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ヤカン・ボウフラ・銀瓶・土瓶

 お茶席で味わうことができる非日常は格別なものです。普段あまり目にすることが無い道具類も空間の美に一役買っています。道具には歴史があります。その変遷をたどることもまた茶の場所の愉しみでもあります。そしてなによりその設えから生まれる場の空気が亭主の心意気を感じるものであればありがたくうれしいものなのだと思います。主客互いをそっと沿わせて受け止めあう空間の心地よい緊張感こそお茶の場所が醸し出す「非日常」そのものではないでしょうか?わかっても解らなくてもよく見ることで自分なりの理解や楽しみが湧いてきます。見たことも使ったこともない道具だからこそワクワクすることも多くあるのではないでしょうか?そしてゆっくり味わってみてください、丁寧に淹れたお茶は格別の印象を残すはずです。
自分のまなざしをしばし喧噪からひきはがし、一碗のなかへ投じれば無限の愉しみがまっている。探せば探すほど「知らないこと」だらけ!だからお茶って楽しのかもしれません。

湯を沸かす

 湯を沸かす道具は「湯沸かし」「煮水器」などと呼ばれます。使われる素材も多様です。ステンレス製が現代の主流ですがそのほかにガラス製、素焼き製、磁器製品、銀製品、などさまざまです。素材によって湯の味わいが異なります。湯の性格が違うといってよいと思います。また炭火で沸かした湯と電気でも異なる結果になりますがこれは次回にいたします。
ステンレス製のケトルはニュートラルです。また水も水道水で良く、一晩おいてしっかり沸騰させてから使えば毎日のお茶には問題ありません。
茶席で一番よく使うのは私の場合「銀瓶」と「ボウフラ」です。銀瓶を涼炉で使うととてもすっきりとした良い湯が沸きます。ボウフラは白湯だけをおかわりしたくなるような美味しいお湯が沸きます。両者とも茶を淹れたときの茶液の抽出が速やかで穏やかで雑味をあまり感じない茶になります。
茶席ではその日の茶種やお客様の顔ぶれなども考えて道具を選びます。ボウフラの潔さは好きです。

湯を沸かすことで大切なことは①湯沸かしを選ぶ ②水に気を配る ③必ずしっかりと沸騰させる です。温度計付きのケトルでも一度沸騰させてから調整することをお勧めします。
湯沸かしは湯の味のため、水は茶の味のため、沸騰は殺菌のためです。衛生的な環境で茶を淹れることがほとんどですがお客様へお出しするものであることをいつも心においておきたいのです。
最近は冷茶という技法がもてはやされています。茶葉衛生状況が格段に良くなって製茶技術も向上し水道が引かれた現代であればこそ可能になりましたが、冷茶の場合はやはり最新の注意が必要です。
しっかり沸かした湯で美味しいお茶を愉しんでください。


やはり沸かしたての湯が大切です

お茶が助けてくれる毎日、お茶が醸し出す素敵な時間、そしてお茶が持っている非日常の間合い、そしてなにより「美味しいな~」お茶