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1年半アドレスホッピングしてわかった19のこと(後半:思想編)

年始にちょうどアドレスホッピング始めて1年経ったことだし、2019年にちなんで19個の学びをシェアしよう!と書き始めたこの記事。ただ、19個って想像以上に大変で、前編である1年間アドレスホッピングしてわかった19のこと(前半:手法編)からもう半年も経ってしまいました....何やってんねんって感じですが、ようやくまとめられたので公開します。思想編、残り11個。例によって長いですが、お付き合いお願いします。

アドレスホッパーってなに?って方はこちらから市橋正太郎ってなにやってる人なの?って方はこちらから

後半・思想編スタート!前半・手法編⑴~⑻はこちらから。

9. どこへでも自由に移動できる

移動が日常にある。これはアドレスホッパーの根幹にある部分です。コスト構造上、どこに住んでもあまり居住費が変わらないので、行きたいところに行けます。最近は長距離交通費もとっても安いですからね。移動することに対して、とてつもなく自由です。

これは本当に大切なことだと思っていて、このあと話すことにもつながってきますが、自由に移動できるだけで解決することがたくさんあるんです。最近は、基本的人権にもある「移動する権利」に改めて注目すべきだと思っています。

10. リスクをとってチャレンジしやすい

アドレスホッパーには基本的に固定費という概念がありません。家賃も光熱費もなく、ほぼ全て変動費なのです。ということは自分の裁量でなんとでもなるということ。今月は財布に余裕があるからいい生活しよう、ってこともできますし、逆に厳しいから極端に出費を抑えようということもできます。経済が選択できるのです。最悪、友人宅に泊めて貰えば家賃はゼロですし、物価の安い国や地方に移動して自炊でもすれば、月10万もかからずに生活できます。なので、失敗したところでたかが知れているのです。むしろ、ほぼ変わらないと言っていい。なので、リスクテイクに関してのハードルが極端に低くなります。全く不安を感じません。

11. 物理的な拠点ではなくコミュニティにホームを感じる

常に移動を続けているため、あの場所が拠点です、とか、あの場所に帰るとホームを感じる、という感覚がなくなってきます。水のように流れながら生きている感覚です。水に「あなたのホームはどこですか?」と聞いてもたぶん困りますよね。空なのか、山なのか、湧き出たところなのか、流れ出るところなのか。それと同じです。

むしろ、僕たちは、コミュニティにホームを感じます。お互い理解しあっていて、一緒にいると居心地の良い仲間といると、とても落ち着きます。それは、東京で会おうが、シンガポールで会おうが、ナイロビで会おうが変わりません。つまり、慣れ親しんだ関係性に対してホームを感じているのです。

もちろん、実家など既に長く住んだ場所に対して愛着は持っていますし、この感覚は人それぞれかとも思います。少なくとも僕はそう。でも、場所よって想起される思い出と、人によって想起される思い出って、どちらかというと後者の方が大きい気がしませんか?

12. 弱いつながりを大事にする

有名な理論にウィーク・タイ理論というのがあります。転職において、同じ職場など強いつながりよりも、一度挨拶をしたくらいの弱いつながりの方が、役に立つという研究結果です。考えてみれば当たり前で、自分の近くにいて同じ情報を得ている人と、違うフィールドで活躍してる人だと、後者の方が新しい情報を持っているに決まっています。

だから最近は、facebookを交換した時に共通の友人が少ない方がテンションが上がります。共通の友達が一人もいなかったら「おお!」となります。これまで自分が接続できていなかったソーシャルグラフに繋がったぞ!と。そして、遠くに行けば行くほどその可能性は高まります。本来繋がるはずのなかったグラフが、移動によって繋がっていく。その結果として、僕たちは、広い人間関係の中でハブとして機能できる可能性が高いと思っています。

13. 土の人と風の人、むしろ水の人?

