面会「月イチ3時間」は、どこから生まれたのか

面会交流が民法766条に規定されたのは、平成23年。

その後じわじわと、離婚調停において、面会交流は月イチ3時間という相場ができあがった。
親同士が相場と異なる合意をすることができれば別だが、意思が合致しない場合、相場におさめられる。

既存のジェンダーロールでは、家事育児は女性の仕事であった。
今もそのままの家庭はあって、月イチ3時間の面会でも、離婚前よりは子どもと向き合う時間が増えたのではないかという父親もいる。

しかし、女性の社会進出に伴い、男性が家庭に進出しているケースも増え、家事育児に父親がコミットしているケースもみる。
この場合、子どもは日常にパパを組み込んで心を安定させており、父親も子どもの愛着対象となっている。
このようなケースでも、面会交流の合意がまとまらなければ、月イチ3時間である。
(このような夫であれば離婚しないと思う人もいるだろうが、事実は小説より奇なので、離婚する人はする。)

他方、昭和男尊女卑思想そのままに、妻を子どもの前で殴ったり、罵ったりする夫もいる。証拠が残っていないことも多く、DV認定されないこともままあるが、パパを思い出すだけで、子どもが発熱・発疹・下痢などの身体症状を出すケースもある。このような場合でも、調停委員は、子どもに対する直接の暴力がない限り、月イチ3時間の面会交流を勧めてくる。

このように猛威を振るう「月イチ3時間」だが、実は法律上の根拠はない。

面会交流に関して当事者の合意がない場合、基準を決められる権限があるのは家庭裁判所だけだ。

ところが、三権分立の中、司法機関に対する予算は、わずか4%である。司法機関は、家庭裁判所だけではない。地方裁判所、簡易裁判所があり、それぞれ民事部刑事部がある。
家庭裁判所だって離婚だけを取り扱うのではない。少年・成年後見人・相続などがある。

家庭裁判所には、家庭裁判所調査官という心理の専門職がいる。
離婚に伴う面会交流に関する事項に、家庭裁判所が適切に介入するなら、調査官面接を何度もして、子どもの本心を引き出した上で、心理のプロとして意見をまとめるべきだろうが、調停段階で、調査官が子どもの生活スペースまで行って面接をしてくれるのは稀であり、面接してくれたとしても1回だ。
調査官が足りないのである。

それどころか、東京では、調停をする部屋すら足りない。
数年前までは調停期日は1ヶ月毎に入っていたが、現在は、両当事者と弁護士と調停委員の全員の都合がつく日があっても、部屋が空いていないという理由で、1ヶ月半空いてしまうことも多い。

民事事件・刑事事件ともに減っているので、東京では地方裁判所の建物の部屋で家事事件をやるようになったが、それでも部屋が足りないのである。

月イチ3時間というのは、 家庭裁判所が個別の家庭の事情に対応できない状態の中、子どもが小さくても身体に負担がなく、子どもが大きくて面会以外に大事なことが増えても都合をつけられるだろうというフィクションの中で生み出された数字である。

みんなに合わせた基準というのは、誰にも合っていない基準にもなり得る。
面会交流に関する議論が噛み合わないのには、このような背景がある。

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