闇.001

【オピニオン】ふるさと納税は地方を再生するのか。それとも、蝕むのか。

さて、昨年末から「ふるさと納税」に関する発信をしてきています。

まずは東洋経済オンラインの連載で取り上げ、その後、雑誌版wedge2月号にコラムを寄稿させて頂きました。wedgeの記事は本日オンライン版にも公開されています。

さらに今朝、朝日新聞の争論にて意見を出させて頂きました。

「木下ふるさと納税三部作」でございます。

◯ 東洋経済オンライン
ふるさと納税ブームに潜む地方衰退の「罠」
無視できない、3つの大きな歪みがある
http://toyokeizai.net/articles/-/95571

◯ wedgeInfinity
地方をダメにする ふるさと納税の不都合な真実
チキンレースと化す自治体間の高額返礼品競争
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6386

◯ 朝日新聞デジタル
(争論)ふるさと納税の大義 竹中貢さん、木下斉さん:朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/articles/DA3S12265335.html

基本的に上の3つを読んでいただければ、木下が指摘したいことはご理解いただけるかなと思います。つまりは個人的に問題視しているのは、「返礼品」と「地方財政への影響」と「税制としての妥当性」の3点です。

・返礼品経済の不健全性
返礼品については財源は税収というモデルの制度支援によって、買い取られる商品の売上は極めて不健全です。その後の購買につながれば、みたいな話もありますが、そんな地域の個別企業に必要な販促活動そのものをほぼ全額税金原資で行うこと自体が異常と言えます。

これまでも地域活性化でその手の企画をやってきていますが、農業、水産業などでどのような結果になってきたかは言うまでもありません。健全市場取引に注力しなくてはならないはずが、この手のてっとり早い、制度による売上に皆が走ることは極めて将来にマイナスになっていきます。

・地方財政規律への影響
ふるさと納税をもとに公共施設を整備したり、従来の税収では立てられなかつた道の駅を整備するなどの計画を打ち出している自治体もあります。はたまた◯◯費を無償化、といったことも相次いでいます。これらが今年得られた寄付金だけでまかなえるものであればまだしも、今後の財源根拠のないままに維持費用がかかったり、毎年予算が増額になるような施策をやるのは問題です。

ただでさえもらえるものは全て使う地方財政経営そのものに問題があったわけで、それをなおさずして、今後の人口縮小社会化の自治体経営は成立しません。そのような改善をおざなりにする、打ち出の小槌化している問題があります。

・税制としての問題
私は税制の専門家ではないですが、いくつか疑問点があります。

まずは、高額納税者ほどふるさと納税額の割当があるため、ふるさと納税の返礼品のメリットを享受することが可能です。持つものがより得する税制というのはどういうことなのかという疑問です。

その一方で、今住んでいる自治体への納税額は減少するわけで、ふるさと納税していない人たちからの税収などでやりくりをすることになります。これも居住していて地元のインフラなどを利用しているから税を支払うという原則からかけ離れた構造になってきていると思うところ。

さらに税として寄付金控除の対象となる特定寄附金となるわけですが、にも関わらず、寄付した金額の5割を超える返礼品などが寄付者に送られるものです。これは「特別な利益」に当たらないのか、というあたりも不可解です。

No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1150.htm

ふるさと納税制度は、できるだけ早期に税制し、本来の寄付金税制モデルに戻るべきと思うところ。

と同時に、この手の政策で踊る地方も地方。直接的な利害者が誰も損しない=支持されるということは政治的にも推進したくなる政策であることは分かるのですが、税制による地方商品・サービスの無料配布的なモデルは極めて歪んでいます。

民間はまっとうなビジネスに、自治体は真っ当な自治体経営と向き合わずして、どうこれからの厳しい縮小社会を生き抜いていけるのか。大変問題のある事案と思うところです。

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