移動した先でのコミュニティとの関わり方はどうでしょうか?まず、アドレスホッパーは旅行客ではありません。短い期間であっても1週間や1ヶ月、そこに住むという感覚です。一方でもちろん、土地の住民でもありません。正直住んだ分だけ住民税を分散して払いたいくらいには思っているのですが、そうもいきません。その土地の第一者としての住人と、第三者としての旅行客。その間の第二者くらいの立ち位置、それがアドレスホッパーだと思っています。今で言うと「関係人口」と呼ばれるものに限りなく近いですね。

「風土」という言葉があります。一説では、その土地に根付く「土の人」と、たまにやってくる旅人や行商人などの「風の人」が混ざり合うことで「風土」が醸成されてきたと言われています。先ほど話したように僕たちは第二者的目線なので、あえて言うなら「水の人」のような感覚に近いでしょうか。

その土地に住む人たちの目線も持ちつつ、旅行客としての客観的な感覚も持ち合わせている。そして、移動で得た様々な関係性や情報の中から、その場所に必要なものを引き出して、繋げていくことができる。そんな存在になれるのではないかと思っています。

14. ディープなローカル体験を楽しむ

アドレスホッパーは観光客ではないと言いました。だからこそ、その土地に住む人にしかできないディープな体験を好む傾向にあります。特に、僕はそうです。ローカルな銭湯で一風呂浴びたり、居酒屋で地元のおじさんたちと飲んだり、場末のスナックでみんなと演歌歌ったり。土地の人が日々生活している感覚に馴染むことこそ、アドレスホッパーの醍醐味なのです。

だからこそ、現地でコミュニティの玄関口になってくれる人の存在はとても大切です。だいたい僕がいく場所を選ぶ時には、まず誰かに会いにいくことが多いです。それはもちろんその人に会いたいからというのも大きいですが、何よりその土地の人がいた方がコミュニティにダイブしやすいからですその土地に住む人に紹介してもらうだけで話が早いことが多々あります。

15. 宿選びの基準はコミュニケーション

僕たちは365日、どこかの宿に泊まっています。Bookin.comのランクはすぐ上限に達します。だから、宿選びのプロといっても過言ではありません。僕たちが選ぶ基準は明確にあります。それはコミュニティ要素です。先程、その土地に溶けこむには、玄関口になる人が重要だと話しました。一番簡単な方法は、その宿の人が窓口になってくれるパターンです。

その宿が地元と良い関係を築けているかを確認する簡単な方法があります。居酒屋などで「あのゲストハウスに泊まってます」と話した時の地元の人の反応です。いい関係が築けていれば、その宿の人の名前が出てきたり、それだけで仲間に入れてくれたりします。反応が薄い場合は、あまり良い関係ではないんだろうなと推測しまいます。

他には、居住者同士のコミュニケーションを促す仕掛けがあるか、も大切です。ホステルやゲストハウスはその場所自体がグローバルですから、その交流は大きな魅力です。コミュニケーションが起きる場づくりをしているかどうかはかなり思想が出るところなので、明確にわかります。そう言った意味ではやはりNui.やCITANを運営しているBackpackers' japanのホステルは随所に工夫が感じられて素晴らしいです。地元の子供たちが学校終わりに遊びにきているのも、地元と良好な関係が築けている感じがしていいですね。

16. 移動を学びに変えられるか?

ただいろんな場所に行って、人と会って、雑多にインプットしているだけでは学びにはなりません。「移動距離とクリエイティビティは比例する」という言葉がありますが、本当の意味でこれを実現するためには、目に入る情報や、築いた関係性を、学びや価値に変換する能力が必要だと思います。そういった意味では、アドレスホッピングをする上で、その価値を最大限に享受するためには、ある程度の素養が必要なのでは、と思ってきています。

17. 多様性を体得する

日本でも多様性が大事だと言われていますが、本来の意味で多様性を体得している人は少ないように思います。多様性って頭で考えるもんじゃないと思うんです。自分とは違う人がいて、それぞれの人が等しく価値があると体感できるか?それが大切だと思います。

その点において、東京の大企業で内勤してる人が多様性についての身体感覚を得ることはかなり難しいのではと思います。いろんな場所に行って、全く違うカルチャー、世代、人種の人たちと会い、それが当たり前の感覚になってこそ多様性は体得できます。そういった意味で、多様であることが当たり前の感覚になってきたことは、個人的にとても良いことだと思っています。

