライマックスだけでも動画で観てください!笑

杉本さんの8−11コンビあたりからの動画になっています。(決勝&プレーオフのフルバージョンはこちら

「アマローテの感動を文字に起したい!シェアしたい!」という衝動に駆られてここまで5000字程書いてきましたが、このnoteで自分は何を伝えたかったのだろうと改めて考えると、結局よく分かりませんでした。

そのくらいビリヤードは面白いんですよ!

小さいテーブルの上にドラマがあるんですよ!

というのをこのnoteのメッセージとさせてください。

私も人をワクワクさせられるような試合をすることが目標です。

P.S.

影響を受けやすい私は、いいイメージをもらったのか、その次の週に開催された北陸三県大会で優勝しました笑

クラス別で開催されていて、杉本さんもしれっと優勝。そもそも杉本さんは2023年の北陸大会で負けなし。えげつない。

兄貴の背中はまだまだ遠い。


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