18. コミュニティを分散してリスク回避

僕はアドレスホッピングを始める前、シェアハウスに二年間住んでいました。とても居心地の良い場所で、住人も落ち着いていて楽しく過ごしていました。ただ、2年も住んでいると、人の入れ替わりや人間関係のこじれなどが起きてきて、必ずしもいい環境とは言えなくなってきました。

一つのコミュニティに属するというのは、本来息苦しいものです。だからこそ、属するコミュニティを分散して、いつでもどこにでも逃げられるようにしておくことで、心の平穏を得ることができます。どこかで上手くいかなくても、こっちで上手くいってるから、いいやと思えるかどうか。

結局、人が一箇所に集まるとヒエラルキーができて、それが社会となります。その中では優位に立つ人も、落ちこぼれる人も必ず出てきます。しかもそれは水ものです。状況によって変化します。そんなものに一喜一憂するよりも、様々なコミュニティに身を置いて、上手くいかないときは移動すると決めたほうが合理的です。

19. ホッピングすれば、いい子に育つ?

移動と教育の関係性は、とても興味深いテーマです。京都大学の山極学長もフィールドワークの大切さを主張されてますし、KJ法で有名な文化人類学者の川喜田二郎先生も晩年は「移動大学」というプロジェクトを実践されてました。最近では、ミネルヴァ大学インフィニティ学院など、高等教育において様々な環境に身を置いて、実際に体感しながら学びを得ることで、次世代人材を育成できるとして評価される教育プログラムも出てきています。

家族でアドレスホッピングしながら、子育てしている夫婦も存在します。実際に話を伺ったのですが、もちろん苦労はあるけれど、子供たちの環境適応能力やコミュニケーション能力はとても高いらしく、人見知りも無く、海外でも現地の子達とすぐ仲良くなり、親も知らない現地の言葉を覚えて帰ってくるらしいです。これからの時代、そういう能力こそが大切になってくる気がしませんか?

移動することで、いじめから逃げることもできます。そもそも固定的なコミュニティだからいじめが発生するというのもあるし、流動的な状態でコミュニティに接していれば、いじめに巻き込まれない、いじめられても逃げ道があると思える、のでかなり救いになるのではないでしょうか。この辺りの議論はまだまだ余地がありますが、とても面白いテーマだと思っています。

20. 移動を価値に変える

フランスの経済学者ジャック・アタリは「21世紀の歴史」の中で、これまでの歴史は定住民と遊牧民(ノマド)の衝突によって作られてきた、と語っています。日本でも令和という新しい時代が始まった節目の時期、世界レベルで見てもまた次の変革への胎動が感じられます。これまでの社会は1万年の間、定住を前提に作られてきましたが、それは定住がヒトにとって合理的な選択だったから。

一方で、これまでの歴史は「個人」が権利を勝ち取ってきた歴史とも言えます。そして、個人の権利が最大限に尊重される世界においては、必ずしも(種としての)ヒトの成功が、(個としての)個人の成功と合致するとは限りません。簡単に言うと、健康な環境に気を配りながら精神的に豊かに生きた方が幸せなんじゃないか?という仮説です。

この点において、アドレスホッピングについて語ることはとても有効だと思っています。これまで定住を前提に作られてきたシステムを「移動」を前提に見直すことで、フラットに、ゼロベースで考えることができます。これはとても面白い。

その上で一つ実験したいのは、移動すること自体が価値に変わる世界観です。これからより移動できる人と、移動できない人に分かれていくとしたら、移動できる人が為すべき役割や価値ってなんなんだろう?そんなことを思考していきたいと思っています。もしかしたらその中から次の100年を形作るアイデアが出てくるかもしれません。

最後に

結果的に書いてみたら20個になっちゃいました。ほんと適当でごめんなさいw

宿選びの基準はもっと細かくあるし、モノに対する意識とか、街を知る方法とか、まだまだ書きたいことはあるんですが、それはまたの機会に。

良かったら、いいね、シェアしていただけると嬉しいです。

また、毎月やっている #HoppingBar というイベントは6/12、7/30、8/30で都内でやってます。興味のある方は是非ご参加ください。アドレスホッパー でなくても共感してくださっていれば大歓迎です。(6/12のイベントはこちらから)


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